日常使いしたい伝統工芸!伝統とモダンが織りなす「香川漆器」

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

古来より日本で親しまれてきた漆器。食卓を彩る華やかな道具である一方、「扱いが難しそう」「使い道がわからない」と思っている方も多いかもしれません。そんな漆器を「もっと気軽に楽しんでもらいたい」という想いで創作するのが、香川漆器を手がける川口屋漆器店です。

今回は、川口屋漆器店の代表、佐々木康之さんに香川漆器の魅力や日常使いのコツなどを伺いしました。

参考

1946年、香川県さぬき市で創業。三代目となる佐々木康之氏以降、現代のライフスタイルにあった商品開発をスタート。2015年には漆器プロダクトブランド「87.5」を立ち上げる。伝統技術とモダンな感性が織りなし、普段使いに適したデザインが評判を呼ぶ。2012年 うどん県アートコンペティション大賞受賞「セトウチウツワ」、2014年かがわ県産品コンクール大賞受賞「Holiday’s dish」。

目次

5つの技法を用いる伝統工芸

香川漆器の写真
マツモト ナホコ
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まず、香川漆器の特徴と歴史を教えてください。

佐々木さん

佐々木さん

香川漆器とは高松市を中心に作られている漆器で、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)、後藤塗(ごとうぬり)、象谷塗(ぞうこくぬり)という、5つの伝統技法をベースとしています。江戸時代、文化芸術を奨励していた高松藩主が茶道や書道とともに漆芸を振興したのがはじまりと伝えられます。赤や緑、黄など多色使いするのも香川漆器の特徴です。

マツモト ナホコ
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その5技法とはどんなものなのでしょうか?

佐々木さん

佐々木さん

ざっくり言うと、「蒟醤」は刀で模様を線彫りする技法、「存清」は、漆絵の輪郭部を彫刻刀で線彫りし、細部を毛彫りして仕上げる技法、「彫漆」は彫刻刀で模様を作り出す技法です。「後藤塗」は朱色を基調とした塗りで、「象谷塗」は黒色をメインとした塗りを指します。

香川漆器の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

それらの技法が美しい漆面や模様を生み出していくのですね。ちなみに使い勝手という点ではどのような魅力があるのでしょうか。

佐々木さん

佐々木さん

熱伝導率が低いため、漆器全体の温度が変化しにくいことがその一つです。温かい料理は最後まで温かく味わえ、冷たい料理は冷たいまま楽しむことができます。熱い汁物に最適で、味噌汁やお吸い物はもちろん、鍋をする時の取り皿にもピッタリですよ。持ち手が熱くならないので、小さな子どもからお年寄りまで安心して手にすることができます。また香川漆器に限りませんが、漆には抗菌作用があります。食べ物が痛みにくいためお弁当箱として使うのはとても理にかなっているんです。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

川口屋漆器店は、1946(昭和21年)におじいさんの宗雄さんが創業されたと聞きました。創業のきっかけはご存じですか?

佐々木さん

佐々木さん

戦争が終わったことで、祖父が「食事を楽しむ人が増える=漆器の需要が高まる」と考えたことがはじまりと聞きます。当時は今よりも漆器が多く使われていたので、商売になると目を向けたそうです。

“いつもの暮らしの中で、幸せを感じられる道具”を目指す

香川漆器の写真
マツモト ナホコ
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2015年にスタートしたブランド「87.5(ハチジュウナナテンゴ)」 はモダンなアイテムが多いですね。

佐々木さん

佐々木さん

そうですね。“いつもの暮らしに馴染む道具”をモットーに、伝統工芸の技術を用いながら、普段の食卓で使いやすいデザインにこだわっています。漆器というと「扱いが難しい」と敬遠される方が多いですが、あらゆる料理を盛れますし、陶器と同じように洗えるんです。アイテムを通じてそんな気軽感もお伝えしています。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

ブランド名の由来を教えてください。

佐々木さん

佐々木さん

工房が四国88ヶ所巡りの87番から88番への道中にあることにちなんで名付けました。“四国・香川産の漆器をもっと知ってもらいたい”という想いを込めています。

香川漆器の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

赤や黄、緑などビビットな色使いが印象的です。これはどのように色付けしているのでしょうか。

佐々木さん

佐々木さん

漆は黒や赤をしていると思われがちですが、本来の色は飴色です。黒や赤といった顔料を漆に混ぜているため、あのような色となります。それと同じ仕組みで87.5のアイテムにも漆に鮮やかな顔料を混ぜています。

マツモト ナホコ
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「カラーディッシュ」は淵の部分に色付けされていますが、何から着想を得ているのでしょうか。

佐々木さん

佐々木さん

香川漆器の伝統的な塗り方の一つである「コマ塗」をモチーフとしています。円を何重にも描く塗り方で、昔からよく用いられています。そのコマ塗りを現代風にアレンジしました。

川口屋漆器店
【皿】カラーディッシュ (21cm, 24cm) 87.5

川口屋漆器店「カラーディッシュ」の写真

普段使いにぴったりの漆塗の皿。

サラダや副菜、メインなど、どんな料理も盛り付けるだけでお洒落に演出できます。

川口屋漆器店
【皿】カラーディッシュ (21cm, 24cm) | 香川漆器 | 87.5

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マツモト ナホコ
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お客さんから特に反響のあったアイテムを教えてください。

佐々木さん

佐々木さん

最近ですと「スタッキングボウル」が人気です。ありそうでなかった大きさの小鉢で、鍋の取り皿や蕎麦猪口として、さらにお菓子、おつまみ、飯椀などさまざまな用途に使えるデザインです。軽いのでお子さまの器としても最適だと思います。またきれいに重なるので収納に便利であることもポイントです。おかげさまでご好評いただいています。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

ブランドサイトにある、漆器を使ったテーブルコーディネートの写真が目を惹きます。ホームパーティーを想わせる華やかな雰囲気ですね。この写真を採用された背景をお聞かせください。

佐々木さん

佐々木さん

イベントでお客様とお話しする際、「これは何に使う漆器ですか?」と聞かれることが多かったのがきっかけです。漆器は汁物やおせちだけでなく、自由に楽しめるものということを発信すべく、さまざま料理を盛りました。

香川漆器「87.5」のテーブルコーディネート写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

フライドポテトや、チーズ、カレーなど油分がある料理もそのまま盛り付けてよいのでしょうか?

佐々木さん

佐々木さん

表面を塗料でコーティングしているので、油分が豊富な料理をのせても問題ありません。油染みの心配も不要です。揚げ物の器として気軽にお使いいただきたいですね。

漆器のお手入れは簡単!塗り直しも可能

香川漆器「87.5」の写真
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

漆器をできるだけ長く愛用する上での注意点を教えてください。

佐々木さん

佐々木さん

洗う時はスポンジの柔らかい面を使い、水気をすぐ拭き取ると美しさが長持ちします。また食洗機と電子レンジのご使用は避けてください。その他は、陶器と同じように扱っていただいて問題ありません。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

丁寧に扱っていても表面が剥げてしまうことがあります。そんな場合はどうしたら良いのでしょうか?

佐々木さん

佐々木さん

当社では、塗り直しも承っています。剥げてしまっても、その部分に漆を重ねることで蘇ります。先日は10年前にご購入された汁椀の塗り直しをさせていただきました。末長く使えるのも漆器の大きな魅力です。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

まさにサスティナブルな器ですね。ちなみに塗り直しはお幾らくらいかかりますか?

佐々木さん

佐々木さん

アイテムにもよりますが、2000円くらいから承っています。ちなみに前と違う色を塗ることも可能です。たとえば赤から緑に塗ることで印象がガラリと変わるので、新鮮な気分でお使いいただけますよ。

川口屋漆器店の工房の写真
マツモト ナホコ
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近年、伝統工芸の後継者不足が懸念されていますが、香川漆器ではどのような状況でしょうか。

佐々木さん

佐々木さん

例に漏れず、香川漆器においても後継者不足で悩まされていますね。今、活躍している職人の多くが70歳を超えており、そろそろ引退を考えている人も多いです。また昔から続く工房でも継承が進んでいるところはごくわずか。10年後、20年後には職人はかなり減っていると思いますね。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

「87.5」のアイテムを実際に見たい場合、香川県のお店に赴く以外に方法はありますか?

佐々木さん

佐々木さん

東京ドームで開催される「テーブルウェアフェスティバル」やマリンメッセ福岡の「全国陶磁器フェア」をはじめ、全国のイベントにできるだけ出展しています。ぜひお越しいただければ嬉しいですね。スケジュールは当社ホームページに随時掲載しています。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

最後に、これからの目標を教えてください。

佐々木さん

佐々木さん

生活に取り入れることで、毎日の気分が少しでも豊かになる器を作っていきたいですね。また漆器は普段から気軽に使える器であることを知ってもらえるような取り組みにも注力していきたいです。

あとがき

漆器といえば「汁物やおせちに使う器」とイメージしていましたが、取材を通じ、どんな料理にも使える道具であることに気づけました。特に揚げ物をそのまま盛るという使い方は目から鱗です。お鍋の取り皿やお菓子入れなど、ぜひ日々の暮らしの中で、積極的に活用していきたいと思います。

この記事で紹介したブランド「87.5(川口屋漆器店)」

香川漆器「87.5」の写真
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