本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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「京唐紙」を知っていますか?桂離宮や寺院など、歴史ある建物で襖紙に使われるもので、版木に彫られた文様を一枚一枚手で摺り上げる、美しい紙のことです!今では洒落たインテリアとして、襖のほかに壁紙や照明、アートパネルなどでも人気があるんですよ!
今回は、京唐紙をつくられている「株式会社丸二」代表の西村和紀さんに、京唐紙の魅力やその美しさの秘密、また、伝統ある京唐紙を現代の暮らしの中で楽しむ方法を教えていただきました。
まず最初に、京唐紙の歴史についてご紹介したいと思います。
唐紙とは、1300年ほど前の中国が唐の時代、遣唐使により日本にもたらされたものをいいます。
やがて遣唐使が廃止されたため、日本国内で唐紙がつくられるようになりました。
京都の北野天満宮の横を流れる紙屋川のほとりに、初めての国営の製紙場がつくられたんですよ。
その製紙場は「紙屋院(かみやいん)」と呼ばれ、紙屋院で漉かれた上質な唐紙「紙屋紙」は、朝廷で貴族にもてはやされ、詩や和歌を書き、写経をするための紙として使われました。
「紙屋紙」は、源氏物語にも登場するそうです!
やがて、唐紙に文様を入れたものが出始め、これが後に障子や襖絵として使われる、京唐紙の原型となります。
唐紙の文様にはとても多くの種類があります!
唐紙は襖や障子などに使われるため、内装の大きな部分を占め、部屋の雰囲気を大きく左右します。そのため、どの文様が好まれるかは、使われる部屋の役割、使う人の生活感覚や社会的地位などによって変わってきました。
「京唐紙」は、正統的・伝統的な文様が多いですね。
最初の頃の文様は、中国から伝来のものに平安の貴族文化の優雅さが加わった、洗練された印象のもので、「有職文様」ともいわれます。
「有職模様」は、貴族の装束や調度などに用いられました。おめでたい意味を表す「吉祥文様」など、京唐紙は「有職文様」の伝統的な流れを汲むものが多くなっています。
ちなみに寺社などの調度としては、広い空間に映える大柄の文様や、雲を表した文様がよく用いられたそうです。
文様には時代の好みがよく反映されています。
たとえば武士の時代には硬さがあり、地位や権威を象徴するデザインなどが好まれたそうです。
江戸時代になり、庶民の文化が発達する中でできた、町家好みの唐紙では、自由で開放的なデザインが多くなります。
植物の文様も多いですね。
はい。茶道の世界では、「わび」という日本独自の美の感覚が追求され、植物文様、特に桐文様が好まれました。江戸時代の庶民は、この茶方好みの影響も受けたようです。
グラフィックアートのように、おしゃれなデザインもありますね!
江戸時代の文様は「琳派芸術」の影響を受けています。これは、本阿弥光悦、尾形光琳や、俵屋宗達らが作った流派で、「デザイン」の表現の可能性を追及したのですね。
文様から時代の空気が伺えて、おもしろいですね!
長い伝統を持つ「京唐紙」では、今でも昔ながらの素材や工具にこだわって製造が続けられています。
版木は何枚ほどあるのですか?
300枚以上あります。そのうち、状態が良く使えるものが150枚ほどです。
代々使っているものなのですか?
一番古い版木は180年ほど前のもので、天保8年のものです。
そんな古いんですか!
2~3年前まで現役で使っていました。次に古いのが、天保10年や12年のものでしょうか。ほとんどの版木は、100年以上は使っているものなんです。
すごいですね!でも、使ってるいうちに、傷んできませんか?
はい、ですので年に数枚ずつ、昔からある版木を復刻して、新たに彫り上げています。
「京唐紙」の版木には、朴の木(ほうのき)が用いられます。
「京唐紙」は、摺り上げるときに道具ではなく、手のひらでこすって摺るので、文様を深く彫る必要があり、そのために柔らかく木目が少ない朴の木が、唐紙の版木として適しているそうです。
朴の木
モクレン科の落葉樹。樹高30メートルになるものもある。葉・実・花も大きく、葉は「ホオバ」と呼ばれ、殺菌作用があり香りも良いので、朴葉寿司や朴葉味噌など、食べ物を包むのに使われる。
木材としては、軽く柔らかで加工しやすい。まな板、包丁の柄、将棋の駒、ピアノの鍵盤、版木、下駄などに加工される。
普通の版画には、桜やいちょうなどの堅い木が好まれますが、あちらは彫りが1~2ミリと浅いからなんです。
ほかに、朴の木が良い理由がありますか?
摺り上げるたびに、版木も洗ったり乾かしたりするのですが、長年使用しても曲がったり、腐りにくいというのもいいところですね。
そんな長い年月現役ということは、保存にも気を遣われるのでしょうね。
版木には乾燥が大敵なので、加湿器で湿度を一定に保つようにしています。また、版木と版木は重ならないように保存しています。
代々の職人さんが細やかな配慮をしてきたからこそ、180年もの長い間、現役で使うことができるのですね!
紙はどんなものを使われていますか?
襖や壁紙には、福井県産の越前鳥の子紙を使っています。
越前鳥の子紙(えちぜんとりのこし)
福井県越前市で、ジンチョウゲ科の雁皮(がんぴ)という植物を用いてつくられる手すき和紙。奈良時代からつくられ、やや黄色がかった色が卵の殻の色に似ているということから、「鳥の子」の名がつく。
つやがあり、丈夫で虫がつきにくいという特徴がある。明治時代からは、襖用の紙が多く製作された。
理由はあるのですか?
丈夫ですし、昔からそれを使うもの、と決まっていますからね。紙漉きには冷たい水が良いということで、雪解け水で紙漉きをする越前では、いい紙ができたのでしょうね。
唐紙を摺るのに使う絵具(えぐ)には顔料(岩絵具)が使われます。これに接着剤としての布海苔(ふのり)、光沢を与える雲母(きら)などが調合されます。
布海苔とはなんですか?
海藻を乾燥させたものを煮詰めてつくるのりのことです。ふつう版画などの場合は、膠(にかわ)を接着剤に使うのですが、そちらは動物性で版木が傷んでしまうので、唐紙の場合は水に溶けやすく版木にやさしい布海苔を使っています。
おかゆのようにべたっとしているので、焦げやすそうですね。
そうなんです。焦がさないように気を付けなければいけませんし、天候や紙質によって水加減を変えなければいけないので、職人のカンが大切になります。
熟練の腕が必要なのですね!ところで、雲母(きら)というのは何ですか?
花崗岩を砕いたもので、パールのような光沢を与えてくれます。唐紙の場合、光らせたい場合は雲母を、マットにしたい場合には胡粉(こふん)を入れます。ちなみに胡粉は、ハマグリなどの貝殻を焼いて砕いてつくります。
「きら」って、素敵な響きですね!名前の通り、きらきら光るのですね。
光の演出は大切ですね。昔は手で岩を砕いていたので、粒子がまばらなため、乱反射して輝いていたそうです。
ろうそくや、月の光の中で、また今とは違った雰囲気があったのでしょうね。
この、鍋のふたのような道具は何ですか?
唐紙独特の道具で、篩(ふるい)といいます。杉などの細長い薄板をまるめた枠に、寒冷紗やガーゼを張ったもので、絵具を版木に移すときに使います。
柔らかい布を張った篩を使うので、版木も傷まずに長持ちするのでしょうね!随所に丁寧なモノづくりへのこだわりが感じられます!
それではここで、唐紙ができるまでの工程を紹介します。
唐紙づくりの工程
①布海苔を煮る(焦がさないように一昼夜)
②布海苔をこして、顔料・雲母・胡紛などと乳鉢で調合する
③篩(ふるい)に刷毛で色を移す
④篩で版木に色をつける
⑤紙を置く(版木の見当に合わせる。襖判は12回版木を置き換える)
⑥手のひらで摺る(すこしムラのあるふっくらとした立体的な質感が出る)
⑦同じ模様を同じ個所に2度摺りする(よりふっくりとした質感に)
⑧乾燥させる(自然乾燥)
摺るときに、版画では竹製のバレンを使いますが、手のひらで円を描くようにこすって摺るというのが、唐紙の特徴ですね。
一枚一枚手で摺り上げるからこその、あたたかみのある風情が唐紙の魅力ですね!
「丸二」さんの唐紙は、寺院や料亭、旅館などの伝統建築のほか、ホテルやレストランなどの現代建築でも数多く利用されています。
「株式会社丸二」
1902年(明治35年)、「西村高緑堂」として京都で創業、襖・表具(屏風、掛け軸,額装等)といった和のしつらえに携わる。現在は「株式会社丸二」として、襖・表具ほかインテリア材料の卸業・施工・表装を行う。京都の伝統工芸品「京からかみ」については自社工房を構える。
京唐紙はもともと襖として使われてきたので、和室離れと共に使われる機会が減っています。需要がないと、伝統は続かない。だから、需要の開拓が私たちの使命だと思っています。
具体的にはどのようなことをされていますか?
今まで通りの「唐紙」だけでは難しいので、現代のライフスタイルに合うように、たとえば和室だけでなく、洋室にも合うようなもの、ホテルやレストラン、海外でも使ってもらえるようなものを考えています。
洋室には襖がないので、壁紙として「漆唐紙」というものを開発しました。洋風のインテリアに負けない強さのあるものを、と考えたもので、京都の伝統工芸にもゆかりのある漆を使っています。
どのように漆を用いるのですか?
文様を摺り上げた後の唐紙に、「京仏具」の技術で漆を吹き付けます。すると、漆は絵具をはじくので、柄は艶やかに浮かび上がり、漆は紙に染み込みます。
しっかりと色がついた背景に、模様がメタリックに浮かび上がって素敵ですね!
壁紙なので、不燃対策をして、国土交通省から防火材の認定を受けなければいけません。トライアンドエラーで、開発には3年くらいかかりました。
「柊屋 本館」や、「北大路茶寮」など、名だたる旅館や料亭などのほか、「ザ・リッツ・カールトン京都」にも「丸二」さんの唐紙が使われているのですね!
「ザ・リッツ・カールトン京都」には、実は紙ではなく、唐紙の版木をインテリアとして提供しているんです。
版木を、ですか?
はい。ある日、弊社のショールームに海外のホテルの関係者がいらして、壁紙がご入用かと思いきや、版木の前でじーっと動かずにいらっしゃったんです。
版木そのものも、味がありますものね。
そうなんです。版木の雰囲気が素晴らしいので、それをインテリアに使いたい、と。私たちにとっては、「目からうろこ」のまったく新しい発想でした。
それで、客室のインテリアに版木を使われたのですか?
いえ、最初は全客室に、と希望されていたのですが、膨大な数になるので予算の関係で無理ということで、大ホールの宴会場の天井に、版木をインテリアとして作成しました。
版木の天井、迫力があって素敵ですね!
版木自体をインテリアにすることには、特に海外やホテル向けとして、今、力を入れています。
このように大きな作品は、さすがに手彫りは難しいでしょうね。
はい。伝統の手摺りの「京からかみ」シリーズのものは、版木を復刻する際に手で彫っていますが、新しい商品のために、新しい模様をデザインしてつくる際は、データをコンピュータに取り入れ、レーザーで彫ります。
レーザーで彫れるんですか!
はい。おかげで、海外のデザイナーがつくった柄も版木にすることが可能になりました。
文字通り世界が広がりますね!
ただ、データ化すると、文様、デザインだけが一人歩きしてしまう恐れがあります。「唐紙」という伝統には、文様だけでなく、職人が一枚一枚手で摺っていく、ということも含まれると思うので、新しい商品を開発するときには、線引きをするように気を付けています。
京都では伝統的に、さまざまな分野のモノづくりがされているので、職人さんがとても多いです。だから、何をつくるにしても困らず、商品開発がやりやすいですね。
さすが京都ですね!
それでも、後継者不足などは深刻で、職人文化は衰退しつつあるのも確かです。必要とされなければ仕事がないので、需要を開拓しつつ、唐紙だけでなく、ほかの伝統工芸もいっしょに盛り上げていけたら、と思っています。
「京唐紙」を未来に伝えていくために、今後はどのような活動をされていきますか?
ほかの伝統工芸品と違って、「唐紙」は知っている人が少ないと思います。だからまず、唐紙のことを「知っていただく」ことを目指したいと思います。
その上で、ご自分のライフスタイルに、「唐紙」を身近なものとして取り入れていただけたらと思います。
アートパネルや照明など、手軽に取り入れられるものも多いですね!
入口はどこからでもいいと思います。それから、国内だけでなく海外の方にも、「唐紙」の魅力をどんどん知っていただきたいですね。
「丸二」さんは襖や壁紙のほかにも、ペンダントライトやアートパネルなど、モダンなインテリアグッズを多数つくっていらっしゃいます。
丸二
【京からかみ】丸二 Karakami wall panel 青海波
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【京からかみ】丸二アクリル行灯松唐草
時を超えて愛されてきたスタイリッシュなデザインに、手仕事のあたたかみも感じられるペンダントライト。伝統とモダンがほどよくミックスされた、おしゃれな一品です!
丸二
【京からかみ】丸二 KARA-IRO 大雲
丸二
【京からかみ】丸二 千鳥うちわ 鳳凰蝶唐草
「丸二」さんのギフトショップでは体験工房が併設されていて、「唐紙」づくりを体験することができます。
「唐丸(からまる)Karamaru」「京からかみ」を「知る」「体験する」「楽しむ」をテーマにした、「丸二」さんのギフトショップ兼体験工房。二階は職人が製作を行う唐紙工房となっている。
体験工房では、「版木」「紙」「色」を選んで自分で摺り上げるという、実際の唐紙製作と同じ工程を味わっていただけます。
どのくらいの時間でできるんですか?
はがきは短時間で、アートパネルでも1時間半から2時間くらいででき、その日のうちにお持ち帰りいただけます。120年以上前の版木で体験していただくこともできます。
すごい!緊張しそうですが(笑)、本当に歴史のある版木の感触を体験できますね!
「丸二」さんの体験工房に出かけられない方でも、おうちで「唐紙」づくりを体験できる、「唐紙体験キット」もあります!
丸二
【京からかみ】丸二 キラレ 青海波 (体験キット)
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【京からかみ】丸二 Karakami kit 四季 (体験キット)
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【京からかみ】丸二 Karakami stamp四季 A落款版 (体験キット)
最後に、「丸二」さんから唐紙を使われる方へのメッセージを伺いました。
体験工房や体験キットでは、子供心に帰って、無心に楽しんでいただければと思います。
楽しいということは、大切ですよね!
はい。体験によって記憶に残れば、お寺などを訪れて、「あ、唐紙だ!」と見つけていただけると思います。
京都でお寺を訪れたら、私も今度、気を付けて見てみます!
ぜひ(笑)。伝統工芸だからと気構えるのではなく、伝統のバックボーンを持つ、身近なものとして感じていただき、そこから日々の生活に「唐紙」を取り入れていただければと思います。
「ほとんどの版木は100年以上使われています」と言われたときに、「京唐紙」の伝統の奥深さ、代々丁寧に道具を扱い、心を込めて唐紙を摺り上げてきた先人たちからの想いをしっかり受け継いでいらっしゃるのを感じました。
伝統を守りつつ、それを次の世代につなげるように、現代のライフスタイルで「唐紙」が身近なものであるように、さまざまな挑戦を続けられる「丸二」さん。
今後のご活躍から、目が離せません!
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