京友禅とは?守るもの、変えるもの。友禅作家の新しい挑戦

Journal編集長
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京都で作られ、華やかで豪華絢爛な美しさが魅力の京友禅
今回は、美しい色使いや世界観を作風とする京もの認定工芸士の眞鍋さんに、京友禅の魅力についてお話を聞かせていただきました。
京友禅の基礎知識や、作業工程についても詳しく解説するので、ぜひ最後までご覧くださいね。

取材協力者プロフィール

眞鍋沙智

文学部在学中に友禅に興味を持ち、京都市染色試験場で手描友禅を学ぶ。
大学卒業後は友禅作家である吉田喜八朗氏に師事し、自身の作品製作を開始。

2009年 日本工芸会近畿支部展「楽園への誘い」入選    
2011年 男物洒落着「ケモノデ」が日本新工芸新人奨励賞
2018年 第六回京ものユースコンぺティション 準グランプリ2009年日本工芸会
2019年 友禅染めブランド『Morphosphere』を設立。

友禅を身近に感じられるように、文化や世代を超えた友禅の活用を模索している。

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京友禅は豪華絢爛な色の世界

京友禅の着物

参考

京友禅とは?
京友禅は、染めの着物に模様をつける友禅技法を用いて京都で作られた伝統工芸品。
経済産業省指定伝統的工芸品として、1976年に指定された。
日本3大友禅は、京友禅・加賀友禅・東京友禅だと言われており、元禄時代に京都で生まれた京友禅は、3大友禅のなかでももっとも歴史が古い伝統工芸品。
糸目糊を使って防染することで、隣合う色が混ざらないようにしている。
たくさんの色が使われており、刺繍や金銀泊が施されることから、鮮やかな色合いや豪華できらびやかな着物として人気が高い。

Journal編集長
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京友禅とよく比較されるものとして、石川県の※加賀友禅が挙げられますよね。京友禅と加賀友禅の違いは何でしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

いろんな違いはありますが、代表的なのは色彩と金彩の違いです。京友禅が、華やかな色彩なのに対して、加賀友禅は渋くシックな色彩が特徴です。金彩が入るか入らないかも違いますね!京友禅は、金彩が入ります。私の師匠は京友禅と加賀友禅をミックスした作風だったので、京友禅の特徴である朱色や大きな花が入る反面、金彩は入っていませんでした。また、加賀友禅は、もち米を使った糊が使われているのが特徴と言われることが多いですが、最近では京友禅の作家でもこだわってもち米を使う方も多いです。

Journal編集長
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京友禅は豪華絢爛で華やか、加賀友禅はシックで落ち着いたイメージですね。

こちらの記事では、京友禅について、より詳しく解説しています。

参考

※加賀友禅
石川県の金沢を中心に作られている伝統的工芸品。
藍、燕脂、黄土、草、古代紫の加賀五彩を基調としたシックな色合いが魅力。

こちらの記事では、加賀友禅について詳しく解説しています。

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京友禅には種類が2つある!

京友禅のアクセサリー

京友禅は、大きく分けると手描き友禅と型友禅に分けられます。

参考

手描き友禅…模様の1つ1つに、刷毛や筆を使って手作業で色をつける。
型友禅…型紙を使って作るので、大量生産が可能。

Journal編集長
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眞鍋さんは手描き友禅をされていますが、着物だけでなくアクセサリーなどの小物にもアレンジされていますよね?

眞鍋さん
眞鍋さん

はい。アクセサリーは手頃に色の美しさを表現するために作ったもので、とにかく色にこだわっています。
幅広い色調で作っているので、季節ごとに色を纏えるようにしてもらいたい作品です。

Journal編集長
Journal編集長

他にも、着物以外でトライしたい作品はありますか?

眞鍋さん
眞鍋さん

今は友禅のカードケースを作っていますが、他にもインテリアパネルなど、日本の家庭に合うような作品を作っていきたいと考えています。

京友禅のブローチ
少しの特別感で心が踊る。京友禅のブローチ

京友禅のブローチ

染めと刺繍で作られたtintシリーズのブローチ。京友禅ならではの鮮やかな発色を最大限に活かしており、パッと目をひく華やかさが魅力です。軽いつけ心地で普段使いにもおすすめ。

いつものお洋服も、このブローをつけるだけでちょっと特別に感じられます。帽子やカバンなど、自分好みにつけてアレンジしてみてはいかがでしょうか?

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【京友禅】Morphosphere tint ブローチ(アジサイ)B

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京友禅のカードケース
可憐で上品な京友禅のカードケース

京友禅のカードケース

着物生地から仕立てたカードケースで、センスが光る逸品。2つ折りでポケットも2個あるのでたっぷり収納できて、実用性も抜群です。

落ち着いた色と質感で、上品な大人の魅力を演出します。パーティーのような人に見られることの多いシーンで持っていると、センスの良さをアピールできますよ。

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【京友禅】Morphosphere tint シルク帯地カードケース E

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京友禅は工程が多く根気が必要な仕事

カラフルな染色料

手描き友禅と型友禅には、以下の工程があります。

参考

【手描き友禅】
図案作成…デザイン画を描く。
下絵描き…生地を出来上がりの形にして、仮縫いした後に下絵を描く。
糸目糊置…仮縫いをほどき、下書きに沿って糊をおく。※この糊が防染の役割を果たすので、隣の色と混ざらない
地入れ…生地に豆汁を塗る。※にじみを防ぎ染料を定着させる役目
挿し友禅…筆を使って、手作業で染料を着物に挿していく。
蒸し…高温の蒸し箱で、1時間程度蒸らす。※染料を生地に定着させる
伏せ糊…柄の上に糊を塗る。※色差しした部分が染まらないようにするため
地染め…大きな刷毛で地色を染める。※経験と技術必要な作業
蒸らし…もう1度蒸し箱で蒸す。
水元…糊と不要な染料を、水で洗い落とす。
湯のし…生地幅を整えて小じわをとる。
装飾…表面に金箔や銀箔、金糸や銀糸で装飾する。

参考

【型友禅】
図案、型作成…デザイン画を描いて、型を彫る。※1色につき1枚の型が必要なので、使用する色の数だけ型を作る。
地張り…木の1枚板に、白生地を糊で貼り付ける。
型置き…型を生地の上に置いて、色糊を乗せて染めていく。※色や柄が多いと型置きを幾度となく繰り返す。
糊伏せ…型で染めたところに糊を乗せる。※防染のため
引き染め…糊伏せされていないところを、刷毛で地色を染める。
蒸し…高温の蒸気を当てる。※染めた色を定着させるため。
水元…落ちた染料が生地に付着しないように、水で洗い落とす。
仕上げ加工…表面に金箔や銀箔、金糸や銀糸で装飾をする。染めむらなどの補正もする。

Journal編集長
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手描き友禅も型友禅も、作業工程が多くて大変ですよね。京都では専業分業化していることが多いようですが、眞鍋さんも分業されているのでしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

私の場合は、染色のあとの蒸しは業者にお願いしていますが、それ以外は自分で行うことが増えています。
通常は生地のプレスと蒸し、水元は専門業者にお願いすることが多いと思います。自分でやる工程が多いからすごいということはなく、一つの工程で何十年もやってきたベテラン専門職人には敵わないと思うところもあり、作りたいものによって適宜使い分けています。

Journal編集長
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いろんな方の手に渡って作られているのですね。かなり時間がかかりそうです。

眞鍋さん
眞鍋さん

そうですね。京友禅は時間がかかります。私の場合、おあつらえで最低3ヶ月は要します。カウンセリングをして、お客様とすり合わせをしながら製作をすすめますので。

Journal編集長
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カウンセリングですか?

眞鍋さん
眞鍋さん

はい。お客様の顔を思い浮かべながら作ったりすることで、その方に合った雰囲気などを表現できると思っています。

Journal編集長
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お客様に対する想いが込められているのですね。他にも、大変な作業などはありますか?

眞鍋さん
眞鍋さん

縫うときの合い口を合わせて染めたり、縫製の歪みを踏まえて柄をつけたりするのも大変な作業です。

Journal編集長
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根気がいる仕事ですね。

眞鍋さん
眞鍋さん

そうですね。あと、乾かす時間も挟まなければいけないので、その日に集中してできないのも大変なところですね。
私の場合は、1人で作業をおこなう分、スピード感も求められます。

Journal編集長
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時間がかかる分、着物やお客様に対する愛情も募りそうですね!

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すべての美しさを表す『Morphosphere』

京友禅のアクセサリーと女性のイラスト

Journal編集長
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眞鍋さんは『Morphosphere』というブランドを手がけていますよね?

眞鍋さん
眞鍋さん

はい。Morphosphereのなかで、アクセサリーや友禅など、さまざまなものを扱っています。

Journal編集長
Journal編集長

Morphosphereという言葉は聞き慣れない言葉ですが、造語なのでしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

そうですね。Morphosphereは、モルフォ蝶のMorphoと球体のsphereを掛け合わせた言葉です。

Journal編集長
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蝶々と球体は、離れている存在のようにも感じますが、Morphosphereにはどのような意味が込められているのでしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

まずMorphoですが、モルフォ蝶は美しい青色の蝶々です。
美しいものを表す言葉として『Metamorphose』がありますが、モルフォ蝶はMetamorphoseの語源にもなっていると言われています。モルフォ蝶は、それほど美しい蝶々なんです。
そして、sphereは英語で球体、星、月などの意味があります。つまり、全ての美しいもの、と言う意味です。
美しい言葉を掛け合わせたMorphosphereには、全ての美しいものを包括したプロジェクトという意味が込められています。

Journal編集長
Journal編集長

なんだか素敵ですね。美しい作品を作り続ける眞鍋さんのブランドにぴったりです!

眞鍋さん
眞鍋さん

私には、美しいものを作る使命があると思っています。
Morphosphereは、私にとっては所信表明のようなものでもあるんです。

Journal編集長
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所信表明ですか?

眞鍋さん
眞鍋さん

「自分が美しいものを一生をかけて作っていく」という私の信念を表しています。

Journal編集長
Journal編集長

決意の表れでもあるんですね!美しいもの、ということですが、作品のインスピレーションはどのようにして湧いてくるのでしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

私のインスピレーションは本や、絵画、オートクチュールのドレス、映画や小説、音楽が多いですね。特に音楽は、挿絵を書くようなイメージで想像します。

Journal編集長
Journal編集長

すごいですね!今後はMorphosphereでどのような作品を考えていらっしゃるのでしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

着物ももちろんですが、普段使いでき、アパレルや雑貨のショップに並ぶようなものも展開していきたいと考えています。友禅作家としての自身を表現できるようなものや、シンボルになるようなものを作っていきたいですね。

Journal編集長
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今後のMorphosphereが楽しみです!

色彩の魅力に惹かれて友禅の世界へ

真鍋さんと京友禅

Journal編集長
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眞鍋さんが友禅の世界を志したきっかけなどはあるのでしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

友禅の世界に足を踏み入れたのは、19歳の頃です。京都染色試験場の基礎講習を受けたのが最初でした。当時は誰でも受けられるものではなかったので、友達の絞り染めの作家さんのところでバイトをしていることにして受けましたね。
最初は「友禅ってきれいだな」くらいの気持ちで始めました。

Journal編集長
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染物と聞くと着物のイメージが強いですが、着物がきっかけで友禅の世界に入ったのですか?

眞鍋さん
眞鍋さん

私の場合、着物が好きで始めたわけではないんです。「技法として惹かれた」という言い方がしっくりきますね。絵が好きだったので、油絵や水彩画などの表現技法のひとつとして「友禅って、色の自由度や美しさが特殊でいいな」と感じました。続けていくうちに、本格的に携わりたいと思い、卒業後に師匠のところにお世話になった形です。

Journal編集長
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同級生が進学や就職をするなか、伝統的工芸の道に進む決断はかなり勇気がある行動ですよね?

眞鍋さん
眞鍋さん

何も考えずに、情熱だけで突き進みましたね。同級生は、研究者や教育者、一般就職していたので、不安になることもありました。

Journal編集長
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一番不安を感じたのはいつでしたか?

眞鍋さん
眞鍋さん

具体的には、弟子入り先を辞めたときですね。その他にも、このままやっていくかどうかと悩んだときとか。リーマンショックやコロナなど、世の中では様々なことが起こるんですよね。
染色は作業場所が大きく必要なので、場所を維持するコストもかかるんです。別の職種への軌道修正もしにくいので、悩むことは多かったですね。

Journal編集長
Journal編集長

様々な苦悩を乗り超えて、今の眞鍋さんがあるのですね。それが眞鍋さんの作品作りにも生きているのではないでしょうか?陶磁器(タイル)の商品など、友禅の世界では考えられないようなチャレンジもされています。

眞鍋さん
眞鍋さん

デザインや意匠を変えて、色々とチャレンジはしていますね。タイルはデザインを提供して、焼いてもらっています。色合いを出すための特殊な方法など、こだわりも詰まっていますね。

Journal編集長
Journal編集長

今後も、タイルなど新しいチャレンジをする予定ですか?

眞鍋さん
眞鍋さん

今後は、蝶々の着物を作ってみたいです。構想がある状態でまだ作れていないアイディアがあるので、頑張って挑戦していきたいですね。

京友禅の陶板タイル
自由な発想で使える京友禅の陶板タイル

京友禅の陶板タイル

京友禅の美しさを存分に反映させた陶板タイル。縁起の良い吉祥模様をアレンジした着物ケモノデのデザインです。多治見の職人が手作りしており、特別感を感じられます。

タイル側面にも柄が入っているので、小皿のように食器として利用するがおすすめ。鮮やかな色合いで、食卓が一気に華やぎます。もちろん、インテリアとして飾ってもぴったりなので、自分だけの使い方を見つけてみてくださいね。

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【京友禅】Morphosphere ケモノデ 陶板タイル NO.2

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型にはまらない京友禅を守る

京友禅デザインのタイル

Journal編集長
Journal編集長

眞鍋さんがつくられている京友禅は、伝統的な技法を受け継いでいるのですか?

眞鍋さん
眞鍋さん

技法に関して、完全に受け継いでいるという訳ではありませんが、昔から行われている伝統的な技法であることは間違いないですね。技法を受け継ぎ、デザインやつくるものを変えていっています。京友禅は、デザインについておおらかで自由度が高いのも魅力だと思っています。

Journal編集長
Journal編集長

京友禅に対するこだわりはありますか?

眞鍋さん
眞鍋さん

京友禅らしさとして、柄を邪魔せずに引き立てるための金彩を入れています。
また、色は塗りながら考えていくことで、マンネリ化しないようにしています。

Journal編集長
Journal編集長

塗りながら考えているのですか?

眞鍋さん
眞鍋さん

はい。同じものを何枚も作らないので、型にはまらないようにするのを大切にしていますね。ルーティンになると収まりがいいですが、心に響かないような気がするので。

Journal編集長
Journal編集長

先ほどの、お客様の顔を考えながら製作する、というのもその一環ですか?

眞鍋さん
眞鍋さん

そうですね。お客様の顔を思い浮かべながらだと、新たな魅力が引き出せたり、すてきな雰囲気を演出できたりすると思うんですよね。
作品の中にストーリー性を出すのも、大切にしています。

京友禅の伝統を守りつつ、自分だけの作風を掘り下げていきたい

タイルとアクセサリー

Journal編集長
Journal編集長

京友禅の技法の中で、オリジナルに変えている部分はありますか?

眞鍋さん
眞鍋さん

伝統的な技法を守っていることには変わりありませんが、柄部分を防染するために必要な伏せ糊の作業を、私はロウでおこなっています。ロウで行う場合がロウ伏せ、糊で行う場合を糊伏せと言います。ロウで行うことで不安定な工程が省けてスピード感も出るので必要に応じて、新しいやり方を取り入れています。

Journal編集長
Journal編集長

伝統的な技法を守っているということで、伝統工芸品として作品展への出展も視野に入れていらっしゃるのでしょうか?

眞鍋さん
眞鍋さん

そうですね。自分の作風が認められるかわかりませんが、作品展への応募も考えていきたいと思っています。

Journal編集長
Journal編集長

伝統工芸としての京友禅を守りつつ、新しいチャレンジもされるのですね!最後に、今後の方向性を教えてください。

眞鍋さん
眞鍋さん

自分らしいデザインを掘り下げていきたいと思っています。
また、ケモノデのような動物モチーフは大切にしたいですが、逆に、スチームパンクな世界観を作るのにも興味があります。
そして、Morphosphereにも込められている蝶々で、幻想的な女性らしい世界観の作風を作るのは、ぜひトライしたいです!

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まとめ

今回は、京友禅作家である眞鍋さんに話を聞かせていただきました。

自分にしか表現できない色彩やデザインを活かした作品づくりを続ける眞鍋さん。

今後のご活躍を楽しみにしております!