産地組合に聞いた!伝統工芸の情報発信の必要性

Journal編集長
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今回は、江東区亀戸にある江戸切子ショールームで江戸切子協同組合さんに取材をしたいと思います。

参考

江戸切子ショールーム
JR亀戸駅・東武亀戸駅北口から徒歩10分のところにあり、江東区亀戸の道の駅的な地域発信施設「亀戸梅屋敷」内に併設されている江戸切子のショールーム。
職人がつくる江戸切子商品を直接触って確認し、購入もすることができる。また技巧が凝らされた江戸切子作品のギャラリー展示なども行っている。

亀戸梅屋敷

江戸切子協同組合とは

江戸切子協同組合とは

Journal編集長
Journal編集長

今日は、よろしくお願いします!まず、江戸切子協同組合について教えてください。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合広報

こちらこそ、よろしくお願いします。江戸切子協同組合は、東京周辺のカットグラス(切子)を始めとするガラス加工の事業者の集まりです。

どのようにして「江戸切子」は有名産地ブランドになったか

美しい江戸切子

Journal編集長
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江戸切子だけではなく、ガラス加工の事業者の方の集まりなのですね。「江戸切子」というと日本国内のみならず、海外でも人気のある日本の伝統工芸品ですが、どのようにしてここまで知名度が上がったのですか

参考

BECOSが実施した伝統工芸に関する認知度・好感度アンケートによると江戸切子は「知名度3位」「好感度1位」の日本で最も好まれている伝統工芸品。

工芸品人気ランキング

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

江戸切子の歴史は200年弱です。他の歴史ある工芸品と比べてとくに知名度があるという認識はほとんどありませんでした
ガラスという存在は近代とともに大きく発展してきた部分があり、食器ととしても西欧のカットグラスへの憧れや戦後の生活の洋風化と共に、日本のカットグラス(切子)も発展し、東京が最大の産地だったということもあり、ここ最近少しずつ認知が広まってきていると考えています。

Journal編集長
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そうなのですね。以前は、それほど認知されていなかったのですね。生活環境が洋風化したことも大きかったと思いますが、産地組合として行ってきた認知拡大の取り組みなどもあるのでしょうか。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

組合としては戦後、同業者組合として東京カットグラス工業協同組合として設立されたのが始まりです。
1970~80年代の国や自治体での伝統工芸振興の流れにあって、組合として東京のカットグラスを「江戸切子」として認定されるための活動を行ってきました。1985年には東京都伝統工芸品、2002年には国の伝統的工芸品の指定を受けることができました。
東京都伝統工芸品の指定とその伝統工芸士の誕生を受けてからは、年に一度「新作展」という職人の創作作品のコンテスト始め、技術の研鑽と広報による振興を意図して現在に至っています。

Journal編集長
Journal編集長

認定を受けることで、認知が広まってきたのですね。その他には、認知拡大のためにされていることはありますか?

江戸切子の認知を拡大するために取り組んでいること

江戸切子の日の制定・親善大使

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

伝統的工芸品の認定を受けつつも、未だに一般の方には「江戸切子を知らない」という事を実感で感じていた若手理事の発案により、生まれたのが江戸切子の日です。
江戸切子を使っていただくために、まずは日本のガラス文化を知っていただこう、記念日を作って認知を広げようというものです。
組合の発足日や伝統工芸の指定日など幾つかの中から、伝統的な「魚子」(ななこ)という細かい柄にちなんだ語呂合わせの7月5日が、組合員の投票によって選ばれました。

Journal編集長
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7月5日というのは、江戸切子の伝統柄だったのですね!面白いです。他には、どういった認知拡大の取り組みをされてきたのですか?

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

江戸切子の日を記念して、THE ALFEE 坂崎幸之助氏に親善大使になっていただきました。江戸切子の産地でもある地元墨田区ご出身で、戦前の和ガラスの収集家としても知られ、著書「和ガラスに抱かれて―坂崎幸之助のガラス・コレクション」も上梓されているので、適任だと考えました。差し出がましくもお願いのお手紙をしたためました。ダメ元でご依頼したのですが、快くお引き受けいただきました。望外の事で、その後のご縁となったところです。

江戸切子の解説リーフレットより引用

Journal編集長
Journal編集長

坂崎さんが墨田区ご出身で、戦前の和ガラスの収集家というのは、すごい偶然ですね!江戸切子の親善大使をしていただくには、本当にピッタリの人選ですね!

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

はい!まさか、引き受けてくださるとは思っていなかったので、本当に坂崎さんには感謝してもしきれないですね。

Journal編集長
Journal編集長

他には、どのような活動をされているのですか?最近だとアニメとのコラボもよく目にしますよね。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

アニメ・ゲームを始めとしたコンテンツとの江戸切子のお仕事は、近年みられるようになりました。組合でも、コラボを幾つかさせていただいています。特に、大きく話題にしていただいたケースは、2015年夏の大人気アイドルゲームのアニメーション放送を受けてのコラボレーション制作です。
コンテンツで江戸切子をグッズとして企画される事例はそれ以前もございましたが、作品の文脈に寄り添って、またストーリーを受けてコラボとして展開される事例となったのは、このアニメが初だったのでは?と考えています。

Journal編集長
Journal編集長

確かに、最近では伝統工芸品をテーマの一部に取り入れたアニメも増えてきましたが、2015年ごろは、ほとんどなかったですね。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

この人気アニメは、作品中で江戸切子が題材の1つとして偶然使われていたご縁からです。人気作品であった同作の話題拡散をSNSを通じて知り、SNSで反応した事などもあってその反響とコミュニケーションから芽吹き、正式にコラボとして動く形となったものです。作中、江戸切子が登場したのが、柴又であったことなどは、東京スカイツリー(R)の開業を始めとして東京の東部・下町への注目が背景にあったのでは?とも考えています。

Journal編集長
Journal編集長

なるほど!SNSで反応したことが、ひとつのきっかけだったのですね!そのあたりについて、少し詳しく教えてください。

SNSでの情報発信の必要性と効果とは

Journal編集長
Journal編集長

アニメの件もそうですが、江戸切子協同組合さんはSNSでの情報発信に力を入れているように見えるのですが、そのあたりはどのようにお考えなのでしょうか。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

我々も試行錯誤をしている段階です。スタッフも広報部の組合員数名と組合事務所の連携で行っている所で、安定的なシステムとしてまた必要性と活用実績について誇れる、また大きく訴えられるような事はまだまだ…と考えております。
その上で、日々職人たちが作り上げている品を、知ってほしい・使ってほしいと考えたとき、有効な手段の一つとして工夫できるツールなのでは、と考え始めたところです。

Journal編集長
Journal編集長

なるほど。とても重要な考え方ですね。せっかく使えるツールがあるのに、何もしないのは本当にもったいないですからね。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

全国各地の伝統工芸でも、イベントと動画発信の連携を始めとして、ブランディングや知財管理を含めたネット活用を行われている先駆的な産地・工房は各地で拝見しております。インターネットの発達が進んだ現在、ネットに載っていないもの、より具体的にはGoogleやInstagramで検索して表示されないものが認知されにくい現象が生まれていると感じてます。SNS発信は、それへの今できるせめての対応(抵抗)なのかもしれません。

Journal編集長
Journal編集長

そうですね。本当に良いものでも、誰も知らない商品が売れるということはありませんからね。まずは、知ってもらうために、SNSなどの使えるツールを活用していくという考えは素晴らしいですね!

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

江戸切子については、百貨店さま始めショップさまが売り場で工夫されている企画や、行政・地域がメディアを通した取材などによるご紹介等々、色々な工夫・ご提案の発信を頂いています。職人たちのそれぞれの発信は勿論の事、その他のイベントや企画情報についてもキャッチアップし、SNSで共有することで、江戸切子を知っていただく事につながればと考えています。

Journal編集長
Journal編集長

江戸切子協同組合のTwitterアカウントなどを拝見すると、必ず情報をキャッチアップしてリツイートなどされていますね!そういった積み重ねが、少しずつ知名度や好感度を上げていっているのですね!

江戸切子のブランドを守るために取り組むこと

販売されている切子

Journal編集長
Journal編集長

SNSでの情報発信以外では、江戸切子のブランドを守り育てていくためにどのような取り組みをされていますか?

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

先にも触れましたように、年に一度の「新作展」は、職人の技量を商品の加工技術のみならず、作品表現としても広げてその発表の場を設けることで、技量の研鑽と人材の育成を行い、同時に江戸切子の認知度を上げるという目的で行っています。
技術自体の振興と共に、大手飲料メーカーや洋菓子のパッケージに協力する等、ガラス製品ではない形で江戸切子の意匠・デザイン活用する試みにも協力しています。

Journal編集長
Journal編集長

最近テレビCMでも見かけるような企画ですね!こういった企画の窓口になるというのも、組合の役割ですね!個人の職人だとなかなか対応できなかったりする場合が多いので、依頼する広告代理店側もしっかりとした窓口があるのはありがたいですよね。ブランドを育てることと同じくらい「守る」ことも重要だと思いますが、そのあたりはどのようにお考えですか?

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

江戸切子の日の設定や、コラボなどの試みを行う前提として、知的財産としての江戸切子の認知・認識を図ってきたというのがあります。90年代からの地域ブランドの動きにあって導入された「地域団体商標」制度を利用して、「江戸切子」を商標登録しました。それにより、偽装品対策などが工夫できるようになりました。
「江戸切子」という製品へのこだわりと同時に、デザインやコンテンツなどが分野が違っても同じつくり手の皆さんへの畏敬を持ちつつ、異業種・分野を超えたとの協力を行い新しい可能性を広げていくことの大切さを認識しております。

Journal編集長
Journal編集長

最近、大手通販サイトなどで激安の江戸切子と謳われた商品を目にするようになりましたね。こういった、本来の江戸切子の定義と外れる商品が増えてしまうと、つくり手も正当な報酬が得られずに、減っていってしまいますよね。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

そうですね。外国産品等を江戸切子として販売されるケースには、侵害の通報を始め対応しています。守るということ、それは続いていくということで、守旧ではなく絶えず今現在との対話・工夫が必要であろうと思います。

これからの江戸切子協同組合の活動

販売切子

Journal編集長
Journal編集長

最後に、これからの組合の活動について教えてください。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

現在組合員は長年にわたり減少の傾向にあります。これには戦後弟子入りをし高度成長期に独立していった工房が、下請け加工していたメーカーの洋食器向けグラスのマシンメイド化、またバブル崩壊・リーマンショック以後の撤退を始めとした経済上の理由や、高齢化もあって徐々に廃業している背景があります。

Journal編集長
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厳しい状況なのですね。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

2年に一度ずつ各組合員に従業員の人数等をアンケート調査で伺っていますが、減少傾向の中で、この10年ほどは全体の職人の人数は下げ止まりを見せつつあります。これは若手の採用と育成を図る工房が現れている為です。

Journal編集長
Journal編集長

若手の採用と育成ができるだけの仕組みや、組織があるというのは素晴らしいことですね。

江戸切子協同組合
江戸切子協同組合

ただコロナ禍で、江戸切子を使って頂いた飲食店や百貨店等の販路にも大きな影響が出ています。パーティーや結婚式等のお引き出物という需要も同様です。我々にできることは、切子(カットグラス)を始めとする硝子加工の職人の集まりとして、引き続き地道にその魅力や特徴をお伝えしていくと共に、育成が進む若手からベテラン職人の経験まで、挑戦の場を求めて試行錯誤をし続ける事ではないかと考えています。

Journal編集長
Journal編集長

若手からベテランの方まで、職人一人ひとりの活動も重要ですが「職人の集まり」として地道な活動をしていくことが大切なのですね。

編集後記

伝統工芸品は、職人一人ひとりが作り上げる作品という側面もありますが、工芸を守り育てていくためには、職人同士が力を合わせて、地道な取り組みをすることもとても重要なのだと教えていただきました。

一人ひとりの職人が頑張って情報発信をしているというのは、よく目にするようになりましたが、さらにその発信を共有したり、拡散したりといった場が非常に少ないと私自身が常日頃感じています。

地場の組合や、産地問屋、通販事業者など多くのものづくりの職人とつながりのある企業や団体は、協力しこういった情報を共有することが求められているのかもしれません。