​​日本の伝統を次世代につなぐ“和える”が目指すもの

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

編集部 板倉
編集部 板倉

日本の伝統を活かした新しい取り組みにチャレンジを続けている、株式会社和える。その和えるさんが日本の伝統産業の職人さんの技術を活かして、生まれた時から一生ものとして使える日用品をオリジナルで製作している“0歳からの伝統ブランドaeru”さんへ取材に伺いました。

株式会社和える

『先人の智慧(ちえ)を暮らしの中で活かし、次世代につなぐこと』を目指し、2011年に設立。社名には『“先人の智慧”と”今を生きる私たちの感性”を和えた、豊かな暮らしを次世代につなぐ仕組みを生み出していきたい』という思いが込められている。

“伝統”をキーワードに小売り・リペア・学び・講演・里山事業など業種の垣根を越え、多角的な取り組みを精力的に行なっている。

お話を伺ったのは…

東京「aeru meguro」 ホストマザー(店長)

森 恵理佳さん

2014年入社。“0歳からの伝統ブランドaeru”の直営店、東京「aeru meguro」でホストマザー(店長)を務めるほか、“aeru school”をはじめとする事業の企画運営、講演会などで幅広く活躍している。

目次

創業からオリジナルブランド誕生に込められた思い

aeru meguro 店内写真

aeru meguro 店内写真

編集部 板倉
編集部 板倉

2011年、当時大学卒業間近だった代表・矢島さんが『株式会社和える』を創業されたそうですね。どのような思いから、ご自身で事業をスタートされることになったのでしょうか?

森さん
森さん

代表・矢島が中高時代に所属していた茶華部の活動を通して、お茶室やお茶道具といった日本の伝統文化に囲まれていると、「気持ちが安らぎ、落ち着く」といった感覚に気づいたことが、将来職人の手仕事に携われる仕事に就きたいと考える原点になっています。

その後、ジャーナリストを志し大学に進学。在学中にフリーライターとして、旅行会社の会報誌で、全国の職人さんたちに取材する機会を得たことで“日本にはこんなにも美しいものがある。それなのに、そもそも日本の伝統を知る機会がない”と気づいたことから、一人でも多くの人に伝統の魅力を伝えたいと考え、事業がスタートしました。

編集部 板倉
編集部 板倉

創業後、初めての取り組みとして生まれたのが“0歳からの伝統ブランドaeru”ですね。なぜ“0歳から”という点にフォーカスされたのでしょうか?

0歳からの伝統ブランドaeruカタログ

“0歳からの伝統ブランドaeru”のご案内紙

森さん
森さん

矢島が新興住宅地で育ったこともあり、部活動を始めるまでは、日本の伝統や職人の手仕事に触れる機会がなかったことから、「幼い頃から日本の伝統に出逢える機会を生み出したい」と考えたことがきっかけになっています。

編集部 板倉
編集部 板倉

確かに自分の経験を振り返ってみても、幼少期から日常的に伝統に触れられる機会には恵まれていなかった気がします。

森さん
森さん

創業当時、子ども向けのものを作る職人さんが多くなかったことも影響しています。aeruでは、あえて「生まれた時から使えるもの」を作ってお届けすることで、伝統産業や職人さんの手仕事に自然と触れるきっかけを創出したいと考えたことから“0歳からの伝統ブランドaeru”が誕生しました。

出産祝いセット

『徳島県から 本藍染の 出産祝いセット』

和えるが多角的な取り組みで伝統の継承を目指す理由

矢島里佳さん著の書籍

矢島里佳さん著の書籍

編集部 板倉
編集部 板倉

オリジナルブランドの小売からスタートされた訳ですが、小売業に特化するのではなく、事業の垣根を超えて、今では実に11もの事業を展開されていらっしゃいますね。なぜそのように多角的な取り組みに挑戦されているのでしょうか?

森さん
森さん

私たちは日本の伝統を“守りたい”という気持ちではなく、皆さまに知っていただいた上で、「日本の伝統を次世代につなぎたいと思いますか?」と、問いかけることを大切にしています。その結果、今では11の事業を展開しています。

クリックで拡大できます

編集部 板倉
編集部 板倉

現在、特に盛り上がりを見せている事業はありますか?

森さん
森さん

“0歳からの伝統ブランドaeru”は弊社の礎ですが、学びを通して日本の伝統を伝える“aeru school”、中小企業のリブランディングをお手伝いする“aeru re-branding”、金継ぎや塗り直しを行う“aeru onaoshi”、私どもの知見を共有させていただく講演事業“aeru talk”などです。

編集部 板倉
編集部 板倉

“aeru school”では、具体的にどのようなことが行われているのでしょうか?

森さん
森さん

幼稚園・保育園から小中高大、大人まで、年齢や個人団体を問わず、幅広く日本の伝統を体験できるワークショップをオリジナルで提供させていただいています。

伊勢型紙

伊勢型紙

伊勢型紙を用いて染めた和紙

伊勢型紙を用いて染めた和紙

編集部 板倉
編集部 板倉

依頼が増加しているのはなぜですか?

森さん
森さん

日本の伝統を学べるということはもちろんですが、それだけではなく幼稚園や保育園では非認知能力を高めること、小学校ではSDGs教育、中学高校ではSTEAM教育や探求の授業の中で取り入れていただけるプログラム構成になっているので、授業に取り入れていただけやすいという点も大きいと思います。企業の新人研修、チームビルディングとしてもご依頼いただいています。

編集部 板倉
編集部 板倉

中小企業のリブランディングを行う“aeru re-branding”は、どのような目的から行われているのでしょうか?

森さん
森さん

近年、地域の無形文化であるお祭りなども衰退し、それを下支えしていた職人さんのお仕事もなくなっていることなどが背景にあります。まずはお祭りなどを支えてきた地元の企業を元気にすることで、無形文化や職人の手仕事をつなぐことができるのではないかと考え、このような取り組みを行なっています。

和えるが考える伝統を次世代に繋ぐ意味とは?

こぼしにくいコップ

『青森県から 津軽塗りの こぼしにくいコップ』の製作工程

編集部 板倉
編集部 板倉

和えるが考える、現代人が暮らしに伝統工芸を取り入れる意味とは何でしょうか?

森さん
森さん

忙しい現代生活の中では、どうしても効率を重視して、お手入れや扱いが手軽な物を選びがちではないでしょうか。そんな日常に、伝統工芸品をあえて取り入れることで、慌ただしく流れがちな暮らしの中に立ち止まる機会を持つことができます。使えるのはもちろんのこと、その存在が美しいということが、暮らしの中に、ふと一呼吸おける機会を与えてくれるのです。日本の文化や伝統には、気持ちの余裕や優しさを育む力があると考えています。

編集部 板倉
編集部 板倉

和えるは“日本の伝統を伝える職人集団を目指す”とおっしゃっていて、とてもユニークですね。

森さん
森さん

職人さんの手がけるものは、ただ物を作り利益を上げられればいいという考えではなく、製造過程で環境や携わる人々に悪影響がないかといったことまで配慮して作られているものが多いです。私たちは製品自体の良さだけでなく、そういった職人の生きる姿勢や智慧も含めてお客様に「お伝え」することに重きを置いています。お客様自身にものが出来上がるまでの物語を知っていただき、より広い視点を持って、日々の暮らしを楽しんでいただくことで「消費者」ではなく「暮し手」になっていただきたいと考えています。

金継ぎしたグラス

金継ぎしたグラス

和えるがこれから目指すもの

こぼしにくい器

『こぼしにくい器』シリーズ

編集部 板倉
編集部 板倉

コロナ禍をはじめ、近年私たちはめまぐるしい変化に見舞われていますが、和えるが新たに始められた取り組みなどはありますか?

森さん
森さん

“aeru gallery”というプラットフォームを立ち上げ、コロナ禍の影響で販売先を失った職人さんたちに作品を販売する場を提供させていただいたり、オンライン上で動画を用いるなど、商品の魅力をどのように伝えるかといったことにも注力しました。

編集部 板倉
編集部 板倉

状況の変化にも柔軟に対応されていらっしゃいますね。

森さん
森さん

そうですね。“aeru school”はオンラインでの開催が当たり前になったことで、今までは届けられなかったところにも届けられるようになりました。また、オンラインをきっかけに、リアルでの開催のご依頼があったりと、新たな機会創出にもつながっています。その他にも、コロナ禍が伝統産業界にもたらした影響を独自でまとめた調査レポートをメディアに発信し、伝統産業界の現状を知っていただき、関心を持っていただくとい取り組みも行いました。数多くのメディアに取り上げていただくことができ、伝える職人としての手応えを感じました。

編集部 板倉
編集部 板倉

今後、力を入れて取り組んでいかれたい事業はありますか?

森さん
森さん

家庭の環境や住んでいる場所などを問わず、一人でも多くのお子さんに日本の文化を体験してほしいという想いから、来年は自治体や文化庁のご協力を得ながら、全国の学校へ“aeru school”事業を通し、お伺いする予定です。山との暮らしや恩恵を受ける体験ができる秋田での里山事業“aeru satoyama”にも力を入れています。

森さん
森さん

私たちが色々な面から日本の伝統や文化と共に暮らす「アイディアと体験」を発信することで、人々が周りの人や環境、自分にも「優しい」といったことも考えて、日々の行動を選択できる世の中になるお手伝いができれば嬉しいです。

あとがき

いかがでしたか。日本の伝統や文化を一人でも多くの人に知ってもらう機会を創出することを目的に、新たな取り組みを次々と行う株式会社和える。伝統を次世代につなぎ、豊かな暮らしを実現するヒントがたくさん見つかりますね。

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