水も運べる!?超撥水風呂敷「ながれ」の魅力とは?

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

“水をはじく風呂敷”として注目を集める超撥水風呂敷「ながれ」。物を包むのはもちろんのこと、急な雨が降った時の傘代わりとなるなど、多彩なシーンで活用できる便利な布です。

今回は、そんな「ながれ」の生産を手がける群馬県桐生市の朝倉染布(あさくらせんぷ)の代表取締役社長、朝倉剛太郎さんに開発秘話やおすすめの使い方などを伺いしました。

参考

1892(明治25)年の創業の老舗染色整理加工場。創業当時は絹織物などの天然繊維の加工からスタートし、戦後はレーヨンやポリエステルなどの合成繊維の染色加工業にシフト。2000年には当時ではまだ珍しかったインクジェットプリント加工に着手。世界で活躍するトップアスリートの競泳用水着素材など、老舗企業として培ってきた技術を活かしながら、常に新しい挑戦を続ける。

目次

バックにもなるおしゃれな風呂敷「ながれ」

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

まず、御社を代表する大ヒット商品、風呂敷「超撥水風呂敷 ながれ」の特徴を教えていただけますか?

朝倉さん
朝倉さん

風呂敷に撥水加工を加えたことにより、水をはじく便利な布として、さまざまな用途に活用できることです。バッグに1枚入れておくだけで、急に雨が降ってきた時の傘代わりになったり、また折り畳み傘のカバーになります。袋状にすると水を包んで運ぶこともできるんですよ。

朝倉染布の風呂敷の画像
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

水も運べるのですね!なぜそれほどまで撥水力が高いのでしょうか。

朝倉さん
朝倉さん

繊維の1本1本に、炭化フッ素を付着させる特殊な撥水加工を施しているからです。高温で加工処理しているため、100回洗濯しても撥水機能は変わりません。その一方で布地全体をコーティングしていないので、通気性に優れているのも大きな特徴です。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

どのようなきっかけで「ながれ」を開発することになったのでのしょうか?

朝倉さん
朝倉さん

まず、当社の簡単な歩みからお話させてください。当社は創業当初からOEM工場として、大手メーカーの下請けという立場で生地加工を手掛けていました。長年にわたり業績は好調だったものの、バブル経済以降は中国などとの価格競争に直面し、経営環境は悪化の一途をたどっていました。危機を乗り越えるにはオリジナル商品が必要と考え、その中で当社の強みである撥水技術に着目し、「ながれ」の開発に至ったというわけです。2006年に発売開始しました。

超撥水風呂敷「ながれ」の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

撥水加工はいつ頃から始めたのですか?

朝倉さん
朝倉さん

1980年代にスタートしています。2000年に入ると当時としては先進的であったインクジェットプリント加工を展開していたので、撥水加工とプリント加工の2つの技術を掛け合わせたというかたちですね。

朝倉染布の工場の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

強みを最大限に活かされたのですね。ちなみに撥水技術はどのように開発したのでしょうか?

朝倉さん
朝倉さん

大手化学メーカーさんとの共同開発によるもので、当初は赤ちゃんのオムツカバーに活用されていました。撥水の技術をさらに発展させ、その後は世界トップアスリートの水着にも利用されるに至りました。撥水技術で水への抵抗が低下することから、裸で泳ぐより速くなるとも言われていますね。

朝倉染布の工場の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

ちなみに、その高度な撥水技術を風呂敷以外で商品化するというアイデアはなかったのでしょうか?

朝倉さん
朝倉さん

アロハシャツやランチョンマットという案もありましね。数えきれいぐらい、試作と失敗を繰り返しました。試行錯誤を重ねる中で、撥水技術を効果的に活かせるのが風呂敷であったというわけです。日本で古くから愛されていること、流行り廃りがないことも決め手でした。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

発売以来、累計35万枚を超えるヒット商品となったそうですが、どのように受け止められていますか?

朝倉さん
朝倉さん

生産を開始してまだ17年ですが、「超撥水風呂敷」という風呂敷の新たなジャンルを作れたことは誇りに思っています。近年では同様の風呂敷を生産するメーカーもだいぶ増えていますね。繊維業は成長産業とはいえない分野。そんな業界において付加価値を創造できたのは、何かしらインパクトを与えられたのではないかと自負しています。

多様な個性から生み出される豊富なデザイン

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

和柄よりもポップで遊び心あるデザインの方が多い印象です。

朝倉さん
朝倉さん

撥水加工というエッセンスを加えている分、伝統的な柄よりも、モダンなデザインの方が個性を活かせると考えたためです。インクジェットプリントだからこそ表現できる繊細な色彩感も大切にしています。当初は社員がデザインしていましたが、徐々にアウトソーシングし、現在ではさまざまなデザイナーとのコラボ商品を展開しています。

朝倉染布
華々 (平織96cm) 風呂敷

「ながれ」の写真

独自技術により超撥水の「濡れない風呂敷」を実現

華やかさと和の風情を兼ね備えた1枚。ecoバックの代わりとして、急な雨の際には傘代わりとして。ムレることもないので、スカーフや膝掛としてもお使いいただけます。

朝倉染布
華々 (平織96cm) 風呂敷

この商品をもっと詳しく見てみる
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

定期的にデザインを公募していると聞きますが、これはどういったものなのでしょうか?

朝倉さん
朝倉さん

2年に1回のペースで「撥水風呂敷『ながれ』デザインコンペ」という取り組みを行なっています。国籍や職業などは一切問わず、柄デザインを募集し、優秀な作品を商品化するというものです。当初は応募が来るか不安でしたが、蓋を開けてみると、数百点もの応募をいただけて驚いたものです。

鶴のイラストが描かれた風呂敷の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

「ながれ」の意外と知られていない、おすすめの使い道はありますか?

朝倉さん
朝倉さん

防災グッズとしての活用です。寝る時のブランケット代わりになり、何枚か組み合わせれば簡易テントを作ることもできます。また避難所の間仕切りにもなるので、プライバシーの確保に寄与すると言えるでしょう。また骨折した時の三角巾など怪我をしたときの応急措置にも役立ちます。1枚の布で、さまざまな使い道があるところも「ながれ」の魅力と言えますね。

風呂敷の画像
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

超撥水技術はレジャーマット「Rain Rain Go Away」にも応用されていますね。これはどんな場所で使うのがおすすめですか?

朝倉さん
朝倉さん

「ながれ」同様に、撥水力に優れているので、雨が降った後の湿った芝生や河原などで威力を発揮します。通常の風呂敷ですと地面の水分によってお尻が濡れてしまいますが、「Rain Rain Go Away」ならばそんな心配は無用です。生地が薄く、ぐるぐるに巻けるので、ヨガマットのように気軽に持ち運べるのもポイントです。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

水たまりに景色が映り込んだようなデザインが斬新ですね。

朝倉さん
朝倉さん

シンガポールのデザイナー、ジャクソン・タンさんによるデザインです。シンガポールのデザイナーと関東地方のものづくり企業が国の支援下で協業する「共(KYO)」というプロジェクトの一環で制作しました。

朝倉染布
【超撥水加工】朝倉染布 Rain Rain Go Away (ラージ) レジャーマット

レジャーマットの画像

「水たまり」に景色が映り込んだような独創的なデザイン。

デザイン先進国・シンガポールのChris Leeデザイン事務所と朝倉染布のコラボによるオリジナルレジャーマット。ありそうでなかった、「水たまり」のようなデザインに仕立てました。

朝倉染布
Rain Rain Go Away (ラージ) レジャーマット

この商品をもっと詳しく見てみる

繊維のまち、桐生

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

「西の西陣、東の桐生」と称されるほど、桐生市は古くから線維産業が栄えたようですね。どのような歴史を歩んだ街なのでしょうか。

朝倉さん
朝倉さん

奈良時代から絹織物の生産が始まったと伝えられています。江戸時代には徳川家の天領となり、経済的に大変恵まれていたそうです。明治時代に入ると絹織物は海外へ輸出され、また手織りから力織機へと発展しました。一方で1990年に入ると、繊維産業を取り巻く環境が大きく変化したことで桐生の繊維業は衰退し始めかつての中核産業の地位は失われました。現在、商工会議所のデータでは繊維業を営む企業は1000社ほどあるようですが、年々減っている状況です。

朝倉染布の工場の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

今後は、どのような取り組みを展開される予定か、お聞かせください。

朝倉さん
朝倉さん

おかげさまで「ながれ」の売れ行きは順調で、多くのお客様が撥水力を重視していることがわかりました。今後も、当社ならではの撥水力を活用したアイテムを開発していきたいですね。
昨年には、 持ち手部分を結んで使用する「撥水あづま袋『AZUMA』」という和モダンバッグを販売しました。「撥水の袋がほしい」「『ながれ』を上手く包めない」というお声に応えて開発したもので、外国人の方々からも好評をいただいています。これからも多くの方の暮らしに彩りを与えられるようなアイテムを創作していきたいと思います。

あとがき

取材前から「ながれ」の存在は知っていましたが、防災グッズとしての活用は思いつかず、まさに目から鱗でした。また創業100年以上の老舗ながら、伝統に甘んじることなく、次世代に向けて新しい挑戦を続ける姿勢には感銘を受けました。今後、朝倉染布さんからどのようなイノベーションが起きるのか、ますます目が離せません。

この記事で取材したブランド「朝倉染布」

朝倉染布の「ながれ」の写真
このブランドの商品を見てみる

ギフトランキング

\ BECOS編集部が厳選 /

伝統工芸品おすすめランキング発表

\ BECOS編集部が厳選 /

伝統工芸品おすすめ
ランキング発表

ギフトランキング

\ BECOS編集部が厳選 /

伝統工芸品おすすめランキング発表

\ BECOS編集部が厳選 /

伝統工芸品おすすめ
ランキング発表

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次