これからの京焼・清水焼とは?京都、陶謙窯が目指す持続可能なモノづくり

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

茶の湯文化の流行とともに、安土桃山時代から始まった京焼・清水焼。400年以上を超える伝統を守りつつも、自由な発想でモノづくりに挑戦しているのが、 ㈱奥村企画が2002年に新たに立ち上げた京焼・清水焼の窯元「陶謙窯」です。

今回は、代表の奥村謙介さんに工房を開いた背景や京焼・清水焼の魅力についてお伺いしました。

参考

若い職人たちが新しいアイデアを取り入れながら、京焼・清水焼を創作する窯元。400年以上の歴史を持つ伝統的な焼き物をより多くの人に、より身近に親しんでもらいたい。そんな想いから「陶謙窯」は創業した。受け継がれてきた伝統の技を継承しながら、現代のライフスタイルに自然に溶け込むアイテムを制作。作り手と使い手が自由に交流し、開かれた窯元を目指している。

目次

400年以上の歴史を誇る伝統焼き物

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

京都のお土産として人気の京焼・清水焼ですが、どのような焼き物と定義されているのでしょうか?

奥村さん
奥村さん

京都で生産され、全工程が手作業で作られたものが、京焼・清水焼と定められています。起源は安土桃山時代ですが、当初は窯元の名前で呼ばれ、京焼という名称が定着したのは明治以降のことでした。京焼のうち、清水寺の参道の窯で作られたものが清水焼と称されています。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

ちなみに土や模様に条件はあるのですか?

奥村さん
奥村さん

土の種類は特に決められていません。現在、京都で土はほとんど採れないので他府県のものを使うことが多いですね。 特徴としては“作家の数だけ技法がある”と言われるくらい多様性に富んだ焼物になります。

モノづくりを志す若手に、未来をきちんと描いてほしかった

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

“若い作り手に自由な発想で創作してほしい”という想いで工房を開かれたと聞きますが、その背景を詳しく教えてください。

奥村さん
奥村さん

せっかく京焼や清水焼を学んだにも関わらず、その知識を活かせられない若手が非常に多いことがきっかけです。京都には陶芸専門学校や芸術学校がいくつかありますが、卒業生の進路に目を向けても、陶芸と異なる業界に就職する人が目立ち、若手を雇用する環境が整っていないと感じました。伝統技術を未来へ継承するために、自分ができることは何かと思った結果、行き着いたのが窯元を作ることでした。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

奥村様は以前から工房を運営するお仕事をされていたのですか?

奥村さん
奥村さん

いえ、窯の運営は初めてでした。当社ではもともと日本の伝統工芸品を海外へ販売する事業を展開していました。全国の作家さんとお会いすることも多く、その中で「若い人にもっとチャンスを与えてあげて」とお話しいただいていたのも、窯を開いた理由の一つですね。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

運営にあたり重視されていることを教えてください。

奥村さん
奥村さん

持続的な働き方の実現です。日本では若い職人さんの給与水準は低い傾向にあり、これこそが職人離れが加速する大きな理由でした。時代に見合った働き方を提供すれば、課題が解決できるのではないかと考え、お給料も大卒程度の平均年収を目標にしています。当社が持つ販路を活用すれば、その給与水準も可能と判断しました。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

陶謙窯様には何人くらいの職人さんが在籍しているのでしょうか?

奥村さん
奥村さん

現在のところ6人です。工房長が40代前半の男性、その他は全員女性で、20代が4人、30代が1人いらっしゃいます。京都府立陶工高等技術専門校の卒業生が多く、インターンとして来られた後に正社員になった方もおります。

陶謙窯のイメージ写真

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

若手が多く活気がありそうですね。職場としてどのような雰囲気ですか?

奥村さん
奥村さん

いつもお互いに教え合っていて、和気藹々とした雰囲気です。職人の世界というと「見て盗め」といった独特のしきたりがあると思われがちですが、そんなことは全くありませんね。

また当窯では商談にも職人さんに参加していただいています。クライアントさんの熱量や想いを知った上で仕事に向き合えるので、成長の助けにもなっていることでしょう。

伝統のイメージをあえて覆す

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

陶謙窯さまの器はシンプルでモダンなものが多いですね。このデザインに至った背景を教えてください。

奥村さん
奥村さん

固定概念を打ち破りたいなと思ったのがきっかけです。京焼・清水焼は技法や装飾など多様性に富んでいる一方、使用シーンが限られていたり高価なイメージがありました。また九谷焼や有田焼と比べると海外からの知名度は低い。多くの人に知ってもらうためにも、 ろくろの技術をしっかり感じられるようシンプルな釉薬で仕上げ、日常でも使用しやすい器作りを重視しております。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

基本的な質問で恐縮ですが、ろくろと機械で作るのとは、どう違うのでしょうか?

奥村さん
奥村さん

ろくろで作る器には心地良い“ゆらぎ”があります。ゆらぎは波の音や木の木目など、人に安心感を与えるとされており、機械では決して生み出すことができません。fuuuも、そんな人の手でしか表現できないゆらぎを大切にしています。

陶謙窯のイメージ写真

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

たしかに独特の風合いは見ていてほっとします。ちなみにfuuuはどのように開発されたのですか?

奥村さん
奥村さん

職人さんの経験やアイデアがベースになっています。百貨店などの催事イベントには職人さんに立ち会ってもらうようにしており、「こんなお皿があったらいいな」とお客様からお話を聞くことも多いです。現場でお客様の考えや流行を知るのは大変貴重なことと私は捉えています

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

(リム) 輪花シリーズの縁はとてもキュートですね。どんな発想で作られたのですか?

奥村さん
奥村さん

最近の器はフラットな形がトレンド。ただfuuuは絵付けをしないので、形を魅せていかないと個性が出にくいという一面があります。そこで縁部分にお花をモチーフとした装飾を施しました。

作る人と使い手が集える場所に

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

“開かれた窯元”を目指されているとのことですが、実際に訪問されるお客様は多いですか?

奥村さん
奥村さん

おかげ様で多くの方々にお越しいただいています。SNSで知った方、京都の博物館のショップでfuuuを知って来られる方も多いです。最近ですとチリやシンガポールなど海外からのお客様もいらっしゃいます。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

陶謙窯様がある「清水焼団地」とはどのような場所なのでしょうか。

奥村さん
奥村さん

京焼・清水焼の作家さんや職人さん、窯元さん、材料屋さんが集まるエリアです。およそ60年前、行政と業界が一体となって移転し、団地を形成したのがはじまりです。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

器ファンにとってはたまらない場所ですね!陶器市などは開催されるのでしょうか?

奥村さん
奥村さん

昨年3年ぶりに開催しました。80以上の窯元や作家さんが出店されて、全国からお客様が来られ大盛況でした。他のお店の京焼・清水焼は絵付けがされている中、当窯のシンプルな器はとても目立つようで、多くの方に手に取っていただけました。使いやすいサイズ感を気に入られる方も多いですね。

産学連携の取り組みも

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

地域との取り組みは何か行われていらっしゃいますか?

奥村さん
奥村さん

産学連携という形で、京都女子大学さんと京焼・清水焼のマーケティング活動という取り組みをしています。「伝統的な焼き物をZ世代にどう伝えるか」が趣旨で、月に1度程度職人、営業を交え、意見を交わす場を設けています。SNSやイベントなどいつも斬新なアイデアが活発に出されている印象です。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

議論から新たなモノづくりにつながる可能性もありそうですね。

奥村さん
奥村さん

そうですね。作り手と若い世代が共に考えるという活動は大きな価値があると思います。ちなみに工房に来た学生さんは「工房がこんな楽しい場所とは知らなかった!」と声をそろえて言われていました。なんでも、おじいさんが黙ってろくろを回している風景を想像されていたようですよ。

陶謙窯のイメージ写真

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

陶謙窯さまのこれからの目標を教えてください。

奥村さん
奥村さん

現在、京焼・清水焼の生地を 産地を超えて様々な作家さんに提供しております。将来的には海外の作家さんや職人さんにお届けするような仕組みを作りたいと思っています。スーツ専用生地のブランドがあるように、京焼・清水焼の生地ブランドと世界の器がコラボするようになればうれしいですね。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

最後に、読者へメッセージをお願いします

奥村さん
奥村さん

一つのモノを大切に長く使うことが、今の世の中に求められていると思います。職人が丁寧に作る当窯の器は、今の時代にふさわしいと言えるでしょう。

当窯の器のある暮らしを楽しんでいただき、また若い職人が頑張っていることを思い出してもらえれば嬉しい限りです。

あとがき

伝統工芸と聞くとそこはかとなく華やかなイメージが先行していましたが、取材を通じ、その裏側には多くの課題が潜んでいることを知ることができました。奥村さまの先進的な取り組みは、同じ問題を抱える全国の産地や工房から今後ますます注目を集めることでしょう。歴史に裏打ちされた技術がこれからどのように未来につながるか、目が離せません。

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