本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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みなさんは加賀友禅を知っていますか?石川県の金沢を中心につくられる伝統的工芸品で、京友禅とならんで日本を代表する染物なんです!
今回は、加賀友禅作家の牧野顕三(まきのけんぞう)さんに、加賀友禅の魅力、そして着物だけではない小物作品の味わい方についてお話を伺いました。
まずは加賀友禅のことをよく知るために、加賀友禅の歴史や特徴、また京友禅との違いについてまとめてみました!
加賀友禅の歴史は今から約500年前にさかのぼります。
加賀友禅の以前にも、加賀には「梅染」という独特の染色技法が存在していました。
「梅染」とは:
梅の皮や根から抽出した染汁を用いて染める技法。加賀産の絹が用いられた。染める回数によって赤~黒の色合いとなり、献上品としても珍重された。
その後、17世紀中頃から加賀友禅の原点ともいわれる「加賀御国染」が発達し、無地染であった「梅染」に模様が施されるようになりました。
「加賀御国染」とは:
「色絵」「色絵紋」「兼房染(けんぼうぞめ)」の総称。
「色絵紋」は、家紋の周囲を鶴亀・松竹梅などおめでたい模様や草花などで囲ったもの。繊細で華やかな表現で、後に「加賀紋」となった。
「兼房染」は、黒色を用いた染物のこと。
「友禅」という呼び方もその名から取られているように、加賀友禅の歴史で重要な人物が、宮崎友禅斎です。
宮崎友禅斎は、江戸時代中期に京都で人気の絵師で、主に扇に絵を描いていました。友禅斎のつくる洒落たデザインの扇は「友禅扇」と呼ばれ、大変人気があったということです。やがて友禅斎は、着物のデザインも行うようになり、それが「友禅染」の始まりといわれています。
正徳2(1712)年に友禅斎は金沢の御用紺屋「太郎田屋」に移り住みました。「加賀御国染」で繊細な図案を描く技術を確立していた加賀の染物に、友禅斎の卓越したデザインや染色技術が加わり、金沢独自の「加賀友禅」が発達していったといわれています。
加賀友禅の名を全国に知らしめたのが、加賀友禅作家として初めて人間国宝に認定された木村雨山(1891-1977) です。
金沢出身の雨山は、加賀友禅とともに日本画を学んだ後、32歳で加賀友禅作家として活動を始めます。大胆かつ確かな筆運びと、工夫を凝らしたデザインで花鳥風月を華やかに描きだす雨山の作品は、内外で高く評価され、パリ万国博覧会(1937)でも銀賞を受賞しました。雨山は昭和30(1955)年に加賀友禅作家として初めて人間国宝に認定され、加賀友禅の名を一躍有名にしました。
雨山の作品、華やかで大胆なデザインが素敵ですね!
では、「これを見れば加賀友禅とわかる!」という加賀友禅ならではの特徴についてお教えしましょう!
加賀友禅は、はっきりとした古典的な色合いが特徴です。これは、加賀五彩という色調に基づいて描かれているためです。
加賀五彩とは:
加賀友禅の基調となっている5色。
藍、燕脂、黄土、草、古代紫
現代の加賀友禅作家は全体の配色を決める際、加賀五彩を基にしながらも、時代の流行りや自身の個性で少しずつ変えているそうです。
加賀友禅の大きな特徴の一つが、絵画のように写実的な自然描写です。着物の模様には花鳥風月が描かれることが多いですが、特に加賀友禅では、自然描写がとても生き生きとして写実的なのが特徴です。
加賀友禅の師匠は「とにかく写生をしろ」と弟子にいわれるとか。日々の努力の積み重ねが、加賀友禅の美しい自然描写につながるのですね!
「加賀友禅といえば」の特徴として、そのほかに「虫食い」と「外ぼかし」があります。
「虫食い」とは、写実的な描写を重んじる加賀友禅ならではの手法です。草花の葉が虫に食われた様子を表現します。必ず加賀友禅の作品に入っているわけではありませんが、「虫食い」を入れることで、柄のアクセントとしての味わいが感じられます。
「外ぼかし」とは、柄の外側から内側へ向かって色をぼかし、グラデーションをつける手法です。「外ぼかし」をすることで、絵に奥行きや立体感が生まれます。
また「三色ぼかし」という、三色のぼかしを使い分けて染める技法もあります。「三色ぼかし」で、よりリアルに紅葉や枯れなどを表すことができます。
ただ均一に染めるのではなく、「ぼかし」や「虫食い」の技法を入れることで、より写実的・絵画的になりますね!
加賀友禅ならではの特徴を見てきましたが、現代の着物作家はさまざまな技術や様式を駆使して柄を描くので、簡単に見分けがつかないこともあります。
ただ加賀友禅の場合、間違いなく見分ける方法が一つあります。それが、加賀友禅作家の証明である「落款」です。
「落款」とは、加賀友禅の作家が自らの名前をそれぞれ独自にデザインした印で、着物の下前の部分に入っています。「落款」を加賀染振興協会に登録することを許されて初めて、加賀友禅作家を名乗ることができるのです。
落款制度とは:
加賀友禅作家と称されるには、加賀染振興協会に「落款登録」されなければならない。まず弟子を抱えて工房を持つ師匠の元で、7 年以上の修行を積む。その上で、加賀染振興協会の会員2名(師匠ともう一人の会員)の推薦を得て、協会の会員資格を獲得し「落款」を登録することができる。
加賀友禅作家の「落款」かどうかは、加賀染振興協会HPの「落款検索」で調べることができます。
「落款」は加賀友禅作家の誇りで、クオリティの高い本物の加賀友禅であることを証明するものなのですね!
では、「京友禅」と「加賀友禅」の違いって、何でしょう?
加賀友禅は武家文化の元に生まれたため、落ち着いた色合いで写実的な表現が特徴です。一方京友禅は公家文化の中で生まれ、図案化された模様や染め後の加工で華やかさを演出する、という特徴があります。それぞれの違いについて紹介します。
技法 〜外ぼかしと内ぼかし〜
加賀友禅は外ぼかし:外側の輪郭から内側にいくほどぼかす技法。
京友禅は内ぼかし:模様の内側から輪郭に向かってぼかす技法。
画風〜写実的かデザイン的〜
加賀友禅は草花を中心とした写実的な柄が特徴。
京友禅はデザイン的で図案調な柄が特徴。
装飾
加賀友禅は虫食いやぼかしなど染めの表現でアクセントをつけ、全体的に落ち着きある雰囲気。
京友禅は刺繍や箔押しを施すことで、華やかできらびやかな雰囲気。
作業〜ひとりか分業〜
加賀友禅は基本的にひとりの作家が全ての工程または複数の工程を行う。
京友禅は分業体制。それぞれの工程を専門の職人が担当する。
加賀友禅について、もっと知りたくなりましたか?それでしたら、金沢の加賀友禅会館に行かれるのがおすすめです!
加賀友禅会館とは:
加賀染振興協会が運営する加賀友禅の文化施設。加賀友禅の歴史や技法が学べるほか、試着や手作り体験、小物販売もある。加賀友禅の全体像を知ることができ、実際に肌で体感できるのも魅力になっている。
加賀友禅の魅力がわかったところで、「手に入れたい、でも着物だとちょっと敷居が高い」と思われる方も多いのではないでしょうか?でも、もっと気軽に加賀友禅を楽しめる、素敵な小物もあるんです!
金沢の郊外にお住まいの加賀友禅作家・牧野顕三(まきのけんぞう)さんは、「染の四季」シリーズで、加賀友禅の魅力がいっぱいつまった小物を作成されています。
ここからは牧野さんに、加賀友禅で小物をつくり始めたきっかけや、小物ならではの魅力、また制作へのこだわりなど、詳しくお話を伺っていきます。
「染の四季」ではどのような作品があるのでしょうか?
パネルや額絵、タペストリーや扇子などを制作をしています。
なぜ、加賀友禅で小物をつくろうと思われたのですか?
普段は着物の制作が主なのですが、着物を着ていただく機会は少なくなっていますので、小物を通して加賀友禅を気軽に味わってもらえたら、と思いました。
加賀友禅を特別な日にはもちろん、日常生活で気軽に楽しむことができるのは嬉しいですね!
装って楽しむ加賀友禅だけではなく、加賀友禅の小物で、身近な暮らしの中に安らぎをもたらすことができたら、と思っています。
「染の四季」では、作品を通して四季の移ろいを身近に味わえますね。なぜこのようなテーマを表現されるようになったのでしょうか。
私は今、金沢から一時間ほどの山のふもとに住んでいます。自然豊かなこの地で、ツクシなどの草花、小鳥や蝶など小さな生き物たちの姿を目にするうち、自然にある四季のさり気ない移り変わりがおもしろいなと思い、加賀友禅で表現するようになりました。
加賀友禅で四季の移ろいを味わえるなんて、贅沢ですね!
「染の四季」の作品により、自然のささやかな仕草をお伝えし、四季の移ろいを感じていただくことができたら幸いです。
牧野さんは小物作成の際、図案から仕上げまで、おひとりですべての工程を行われています。その制作工程でのこだわりを伺いました。
特にこだわっているのは、「糊置き」という工程ですね。
「糊置き」とは:
友禅染の特徴で、下絵の輪郭に沿って糊を置いていく作業のこと。 置かれた糊が防波堤のような役割をするので、彩色時の染料が柄の外に滲むのを止めます。
加賀友禅の糊置きで使う、糊の材料を教えてください!
主な材料はもち米の粉です。あとは作家によって独自の配合もありますので、少しずつ材料も異なってきます。私の場合はほかに、塩、ぬか、石灰、群青という鉱物を配合しています。
もち米の粉ですか!何だか伸びが良さそうですね!
つくり方も餅のようなんですよ。粉からこねて、蒸してから餅つきのようについて残りの材料と配合させていきます。
友禅の場合は、糊置きにいつも「もち糊」が使われるのですか?
そういうわけではありません。「もち糊」を使って糊置きするのは、加賀友禅の特徴です。加賀友禅の糊置きは線の太さもさまざまですし、かすんだり滲んだりします。このもち糊が作り出す柔らかい味わい、手で作り出している独自の風合いが、加賀友禅ならではの魅力と思います。
ここで加賀友禅の工程を一通り紹介します。
(1)図案:草花を中心とした写実的なデザインが多い。
(2)下絵:図案の上に生地を置き、下から照明を当てて模様を描いていく。このとき「青花」という露草の花の汁で写していく。
(3)糊置き:下絵の線に沿って、筒に入れた「もち糊」を絞り出しながら糊を引く。
(4)地入れ:呉汁(すり潰した大豆を漉した汁)を生地の裏からひいて、裏から火で炙り糊を浸透させる。
(5)彩色:工程の中心となる作業、筆や刷毛を使い色を挿していく。
(6)柄蒸し:彩色したものを定着させるため
(7)中埋め:「糊伏せ」ともいわれ、地染めするための準備工程。模様の部分に地色が入らないよう、糊で模様全体を埋める。
(8)地染め:「引き染」ともいわれ、着物全体の地色を刷毛を使って染める。
(9)蒸し:地染めが乾いた後、生地を数十分蒸して染色を定着させる。
(10)水洗:糊や不要な染料を流水で洗い流す。以前は自然の川で行われた「友禅流し」は、金沢の風物詩となっていた。
(11)仕上げ:乾燥・湯のしという工程を経て、彩色の仕上げをし、加賀友禅が完成する。
とてもたくさんの工程があるのですね!
私はすべての工程を一人でやっています。全ての工程を覚えるのはかなりの時間がかかりました。
「糸目」とは:
「糊置き」の際に置いた糊を洗い流したときに現れる、白い輪郭線のこと。「糸目」のラインが模様全体の雰囲気を左右するため、「糊置き」には熟練の技が求められる。
糊を作る上で大切にされていることは何でしょうか。
加賀友禅の糸目はもち糊の為若干黄みを帯びるのが特徴なのですが、そうすると、どうしても古っぽく見えてしまうのですが、それを真っ白にし、かつ味わいのある線を描けるような糊を目指しています。
糊のつくり方次第で、「糸目」の味わいも変わってくるのでしょうか?
配合によって、黄ばみやかすれ具合は変わってきますね。糊はつくる人それぞれが研究されて配合をしています。
糊づくりの段階から、すごく工夫されているのですね。
もちろん引くときもかなりこだわっています。線に味わいを出そうとして、汚く引くわけにはいきません。綺麗に仕上げつつも、味わいを出すのが難しいですね。
糊置きを含めた全工程をひとりで行うのはやはり大変なのでしょうか?
ひとりでできる方がいいと私は思っています。自分がデザインしたものを下絵、糊置き、彩色と自らの手で行うことで、理想の形になりますし。
牧野さんが思い描いた形を、ぶれることなく、ご自身の手でつくり上げることができるんですね。
全部の工程ができるからこそ、小物作品も自らつくって発信することができていると思います。
あ
「加賀友禅」といっても、時代の流れや作家さんによって、技法の取り入れ方にも違いがあると思います。牧野さんは、加賀友禅の技法をすべて使われていますか?
「加賀五彩」と「ぼかし」は入れていますね。
そうなんですね!加賀五彩は色がはっきりとしているので、取り入れるのは難しいのではないですか?
そうですね。色合いも少し古くさいイメージがありますし、最近はやわらかい配色がトレンドですので取り入れない方もいらっしゃいます。でも、古風なところも加賀友禅の魅力だと思いますね。
確かに、古風であるからこそ、加賀友禅ならではの品格がかもし出されるように思います。その中でも、現代に合うような作品にするために工夫されていることはありますか?
作品の中に少し白を使うことで、抜け感を出したりします。また逆に明るい色合いのときは、軽くなりすぎないように、例えば柄が少ないものは強い色を使うなどして、常にバランスを取るようにしています。
すべて加賀五彩にするのではなく、色使いを少し変えていくことで、現代に合った加賀友禅を生み出されているのですね!
ちなみに、加賀友禅の技法として有名な「虫食い」の技法は使われますか?
私は必ず入れるようにしています。「虫食い」は作家によってそれぞれの表現が有り「虫食い」一つだけ取ってもも色々な個性を楽しむことができますよ。
牧野さんの作品では、現代に合わせた工夫がされつつも、加賀友禅ならではの魅力が伝わるように、伝統的な技法も取り入れられているんですね!
牧野さんが普段作業で使用する刷毛を見せていただきました。
加賀友禅の特徴でもある外ぼかしは、「片羽刷毛」を使って表現されます。
普通の刷毛は毛先がまっすぐに切りそろえられていますが、これは片方が高くなって、斜めに切りそろえられていますね!
「片羽刷毛」は加賀友禅の特徴でもあります。先に刷毛に水を含めておき刷毛の高くなっている方に染料を付けてぼかしてゆきます。
普通の刷毛とはどう違うのですか?
片羽を使うと、輪郭がくっきりするのが特徴です。その分輪郭を強調しすぎてしまうと、デザインが固くなってしまいますので、輪郭の濃さを意識しています。
本当に細かいところまで、加賀友禅の魅力が最大に発揮されるようにという、牧野さんの想いや努力がつまっているのですね!
ここからは作品から少し離れて、牧野さんと加賀友禅との出会いについて伺います。
工芸に興味を持たれるようになったのは、いつでしたか?
高校時代です。元々デザイン科でグラフィックの勉強をしていましたが、同じ学校に工芸科もあって、そちらを見ているうちに、次第に工芸に魅力を感じるようになりました。
どうして工芸に惹かれたのでしょう?
紙の上の鉛筆の図案より、手を使ってモノをつくる方が自分には向いていると思ったからです。工芸は自分でつくりたいものが実際に手に取れる形となっていく。それで工芸が良いと思うようになりました。
牧野さんのように、デザインから工芸の世界に入る方は珍しいのでしょうか?
工芸の人は意外とデザインから入ってきてる人は多いんですよ。デザインも工芸もクライアントの求めに寄り添うという点で共通しているところがあるのではないでしょうか。
その後、どのようにして工芸の世界に入って行かれたのですか?
学校にきた求人の中に、たまたま京友禅の図案制作のデザイナー募集がありました。テキスタイルの図案制作なら、平面ということでグラフィックに近いので、やってみようか、ということになりました。
卒業してすぐ工芸の世界に入って行かれたんですね!京都時代は、具体的にどういうことをされていたのでしょうか?
京友禅の図案を描いて、下絵を描くところや染め屋に持って行ってました。そのときも職人さんの姿をたくさん見て、手で何かをつくることへの思いが強くなっていったと思います。
京友禅は分業でつくられるので、それぞれの工程の専門の職人さんから、モノづくりへの強い思いが感じられそうですね!
でもなぜ、京友禅から加賀友禅の世界に入られたのでしょうか?
京都にいた頃はちょうど加賀友禅ブームで、加賀調の作品の図案を描くことがありました。その際に資料で調べていくうちに、少しずつ加賀友禅に興味が出てきました。
同じ友禅とはいえ、京友禅と加賀友禅はデザインや技法なども異なり、雰囲気も違いますね。
勉強した際に加賀友禅作家の作品集も見ていて、その中でも由水十久先生の作品に惹かれました。先生の作品は童子を着物の柄に取り入れた個性ある表現と落ち着いた色調が個性的で由水先生から加賀友禅を学びたいとと思いました。その後手紙を出して、由水十久氏の元に弟子として入門することが叶いました。
直接お手紙を出されたのですね!そして、そこから牧野さんの加賀友禅作家への歩みがスタートしたのですね。
加賀友禅の世界に入って40年以上経ちますが、学生時代のデザインの勉強、京友禅の図案制作と共に由水先生から受けた作家としての心構えが今の私の創作のベースになっていると思います。
加賀友禅の小物は、いつから始められたのですか?
もう20年以上になります。基本的に95%は着物制作ですので、小物は仕事が空いたときに、趣味のように少しずつ制作し始めました。
かなり前から小物もつくられていたのですね!着物と小物では、制作する上でどんな違いがありますか?
着物でも小物でも、お客様が何を求めているかを知ることが大切だと思います。
この考え方は、グラフィックデザインや京都時代の経験があったからこそだと思います。京友禅は、まずどのようなものが売れるか、どのような色が流行かを調べてからモノづくりを始めていきます。
図柄などを考える前に、まずそこから始まるのですね!
日常の暮らしの移り変わりにより着物に求められるものも変わって来ておりかつてのような礼装として用いる着物から和の文化に憧れのある若い世代の着物への関心は広がりを見せていると思います。
一方で、小物において大切にされていることは何でしょうか?
小物は飾ることが目的ですので、「インテリアとしてどういうものが求められているのか」を考えてつくっています。
着物にしても小物にしても、作品をつくられる前には、必ず使われる方の気持ちを考えていらっしゃるんですね!
しかしながら、小物作品の方がデザインに関しては自由度が高いです。「飾る」ということが目的ですので、表現がしやすくなるんですよ。
小物作品ではどのような柄を表現されているのでしょうか?
最初は、着物でも描いていた草花が主な柄でした。しかしそれだけではおもしろみがないと感じ、鳥や虫も描くようになりました。
「染の四季」の作品一つひとつに、自然の中の情景の一コマを切り取ったような、ストーリーが描かれているような気がします!
そうですね。草花と小動物の様子から、物語が生まれるんですよ。その方がお客様にも伝わりやすいのかな、と思いました。
小物で描かれている柄を着物で表現することは難しいのでしょうか?
昆虫や鳥などは人によっては嫌われる方もいらっしゃるので着物の場合はあまり入れないようにしています。
そのほかに、小物にしかない特徴はあるのでしょうか?
「金箔」を使っていることですね。金沢は金箔の産地でもあります。着物では入れませんが、小物ではアクセントとして入れています。金箔の輝きで一気に柄が引き立ちます。
金箔を入れることは難しいのでしょうか?
そうですね。布の風合いを損なわず、かつ剥がれないようにするのが難しいですね。金箔は、産地ではありますが、表現で使用する人はほぼいませんので、独学で勉強しました。
金箔を布に定着させることが大変なのですね!この金箔は、加賀友禅の扇子でも使われているんでしょうか?
そうですね。扇子でも金箔を入れています。
金箔があることでより上品に見えますね!
扇子は実用品としてはもちろん、インテリアとしても飾れますので、用途の幅が広く、いろいろな形で楽しんでもらえると思います。
パネルや額絵とはまた違った味わい方が、扇子にはありますよね!
加賀友禅の扇子は昨年からつくり始めました。きっかけは、小物作品を制作する中で、実物のイメージがなかなか伝わらないことがあったからです。
確かに、サイズが記載されていても、実際に手に取るまでイメージしにくいことがあるかもしれませんね。
その点、扇子ならば、どういうものか誰でもイメージできますし、用途も多く、お土産や海外のお客様向けにも使っていただけるかな、と思いました。
そうですね!扇子は海外のお客様にも人気がありそうですね!
最後に牧野さんに、加賀友禅をつくる上で一番大切にされていることを教えていただきました!
私がいつも心がけていることは、お客様に手仕事の「手の味わい」を感じていただく、ということです。
「手の味わい」、ですか!
はい。加賀友禅は「ぼかし」や「にじみ」といった、職人が「手でつくった」という味わいを感じられるところが良さだと思うんですね。つまり、「手の味わい」こそが、加賀友禅の生命線だと思っています。
現代はモノが溢れていますが、手の味わいが感じられるからこそ、愛着が湧きますし評価されていくのかな、と思います!
私の作品を通して、友禅の手仕事の魅力を皆様にお伝えできたら幸いです。
そのほかに、モノづくりで大切にされていることはありますか?
作家は作品を実際につくる前の、テーマやモチーフ選びの段階から、「いかにお客様の心に伝わるか、琴線にふれることができるか」を考えています。
形をつくるだけでなくハートが伝わるよう、作品の中の詩情が伝わるよう、これからも想いをこめて、モノづくりをしていきたいと思っています。
改めて、つくり手としての牧野さんの想いを伺うと、作品の見方がまた変わります!
身近に飾っておける「染の四季」で、加賀友禅の良さを日常で感じていただけたら嬉しいです。
松・竹・梅が表現されたこの扇子は、上品かつ華やかな雰囲気で、お正月にふさわしい作品となっています。扇子として使うのはもちろん、インテリアとしても楽しめます。このシリーズでは、春夏秋冬それぞれの趣ある自然の情景を描いた、4種類の扇子があります。
染の四季
【加賀友禅】 扇子 男女兼用 松竹梅
気軽に加賀友禅を楽しむことができる、「染の四季」の小物シリーズ。日本の美しい自然や四季の移ろいの中で繰り広げられる様々なストーリー、そして加賀友禅の魅力である、手で作り出す独自の味わいを感じてみてください!
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