京仏壇の製造販売を手掛ける仏壇のプロに聞く!「仏壇」のこれから

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

Journal編集長
Journal編集長

今から約1330年ほど前、天武天皇の命がきっかけとなり、祀られるようになったという仏壇。その後、長い年月を渡って日本人の生活に欠かせない存在となりますが、ライフスタイルや価値観の変化とともに、在り方が変わってきているのではないでしょうか。そこで今回は、京都で仏壇・仏具の製造販売を手がける『岩田宝来屋』常務の山田さんに仏壇の現状とこれからについて、お伺いしました。

参考

岩田宝来屋

岩田宝来屋外観

1924年の創業以来、京都に店舗を構え、京仏壇・京仏具の製造販売や仏壇・仏間の改修を手がける。京仏具では各宗本山の出入りを許可されており、三千院門跡、青蓮院門跡、曼殊院門跡など多くの寺院の仏具納入や修復に携わっている

目次

仏壇文化の現状

廃れつつある仏壇

仏壇の写真

Journal編集長
Journal編集長

ひと昔前だと、どのご家庭にも見られた仏壇ですが、近頃は仏壇を持たないご家庭も増えていますよね。仏壇業界では今どんなことが起きているのでしょうか?

山田さん
山田さん

弊社の場合、売れる本数が大きく減少したといったことはないのですが、私が入社した27年ほど前と比較して、お客様がお買い求めになられる仏壇の単価が半分程度になっています。

Journal編集長
Journal編集長

お客様から求められる仏壇が変わったということでしょうか?

山田さん
山田さん

大きくて立派なものより、インテリアに馴染みやすく、コンパクトなものが好まれるようになりました。

Journal編集長
Journal編集長

そういったニーズの変化には、どのようなことが影響しているのでしょうか?

山田さん
山田さん

仏間や畳が自宅にあるご家庭が減ったことや、法事は家で行わないといったスタイルが主流になり、仏壇を他人に見せる機会が減ったことから、豪華な物を求めない方が増えたと感じています。先祖供養やお葬式に関しても、仏式にこだわらず、出来るだけ簡素に行いたいという方も増えていますよね。

仏壇の本来の役割とは?

真宗大谷派寺院仏具

Journal編集長
Journal編集長

仏壇はどのような経緯で生まれ、日本人の生活に根付いたのでしょうか?

山田さん
山田さん

一般家庭に普及したのは、江戸時代のことです。キリスト教禁制に伴い実施された「宗門改め (しゅうもんあらため) 」という制度が引かれた際に、仏教徒になった証として家に仏壇を祀りましょうという風潮が高まりました。
仏壇は、先祖供養のためのものとお考えの方も多いと思いますが、本来は自分が信仰している宗派の御本尊様をお祀りするもので、お寺に行って手を合わせられない時に、仏壇に向かって手を合わせ、同時に先祖供養も行うためのものなのです。

Journal編集長
Journal編集長

その後、仏壇と日本人の関係はどのような変化を見せるのでしょうか?

山田さん
山田さん

戦後ぐらいまでは、家・仏壇・お墓が“家の顔”という時代が続きました。昭和の高度経済成長期以降は、地元を離れ就職先で生活の基盤を築く方が増えたことから、仏壇やお墓の在り方が変化し、業界が厳しくなってきたと感じています。ご子息の負担にならないよう、墓じまいや仏壇じまいを検討される方も増えていますよね。

Journal編集長
Journal編集長

ご家庭の仏壇・仏具に限らず、日本人のお寺に対する意識も変化しているのでしょうか?

山田さん
山田さん

昔の日本では、日頃からお寺に相談に行く方や、お参りに行く方が多く見られましたが、昨今、そのような形でお寺を必要とされる方は減っていると感じます。

Journal編集長
Journal編集長

お布施や寄進も減っているようですね。

山田さん
山田さん

お布施は元々助け合いの文化から生まれた風習なので、出せる人が出し、出せない人は出さなくてよいというものだったのですが、近頃は一律幾らといったスタイルが主流になったことから、大口の寄進をされる方があまり見られなくなりました。

Journal編集長
Journal編集長

仏具の修復や維持などにも影響がありそうですね。

山田さん
山田さん

あまり名の知れていない地方のお寺にも、歴史的に価値のある素晴らしい仏像が数多くあるのですが、修復までの予算が取れず、このままでは後世に残すことができないといった実情を日々目の当たりにしています。

Journal編集長
Journal編集長

何とか次世代に繋いでいきたいですね。

山田さん
山田さん

修復を行うことは、貴重な文化を守るだけでなく、職人の技術を継承することにも繋がります。クラウドファンディングなどで、修復を行うための費用を募るといった試みの検討も行っていきたいですね。

仏壇のニーズが変わることでの影響

Journal編集長
Journal編集長

求められる仏壇の形態が変わってきたことで、職人さんへの影響などはありますか?

山田さん
山田さん

安価な仏壇・仏具が求められるようになったことで、機械による製造が主を占めるようになり、昔ながらの手仕事が必要とされなくなっています。このような状態が続くと、本当に良い仏壇が欲しいという方が現れた時に、それを作れる職人がいないという状況に陥りかねません。

Journal編集長
Journal編集長

そのような現状の中で、御社はどのような役割を果たされているのでしょうか?

山田さん
山田さん

京仏壇・仏具は木地、彫刻、漆塗り、金箔押し、錺金具、蝋色、蒔絵、彩色等様々な職人の技が結集してできたものです。弊社は各職の監修・監督と最終的な組み立てを担っているので、職人の方に技術を研鑽し続けていただくためにも、一人でも多くのお客様と出会い、新たな仕事を生み出していく必要があると考えています。

Journal編集長
Journal編集長

仏壇は工芸の総合芸術なんですね。

山田さん
山田さん

職人の手仕事で作られる仏壇は、人間が作った温かみや迫力があります。そういった仏壇が家にあることで、自然と手を合わせたくなる、心が安らぐといったものをこれからも、提供していきたいですね。

岩田宝来屋の挑戦

木工技術を海外へ

海外ワークショップの様子

Journal編集長
Journal編集長

御社は職人さんの技術の継承のために、日本に留まらず、海外でも新たな挑戦をされているそうですね。

山田さん
山田さん

2022年の秋頃に、中東・ドバイで約1ヶ月間に渡り、木工技術を紹介するワークショップを開催してきました。ドバイは“砂の文化”の国ということもあり、木工技術への興味関心が非常に高く、熱心に参加してくださる方々が非常に多く、驚きました。

Journal編集長
Journal編集長

海外に新たなビジネスチャンスを見出されているということでしょうか?

山田さん
山田さん

海外で仏壇が宗教用具として売れるというのはなかなか難しいですが、日本の技術を紹介することが、新たなビジネスになると考えています。

新商品の開発

檜のジュエリーボックスと漆塗りのバングル

Journal編集長
Journal編集長

仏壇・仏具以外の商品開発にも積極的に取り組まれているそうですね?

山田さん
山田さん

檜のジュエリーボックスや、ビビッドな色使いが目を引く漆塗りのバングルなど、日常生活の中で職人の高い技術を堪能いただける商品を展開しています。社寺建築の際に用いられる“斗組”という技術を生かしたテーブル、照明やトレイのような商品のシリーズ化も予定しています。

斗組を利用したテーブル

Journal編集長
Journal編集長

山田さん
山田さん

新たな取り組みでは、自社だけでなく、伝統工芸の行き先を考えていらっしゃる業者さんとコラボして、“京都”というものを日本はもちろん、海外でも発信していきたいと考えています。

挑戦は続く!岩田宝来屋のこれから

職人さんの手元寄り

Journal編集長
Journal編集長

今回伺ったお話を通して、仏壇を祀る文化や職人さんの技術を絶やしたくないという思いがさらに強まりました。

山田さん
山田さん

日本人の仏教離れが加速しているといった話もよく耳にしますが、これまでの長い歴史の中では、そういった場面が実は何度もあったのです。これまでのようにアナログな体質のままで良いのかなど、見直すべき点は色々とありますが、私は日本人が手を合わすことをやめることはない、家に仏壇があって手を合わせないとダメだなと思う時代がまたやってくると考えています。

Journal編集長
Journal編集長

これから更に挑戦されたいことはありますか?

山田さん
山田さん

先ほどご紹介した斗組を取り入れた商品の組み立てに、一般のお客様にもトライしていただき、技術の素晴らしさや魅力を体感いただくような取り組みもを行っても面白いのでは?と考えています。また、日本の文化に興味をお持ちの海外の方々にも、職人の作業が間近に見られる機会を提供することで、さらにファンになっていただくような取り組みを行っていきたいです!

あとがき

仏壇は、様々な職人さんの技術が集結し出来上がるというお話が印象的でした。仏壇の文化や技術を絶やさず継承するためには、仏壇をお祀りする本来の目的やこれまでの歴史を日本人一人一人が改めてきちんと理解し、自分との心地よい関係性を考え直す必要があるのかもしれませんね。

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