民芸品と工芸品・伝統工芸品と伝統的工芸品の違い

BECOS代表
BECOS代表

民芸品や工芸品、伝統工芸品というのは聞いたことがあっても違いがよく分かりませんよね。私もこの仕事で全国の伝統工芸士の方々とお仕事をするまでは明確には違いを知りませんでした。

結論から言えば、どれも人の手で作る「手工芸品」であるということに違いはありません。

もっと言ってしまえば「工芸品」の中に「民芸品」と「伝統工芸品」「伝統的工芸品」というスペクトラムが隔ての曖昧な別カテゴリとして据えてあると思ってください。

その肝心の境目が実ははっきりかわからない、という素朴な疑問を解説いたします。

定義は大変豊富です。

これが文化産物の面白さでしょうね。

決定的な違い・「地域に根づいた文化体系から発生しているかどうか」

福井の伝統的工芸品「越前打刃物」の製造工程

東北の温泉地の定番みやげ「こけし」は民芸品だが隣に並ぶお盆は毅然とした「工芸品」この差とは

温泉地のホテルの売店に必ずといっていいほど置いてある民芸品と言えばあのかわいらしいこけしですが、なんと技巧を競い会う品評会やコンテストがあったりします。

有名なこけし作家も存在し万単位の値段がついていることもありますがあえて民芸品に分類されるものです。

替わって隣に陳列された木地もの(お盆や曲げわっぱなど)には地域公認の「工芸品」の認定シールが張ってあったりします。

この場合、技術面、金額ではなさそうですよね。

にっこりしたこけしの表情の温かみが「民芸品」の所以でしょう。

原材料が低コストであること

無銘の「量産品のこけし」は大概が木工所の廃材、端材を再利用して作られてきたという事があります。

宮城の鳴子こけしは、柱や板材を切り出す職人さんの兼業で土産物として考案したのが始まりでした。

ついでに作られたオマケというのも「民芸品」の横顔です。

足りないものを補う民芸品

海辺の観光地で売られている民芸品で貝細工(工芸品では螺鈿細工といいます)がありますが、これは暮らしの知恵から発展した工芸品でしょう。

何もない海岸で浜辺に打ち上げられた貝殻はとてもきれいに見えたのではと思います。

内側が七色に輝く貝殻はことさら綺麗だったでしょう。

人はいつでもキラキラした美しいものが好きです。

自然に派生した手仕事は、琳派を代表する光琳の螺鈿細工まで続いています。

精度の違い・「技巧と完成度の差、伝統工芸品と伝統的工芸品」とは

伝統的工芸品「江戸切子」を制作する様子

伝統工芸品のなかでも別格な伝統的工芸品

伝統工芸品の中でも、経済産業大臣が「伝統的工芸品」として指定する代表的な工芸品が現在232品目あり、産業の振興を目的に制定された法律「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」通称「伝産法」に基づいて更なる振興を図っている工芸品のことです。

簡単にいうと特に地域の地場産業の盛り上げと関連し、若者が地域に残って働けるよう積極的に自治体が取り組んで売り出している工芸品です。

歴史、史実がいまいちな「友禅染」が伝統的工芸品な訳

友禅染は加賀友禅、京友禅と各地に同一名称がありますが、発案者が齋藤友禅という職人が反物の意匠として各地で弟子に伝えたとされています。

現在は徒弟制度も廃止され、15年の勤続で「伝統工芸士」の認定を受けることができます。

これは一定の技巧の習得と伝統工芸界を支えた証です。

お墨付きの工芸品、それが伝統工芸品であり伝統的工芸品でしょうか。

世界観で言えば技法の伝承と定番材料の確立がなされているかどうか?が大きいところです。

伝統工芸品と伝統的工芸品の見分け方はこのマークです。

このシールがついているものが通産省認定「伝統的工芸品」

使い道の違い・「用の美と芸術美」

北大路魯山人が器を作れば芸術的「工芸品」河井寛次郎が作れば芸術的「民芸品」となる

観賞物として価値が大きいか?毎日使う道具としての価値が大きいか?

これは魯山人のとりわけの芸術へのこだわりと、河井寛次郎の教師、教育者が造る日常の芸術品という対比が面白いのです。

個人的に作品だけ見ると、技巧の妙は寛次郎の圧倒的に芸術品クオリティーですし、精密緻密な道具さばきの跡がそのままみられるわかりやすい「上手い」です。

でも、魯山人の器を何必館(個人美術館常設展示)で見ると泣いてしまうのです。

「買ってきた味噌を誉めてもらってそりゃ嬉しくて嬉しくて」でっち奉公先で初めての嬉しかったのだそう。

芸術品と民芸品の区別は必要か?というエピソードです。

京都の竹林郷・嵯峨野の「竹製品」問題

茶道の茶碗は芸術品であり、茶を泡立てる茶筅は「用の美」としての所見はあるが特に観賞の対象としないのが通例です。

問題は京都嵯峨野で売られている竹製品のおみやげ物。

高尾山に向かって、小路沿いにおみやげ物屋さんから工芸品直売所までありますがとくに線引きはないようです。

一度、孟宗竹をまっ平らに加工した運び盆を見せられ「これは工芸でしょうか?」と竹細工店の店員さんに聞かれた事がありました。

どうも商品シールを貼るのに迷っていたよう。

後日談では「京竹工芸品」で統一されたようです。

嵯峨野の竹細工は、近年広がりすぎる竹林の整備の時に出た間伐材の再利用として売られていたという極めてローカルな民芸品規模の手仕事です。

ですが、道すがらお土産店の陳列を普通に見ると工芸品ともいいたくもなります。

その訳は観光地としての竹林景観を保つため、採光の美しさを優先し若竹も大量に伐採するのです。

結果、質のよい素材も入手しやすくクオリティアップに繋がっているという経緯があります。

刑務所で罪人が贖罪と社会復帰に製作した「仙台箪笥」はどこに入るのか?

これは刑務所作業製品で統一されているようです。

通常の職人さんが製作した作品や製品は伝統的工芸品(仙台箪笥は2015年認定それまでは伝統工芸品でした)に分類されています。

ちなみに工程ごとに、さしもの(箪笥の形に木を組み合わせる作業)、塗り、鐡もの(金具や装飾)と職人さんが違いますので大変高価な棹ものとなっています。

真面目に社会復帰した方の製作品は、晴れて「伝統工芸品」として店頭に並びます。

組合加入している工房に就職ができたならば「伝統的工芸品」制作の一員です。

最後はみんなで検証「では、100えんショップの民芸シリーズは何なのか?」

某全国展開の100円ショップの陶器の定番コーナーには産直品としてのご当地焼きが並んでいます。

  • 「美濃焼」
  • 「信楽焼」
  • 「萩焼き」
  • 「伊万里焼」etc..

規模でいっても流通ブランドでいっても「工芸品」なのに「民芸」と名乗る訳はなんだと思いますか?わからない人がいたら前のスレッドを読み返して再考してみて下さい。

結論はあなた次第

若い皆さんは音楽で考えるのも面白いですよ。

例えばロックとハードロック、ラウドロック、メタル、ハードコア、オルタナティブ、インダストリアル(ロックとメタルの区分)のジャンル分けを論述してください。

エフェクター ギターアンプ問題から始まる機材論議も合わせてどうぞ。

ちなみに「ビートルズ」は昔は不良の(笑)ロックだったそうですよ。

今ならフレンチポップという感じですよね。

まとめ

と言うわけで、例題は書ききれないほど豊富です。

これが文化産物の学術的な論語の面白さでしょうね。

職人さんの手仕事をお好きなように銘々の価値観でお楽しみ下さい。

それが地域の地場産業や芸術文化を育て自分の見聞力を培います。

よき手仕事に出会うことは知的財産でもありますが、何より暖かい気持ちになりホッとします。

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