本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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“MOON” ビールを注ぐと浮かび上がる満月、飲み進めていくうちに月が欠けていく。月の満ち欠けを切子で表現した漆黒の江戸切子を知っていますか?
江戸切子といえば、赤や青といった温かみを感じる伝統的な色合いが多いですよね。
私の実家にもきれいな青の江戸切子のグラスがあり、父親はウィスキーや日本酒を楽しんでいました。伝統的でカラフルな色合いのも大変魅力があります。
しかし今回は、江戸切子は青と赤!という業界の常識を飛び出し、”現代のライフスタイルにマッチする新しいカタチ”を追及して挑戦し続けている硝子プロデューサーの木本硝子さんをご紹介します。
「木本硝子株式会社」は昭和6年(1931年)に浅草でガラス食器問屋として創業し、ガラス食器の世界を長年見続けてきた会社です。
新御徒町駅から徒歩3分の場所に倉庫を改装したショールームを設けています。元倉庫とは思えないおしゃれなショールームです。
江戸時代、大名屋敷の周辺に広がっていた職人たちの街。東京の御徒町から蔵前、浅草橋にかけての2km四方一帯は、「徒蔵(かちくら)」エリアと呼ばれており、現在でも東京のものづくりの拠点になっています。
今回は、硝子業界に長年携わり、さまざまな荒波を乗り越えて漆黒の江戸切子を開発した、木本硝子の三代目代表取締役の木本誠一さんにお話をうかがいます。
木本社長、今日は宜しくお願いします!
宜しくお願いします。何でも聞いてください。
『木本硝子』は、上野松坂屋の専門問屋として創業以来、90年間にわたって硝子食器一筋で事業を営んできました。
現在は長年の経験を活かし、職人やデザイナーとタッグを組み、今回お話を伺った「漆黒」の江戸切子のような新たな付加価値を持った商品を生み出し、世界中へ発信しています。
現在会社を引っ張る三代目の木本誠一さんは大学卒業後、当時12万人もの社員が世界中で働く三菱電機に幹部候補生として入社。主にマーケティングの手法を学びました。その後「大企業の歯車ではなく、自分の意思で経営を行いたい」という考えに至り、家業を継ぐことを決意します。
当時の日本は、小売りの場所が百貨店一強の時代から大型スーパーや郊外型の商業施設へ大転換が行われている真っ最中。木本社長は三菱電機で身につけたマーケティング力と営業力で、世界中の硝子工場を回って商品を一括仕入れし小売店へ卸す、という創業以来続けてきた問屋業として会社の業績をぐいぐいと伸ばしていきます。
しかし順調に見えたのも束の間、デフレ時代の到来が大きな方向転換のきっかけになったといいます。
それは、創業以来行ってきた問屋としての中継ぎという立場から、自ら新しい製品を作り発信するプロデューサーへの大転換です。
その決意の裏側にはどのような経緯があったのか。
どのように世の中にはない新しい商品のコンセプトを固めていったのか。
漆黒の江戸切子の開発に隠された秘密とは?
今回は木本社長に直接、聞いていきます!
新商品を生み出していくのは苦労も多いと思います。どのような考え方で進めていったのですか?
現代のライフスタイルにマッチするデザインを生み出すには”デザイナー”の力を借りれば良い。ものづくりは”職人”と一緒に行えばよい。デザイナーと職人の力に、私のマーケティング力を組み合わせてものづくりができれば、「これまでにないおもしろいものづくり」ができると思いました。
職人、デザイナー、木本硝子がワンチームで共にものづくりを行う。
それぞれが得意分野を活かしながら、木本社長が目指した新しいライフスタイルに見合う漆黒の江戸切子は生み出されました。
『木本硝子』の「漆黒」の江戸切子は、mooonシリーズだけではなく、伝統的な市松模様を取り入れた商品や、スタイリッシュさが際立つストライプのデザインの商品など、様々なカタチを提案していますね。
江戸切子という伝統を守りつつ、新たな挑戦を行い世の中にないものを生み出していくということを常に考えています。
そのお考えこそが、今までになかった「黒」の江戸切子を生み出したのですね。木本硝子さんには元々新しいことに挑戦しよう!という社風があったのですか?
そうですね。先代、先々代から大切にしてきた「経営者として自ら計画し考え、行動に移す。それを自らジャッジし、改善を重ねてもう一度実行に移す、という自分主体の経営を行う。」という理念があり、その考えに沿って挑戦を続けています。
経営者として、常に挑戦を続ける姿勢には大変刺激を受けています。
一番大切なことは「自ら楽しんで事業を行うこと」。世の中にないものを生み出し、現代のライフスタイルにマッチする江戸切子を作る上で、一番重要なことだと考えています。
月の満ち欠けを表現した“MOON”シリーズ、直線をモチーフにした斬新でモダンな“KUROCO”シリーズ、漆黒とつや消しの透明だけで構成され、都会的でモダンな印象の“QUIET NIGHT”シリーズ。
これまでの江戸切子市場にはなかった「黒」の江戸切子がとても魅力的です。
漆黒と硝子の透明感。この二色で構成されたデザインほどシンプルで分かりやすいものありません。
どこまでも深い「黒」と透き通る「透明」が、ひと目見ただけで脳裏に焼き付きますね!
デザイナーが苦心の末に生み出した「黒」と「透明」のバランスが、『木本硝子』の洗練された江戸切子の最大の魅力です。
伝統的な赤と青の江戸切子に加えて「黒」の江戸切子を作ろうと思ったきっかけは、リーマンショックによるデフレの到来でした。
デフレが到来し、経営戦略の方向転換を迫られた木本社長は、競合他社との安売り競争から抜け出すため、高付加価値商品の販売を目指して Made in Tokyo の江戸切子に目を付けます。しかし、狙い通りに販売が伸びません。
そのような時、あるお客様から「良いものだとは思うけど、欲しいとは思わない!」という衝撃的な一言を受けます。
「どうすれば売れるだろうか」と考えていましたが、その一言で、そもそも江戸切子のデザインが、現在のライフスタイルに合っていないのではないか、と気づかされました。
お客様からの素直な一言が変革のきっかけになったのですね!
そこで木本社長は、創業以来行ってきた”問屋としての中継ぎ”という事業からの脱却を目指し、”自ら新しい製品を作り発信する「プロデューサー」への進化”をスタートさせます。
「自分の力でこれまでにない江戸切子を作る」。その想いをデザイナーに伝えたとき、提案されたものが黒とシンプルモダン。
現代の生活、ライフスタイルの中で取り入れることができる、現代の特別なひとときを彩ることができる江戸切子を作りたいという木本社長とデザイナーの思いから、「漆黒」の江戸切子の誕生物語は始まりました。
「漆黒」の江戸切子の開発には約2年を要しました。「黒」という色で江戸切子を作るのは前例がなく、職人にとって非常に大変な仕事になりました。
まず黒という色を出すためには、大変な根気と熱意が必要でした。硝子職人の工房で、黒ができるまで何度も何度も試行錯誤を繰り返しました。
硝子は、1500度という高温状態での作業を行い、上手くいかなければ一からやり直し。
一回の制作でも職人にかかる負担は計り知れません。
木本社長はプロデューサーという立場で、職人さんのやる気をサポートすることに全力を尽くしました。
木本社長の持つ「漆黒」の江戸切子の開発にかける熱意と情熱が、職人達を動かしていきました。
通常、江戸切子の模様を生み出す際には、色のついたグラスを内側から覗き込みながら、繊細な職人技で削り出していきます。「黒」は、削り出しにおいても大変難しい課題を職人達に課すことになりました。
それは、「硝子を削る際、黒色のせいで手元が見えない」ということです。
内側から覗き込もうとしますが、黒色によって光は遮られ、手元を見ることができない。これには熟練の江戸切子の職人も苦戦を強いられます。
職人泣かせともいわれる「黒」。その理由は色を作る難しさ、そして削る際の難しさにあるのですね。
このような様々な課題を乗り越え、「漆黒」の江戸切子を作り出すことができたのは、木本社長の江戸切子にかける熱意。そしてそれに応えることのできた高い技術力と熱意を持った職人達がいたからこそ、と言うことができるでしょう。
『木本硝子』の特徴として、多彩な職人達とのネットワーク・信頼関係が挙げられます。
木本社長がプロデューサーという立場で「職人とデザイナーと3者でワンチームになり製品を作っていく」。だからこそ、漆黒の江戸切子は完成にたどり着きました。
漆黒の江戸切子を作っている職人さんは、どのような方々なのですか?
みんな、お茶目でチャレンジャーな職人ですよ!伝統を引き継ぐだけではなく、技術を活かして新しい挑戦をしていきたい、と考えている人ばかりです。
職人さんというと保守的な方も多いと思いますが、全く新しいことに楽しんで挑戦するというのは素晴らしいですね!
その挑戦に対する柔軟さが、職人泣かせと言われる「黒」の江戸切子を完成に導きました。
『木本硝子』は、近年、日本国内の硝子業界が低迷するなかにおいて、「日本人の心が宿る江戸切子を、これ以上衰退させてはいけない」という熱い想いと、伝統を進化させていくことに対する貪欲さを持ちながら、ワンチームで挑戦する仲間とともに事業に取り組んでいます。
「黒」の江戸切子の次に挑戦したいと考えていることはありますか?
ワインを飲む際には、料理やワインの種類に合わせてグラスを変えますよね。しかし、日本酒はどのような料理が出てこようが同じお酒を同じ猪口で飲む。これを変えていきたいと思っています。
ということは、新たな挑戦は「日本酒のグラス」ということですね。
そうです。料理とのコンビネーションによってワインを選ぶ、そのワインの魅力を引き出すワイングラスを選ぶ。日本酒を飲む際にも、料理の魅力を最大限に引き出す日本酒を選び、その日本酒の味や香りを最大限引き出すグラスを選ぶ。そのような全く江戸切子を作っています。
日本酒をおしゃれでクールに飲めるグラスをデザインをすることで、若者や外国人にも受け入れやすいスタイリッシュさを追求しています。
日本酒に合わせてグラスを変えるという新しい発想は、当初6種類からスタートし、現在は130種類にも及んでいます。
とどまることを知らない木本社長の挑戦は、江戸切子そして硝子業界全体を守り発展させていくんだという強い思いを感じさせます。
木本硝子の三代目代表取締役、木本誠一さんに会社の歴史、漆黒の江戸切子の開発・製作時の秘話、その魅力などについて伺いました。
今回のインタビューを通じて、漆黒の江戸切子の魅力の裏にある想いや熱意、そして江戸切子に携わる者として伝統を守りつつ、新しいことに挑戦をする気概をひしひしと感じました。
熱い想いを持って生み出された「漆黒」の江戸切子は、より一層の輝きで現代の私たちの生活を上質に彩ってくれるでしょう。
シンプルモダンを追求した「漆黒」の江戸切子。是非、あなたも手に入れてみてはいかがでしょうか?木本硝子によって結集された職人技をお楽しみください!
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