本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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日本で古くから作られきた「和ろうそく」。天然由来であることや幻想的な炎の様子から、最近では国内外問わず大変人気があります。
今回は、京都 伏見で伝統的な和ろうそくを作る「中村ローソク」の 和ろうそく職人 田川広一さんに取材をさせていただきました。意外と知られていない、和ろうそくの歴史や魅力、和ろうそくの原料である植物で作ったハンドクリームについて伺います。
田川広一さん
京都伏見にある1887年創業「有限会社中村ローソク」
代表取締役 / 4代目和ろうそく職人
昔ながらの植物蝋100%の和ろうそくの伝統を守りながら、美しい絵付きろうそく、和ろうそくの原料を使ったハンドクリームを販売するなど、新たな挑戦を続けている。
中村ローソクさんが作る伝統的な「和ろうそく」の原料は何でしょうか?
私たちが作る昔ながらの和ろうそくの原料は、ウルシ科の落葉樹「櫨(はぜ)」の実の皮から抽出した櫨蝋(はぜろう)です。ろうそくの芯は和紙とイグサの髄と竹串です。
一般的にキャンドルと呼ばれる洋ろうそくの原料は石油系ですが、和ろうそくは植物性なのですね。
最近は、形は和ろうそくであっても原料は石油系のパラフィンという物も多く見かけますが、私たちは殺生を嫌うお寺の本山に納める物を作っているので昔ながらの純植物性です。それ以外でも、中村ローソクで作る和ろうそくは全て天然由来にこだわっています。
櫨をどのようにして和ろうそくにするのですか?
櫨の実の皮を袋に詰めて蒸し、圧力をかけて絞り油脂を抽出します。それを自然乾燥で固めた後、溶かして型に入れ、再度固めた蝋に素手で蝋を塗り、余分な部分を刃物で切って形を整えます。その後、絵を描くこともあります。ろうそくの芯は、筒状に巻いた和紙にイグサの髄を巻き、それらを竹串に差しています。
手の込んだ工程ですね。関わっている人は多いのでしょうか?
櫨を育てる方、実を採る「ちぎり子さん」、芯を作る「芯巻さん」、蝋を絞る「蝋絞りさん」、精蝋所の方、ろうそくを作る「ろうそく職人」、絵師。他にも沢山の方が関わり、一人でも欠けると伝統は絶えてしまいます。ろうそく職人は全国に10人程しかないなど、厳しい状況ですが、ゼロになったものは容易に戻せないので「続けなければ!」と思ってやっています。
中村ローソクさんでは、どのような和ろうそくを作っていますか?
昔ながらの細長く上部が広がった形や、それに絵が付いた物、最近はティーライトキャンドルや、オーダーですがイベント用に2時間灯るタイプなど、決まった時間だけ灯る物も作っています。
燃焼時間を設定できるんですね!
ろうそくは時間を測る道具でもあったんです。例えば、お坊さんがお経を唱えている時、ろうそくの残りの長さを見て、どのくらい時間が経ったのか確認したり。
和ろうそくは、上の方が広がった形をしていますが、どうしてでしょうか?
作る時に上下ひっくり返して作るんです。蝋がしっかり固まるまで少し時間が掛かるので、少しずつ蝋が下に垂れ、それを繰り返すので自然と上部が大きくなっていきます。ただし、真ん中が細くなっている錨型のろうそく、浄土宗、浄土真宗で使うものですが、昔はカンナで削って形を作り、今は型で作っています。
絵が描かれた和ろうそくは、昔からあるものですか?
私たちが作る「手描き絵ろうそく」は、元々は北国の伝統文化です。仏壇に供える花がない季節、花が描かれたろうそくを花の代わりにしました。また、御所車など立派な絵を描いた物は将軍への献上品でした。
絵には理由があったのですね!中村ローソクさんの綺麗な絵ろうそくは専門の方が描いているのですか?
社員で絵師が2名おりますし、画家さんや扇子の絵師さんなどに依頼することもあります。
中村ローソク
【キャンドル】2匁5本セット 古都乃彩 | 和ろうそく | 中村ローソク
原料の櫨蝋ですが、和ろうそく以外の使われ方はあるのでしょうか?
昔はちょんまげを作るびん付け油や甲冑のコーティングワックスになったので、日本中で大量に生産されていました。しかし、藩の軍事機密だったので文献に残っていないんですよ。
軍事機密!なぜでしょうか?
櫨蝋は、栄養や防腐作用があって長期間保管できる為、籠城の際の兵糧になりました。そこで各藩は隠していましたが、明治になって長者番付を作ると、そこに沢山の精蝋所が並んでいた。今は減少しましたが、そのくらい櫨蝋は沢山作られていたんですよ。
最近増えているお客様はどのような方ですか?また、人気の和ろうそくを教えてください。
お客様は若い女性が多くなっています。和ろうそくの事を詳しく調べて来店される海外の女性の方も多いですよ。
新しい商品で人気があるのは、5分や10分など短い時間だけ灯す小さなタイプで、瞑想に使うそうです。気に入ってリピートされる方は多いです。
瞑想に天然由来の和ろうそくを選ぶ理由は何でしょうか?
和ろうそくの炎は洋ろうそくと異なります。ひとつは色で、和ろうそくの炎は夕日のようなオレンジ色。大昔から夕日の後に夜になって人は眠りますよね。夕日を見ると眠るモードになる感覚が今でも人にあって、夕日色の和ろうそくの炎を見るとリラックスできるんです。
次に、炎のゆらぎです。和ろうそくの芯は筒状の和紙にい草を巻いていますが、い草は自然の物なので太い細いの差があって、不完全燃焼を起こす。その際に芯の筒状の穴から空気を吸い込み、風がなくてもゆらゆらと揺れるんです。この揺れは、人が心地よく感じる「1/fのゆらぎ」の波動と近いのでリラックスできるようです。また、火が揺れで陰影ができるので、仏像や墨絵が立体的に見える効果もあるんですよ。
他に特徴はありますか?
垂れる蝋は少なく、さらにお湯で洗い流せます。石油系の原料のろうそくに比べて、天然由来は人の体にも環境にも優しいですよ。
また、風に強いことも和ろうそくの特徴です。洋ろうそくは芯が糸ですが、和ろうそくは芯が太くて風に強いので外でも使いやすいです。私たちは、1995年に起きた震災の追悼行事「阪神淡路大震災1.17のつどい」で使われる、竹灯籠のろうそくを毎年千個程を寄付していますが、簡単には消えませんよ。
和ろうそくと洋ろうそくでは、様々な違いがありますね。
和ろうそくは油煙が少なく、煤(すす)が付いても払えば落ちるほど簡単に綺麗になります。お寺などの「煤払い」が年末のニュースになりますよね?言葉の通り、払えば和ろうそくの煤は落ちます。一方、洋ろうそくは石油系のべたついた油煙や煤で、洗剤を使わないと落ちない汚れになってしまう。
掃除が大変そうですね。
石油系のろうそくを使う寺院では洗剤でゴシゴシと掃除する事になり、漆や金箔が取れてしまう。また、和ろうそくの煤は木の割れ目に入って防虫になりますが、石油系では防虫にならず、虫が入り悪くなる。実際に古くからある屋内の文化財等の修復が最近増えているんですよ。
石油系のろうそくを使用することで、弊害が起きているのですね。
中村ローソクさんでは櫨蝋で作ったハンドクリーム「和蝋燭職人からのおすそ分け」を販売されています。こちらはBECOSで大変人気がありますが、作ったきっかけを教えてください。
「伝統工芸を維持するとともに、京北の活性化にもつなげたい」という意気込みで、京都市内の伝統工芸職人達で会社を立ち上げ、京都市と一緒に活動している「悠久の灯(あかり)プロジェクト」のひとつです。和ろうそくを多くの方に知ってもらう為に始めました。
プロジェクトの主な活動を教えてください。
伝統的な和ろうそくの原料である櫨の生産が危機的に減少しているので、櫨の栽培を京都市内で始めました。
櫨の生産が減った理由は、安価で大量生産できる石油系の原料の普及ですか?
それもですが、1990年に始まった雲仙・普賢岳の噴火の影響も大きいです。ふもとに広がった櫨の林が被害を受けて生産量が減り、そこで原料を石油系に切り替えたろうそく店も多いです。
少なくなってしまった櫨ですが、プロジェクトではどのように育てているのですか?
林業専門科がある京都府立北桑田高等学校で生徒さんが育ててくれています。高校の敷地内で苗を育て、成長すると山に移植し、実を収穫して最終的に和ろうそく作りを体験してもらいます。育てた物がどんな形になるかを知ってほしいので。
貴重な体験ですね!櫨の栽培で難しかったことはありますか?
良質な櫨蝋にする為に必要な接ぎ木に苦労しましたし、和ろうそく用の櫨の産地は九州、四国、和歌山など、温暖な地域ですが、プロジェクトは京都市北部なので、育てた櫨が冬に枯れてしまうこともありました。ただ、櫨の北限は長野県らしいので、櫨農家さんに協力してもらいながら頑張っています。今は少ない収穫ですが、将来は地産地消したいですね!
多くの人の和ろうそくを知ってもらう為にハンドクリームを作ったそうですが、なぜハンドクリームなのですか?
「ろうそく屋がハンドクリーム?」と疑問に思って問いかけて、こちらが答えるといったやりとりで人は覚えてくれる。そのキッカケを作りたかったんです。また、櫨蝋は昔から舞妓さんや芸子さんの化粧下地に使われていて、皆さん肌がツルツルです。全身に使えますがハンドクリームが一番使う人を選ばないと考えたのも理由のひとつです。
商品化するにあたり、こだわった点はありますか?
「天然由来」です。販売するには、どうしても櫨蝋以外の物を入れる必要がありますが、全て天然由来にしました。
商品化は難しかったですか?
難しくはなかったです。実は「ジャパンワックス」という名で、櫨蝋は海外の有名な高級化粧品だけに以前から使われているんです。商品化は化粧品を作るメーカーさんに依頼したのですが、出来上がった時「今まで作った中で1番いい物ができました」と言われましたよ。
それはすごいですね!中村ローソクさんのハンドクリームの特徴を教えてください。
非常に保湿力が高く、伸びがいい!少しの量で広範囲塗れるので、少量を取る為に竹べらを付けています。
付属の竹べらは衛生面で付いているのでは?
一番の理由は、指で取る量だと多すぎるので竹べらで少しだけ取れるように、なんです。
少量でいいのなら、長持ちしそうですね!
また、櫨蝋は人の体温で溶けて肌に浸透*するので、保湿力がありながら塗った後はサラサラです。塗った後すぐに作業できると好評です。(*角質層まで)
香りはありますか?
どこに付けたか分からないくらい伸びがいいので、使い勝手を良くする為に少し付けました。
天然由来で高い保湿力、伸びが良くて良心的な価格。ファンになる方も多いのでは?
約10年前に販売を始めましたが、リピーターさんや、プレゼントにする方も多く、クチコミでも広がっています。年に1回、300個製造するのですが、ここ2年は次の製造前に品切れしています。
製造量を増やす予定は?
本業は和ろうそく屋ですし、櫨蝋も少ないので増やす予定はありません。ただ、チューブタイプの要望が多いので、それは少し考えています。
中村ローソク
【ハンドクリーム】和蝋燭職人からのおすそ分け | 和ろうそく | 中村ローソク
中村ローソクさんでは、天然由来にこだわって作られていますが、その理由を教えてください。
天然の物を使うことの大切さを、次の世代に伝えたいからです。その為には「まず自分がこだわらないと」と思っています。
中村ローソクさんの商品が天然由来であることに対して、お客様の反応はいかがですか?
最近は若い方ほどサスティナブル等の意識が高いので、私たちが作る物に興味を持ってくれます。お子さんが櫨蝋の和ろうそくを知って、親御さんを連れて来店される事もあるんですよ。
私たちは使用済み和ろうそくを集め、キャンプで使う燃料も作っていますが、天然由来なので燃えた後は水に溶けて土に還る環境に優しい燃料ですし、完全リサイクルです。そういった私たちが伝統でやっている事が、世の中では注目されているので、ぜひ自然由来の和ろうそくの事を多くの方に知ってほしいです。
多くの方たちに伝統的な和ろうそくを知ってもらう為に、今後チャレンジしたい事はありますか?
来日する海外の方は日本の文化や自然が目当ての方が圧倒的で、海外向けに日本が唯一勝負できるのは「文化」だと思っています。そこで、和ろうそく単体ではなく、日本文化をトータルで見せてアピールしたいですね。
例えば、和ろうそくのオレンジの灯りで見た舞妓さん。舞妓さんや芸子さんが白塗りしている理由は、和ろうそくのオレンジ色の灯りで顔を照らした時に映えるようにする為ですから。他には、和ろうそくと仏像、食事や瞑想の様子など、日本らしく綺麗な所で映像化すると、使い方や魅力も伝わりやすい。そして「再現したいなら和ろうそくを使って」と持っていきたいですね。
とても素敵な映像になりそうですね!ぜひ見てみたいです。
今回の取材では、日本の伝統的な自然由来の和ろうそくや櫨蝋について、歴史や魅力を豊富な知識で丁寧に分かりやすく教えていただきました!その中で、和ろうそくと洋ろうそくは、同じ「ろうそく」であるものの、原料をはじめ多くの違いがある事、自然由来の和ろうそくが人や環境に優しいというメリットを知り、それを多くの方に知ってほしい!と感じた取材となりました。
京都・伏見で伝統的な和ろうそくを作り続けている「中村ローソク」が手掛けたハンドクリーム。和ろうそくの原料である植物「櫨蝋」を使った自然にも体にも優しい商品です。
舞妓さんや芸子さんにも大人気の櫨蝋のクリーム。高い保湿力で伸びが良く少量で広く塗ることができます。
中村ローソク
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