家の守り神?魔除けのシンボル?「鬼瓦」の謎を探る

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

鬼瓦は古来、家や家族の「守り神」や「魔除け」として親しまれてきました。

鬼が厄災を払い除けるとされたためです。

現代ではその建築様式の変化からあまり目にすることもなくなったため、鬼瓦と聞いてもピンとこない方もいるのではないでしょうか。

一方でその精巧なデザインが評価され、今や屋根の上から室内のインテリアに置き場所をかえ、注目を集めつつあります。

鬼瓦のことを知り、その造形を目にし、奥深い魅力に触れることで、鬼瓦の価値やこれからの見方も変わってくるかもしれません。

今回は「鬼瓦」について、まるごと全部ご紹介していきます。

目次

鬼瓦ってそもそも何? 鬼瓦の起源や魔除けの風習について

鬼瓦とは、寺院や城郭、一般家屋などの日本式建築物の棟端部などに設置される板状の瓦の総称です。

おもに家の守り神や魔除けの意味合いが込められていますが、屋根材に雨水が侵入するのを防ぐ役割も担っています。

鬼瓦の起源は、ギリシャ神話で有名なメドゥーサをシリアのパルミラ遺跡にある入り口の上に設置していた文化からきています。

シリアではメドゥーサを使っていたわけですが、日本では鬼がその代わりとなりました
共通するのは恐ろしいものを置くことで、さらなる恐ろしいことから守るという考え方です。

日本では古来、鬼をあえて味方に付けることで、その建物や家がまるごと守られ、安心して暮らすことができると考えられていました。

鬼だけがもつ強さにより、通常では太刀打ちできない魔物さえも圧倒することができると信じられていたのです。

一般的に鬼瓦というと、鬼の顔をしたものを連想しがちですが、実はいろいろなデザインがあります。

厄除けの意味で鬼の顔をした鬼瓦が使われていましたが、隣近所をにらみつけるような姿が次第に敬遠されるようになり、代わって縁起物である七福神や、火災を防ぐために水という文字を取り入れた鬼瓦が登場するようになりました。

民家の瓦屋根に多く用いられる鬼の顔ではない鬼瓦は、「飾り瓦」とも呼ばれます。

基本的には、そこに暮らす人々の家内安全や無病息災、災害回避などの願いがこめられた形が多くみられます。

火災の延焼防止を願い、鯱・菊水・波・雲などの水や雨をイメージさせるもの、縁起のよい鶴や亀、子孫繁栄をあらわす蔓草(つるくさ)や雲竜、福を招く七福神なども人気です。

また家紋を使うことも多く、その家の象徴(シンボル)の役割も果たしていました。

しかし平成期以降からは、瓦葺きの家屋が大幅に減少したため、鬼瓦のついた屋根の家を見かけることも少なくなりました。

現代でもその精巧なデザインは芸術作品として評価されています。ライフスタイルの変化に合わせ、インテリアとして家に飾っておける商品もあり、守り神・魔除けという意味でも密かに人気を博しています。

鬼瓦の歴史と主な産地

日本最古の鬼瓦は、今から約1400年前の飛鳥時代に建てられた奈良法隆寺の寺院跡「若草伽藍(わかくさがらん)」から発掘された、蓮華文鬼瓦(れんげもんおにがわら)といわれています。

蓮華文とは8枚の花弁の付いた花をかたどった紋様のことで、鬼のいない鬼瓦でした。

現在のような2本の角が付いた鬼面(きめん)の鬼瓦が登場したのは、室町時代になってからです。法隆寺の瓦大工、橘国重(たちばなくにしげ)の作品がその始まりと言われています。

その後も橘一族は何世代かに渡って近畿一円で活躍し、鬼瓦文化の土台を築きました。

そうして寺院や城郭に使われていた鬼瓦は、江戸時代後期に火災対策として瓦葺き屋根が普及したことから、やがて一般の家屋にも鬼瓦が普及しはじめます。

しかし眼光鋭くあたりをじっと睨みつけるような表情の鬼瓦は、庶民が暮らす住環境には似合わず不評でした。

そのため無病息災や災害回避など、人々の願いを込められた形の鬼瓦が多く出回るようになりました。

鬼瓦の主な産地は、以下の3ヶ所になります。

・全国でも最大規模の生産量を誇る「三州瓦」(愛知県西三河地方)
・赤瓦が特徴の「石州瓦」(島根県石見地方)
・キメの細かい美しい仕上がりが特徴的な「淡路瓦」(兵庫県淡路島)

この3ヶ所を総称して日本三大瓦と呼ばれています。

またその他にも「菊間瓦」(愛媛県今治市)なども有名です。産地は全国に点在しています。それは昔から屋根瓦が愛され使われてきたためです。

鬼瓦にはどのような種類があるの?

鬼瓦は屋根のどこに設置されているか、どのような形をしているかによって種類が分けられます。2つのタイプをご紹介します。

「足付鬼(あしつきおに)」

屋根の頂上の水平部分の両端、破風(はふ・屋根の妻側にある三角形の部分や、斜めに打ち付けた板のこと)の拝み部分に設置するタイプです。

「切据鬼(きりずえおに)」

降棟(くだりむね・屋根の頂上の水平な部分から、屋根の勾配にそって軒下の方へ傾斜した棟)、隅棟(すみむね・屋根の妻側の屋根と接した部分にできる、隅に向かって傾斜した棟)、および寄棟などの先端に設置するタイプです。

下の部分が直線になっているのが特徴で「一文字鬼(いちもんじ)」ともいわれています。

また、形により頭、胴、足の3つに分けることができます。

頭の形には、「波型」「将棋頭型」などがあり、覆輪がついたものをとくに「覆輪付(ふくりんつき)」といいます。

「波型」

「将棋頭型」

「覆輪付(ふくりんつき)」

胴には火災防止の願いを込め、水蒸気でできた「雲」や、水分の多い「若葉」がモチーフとして多用されてきました。

足の部位が存在するのは「足付鬼」に限られています。胴の模様に続いているため、「雲」「若葉」がモチーフとなります。

足の内側の形により、丸くえぐれているものを「またぎ鬼」、それ以外を「丸立(まるだて)鬼」といいます。

「頭」「胴」「足」、これらを合わせたものが鬼瓦です。

鬼瓦にはさまざまな種類がありますが、その土地や時代を表しているところが特徴的です。

例えば、京覆輪鬼瓦は京都の西山周辺南部の住宅に使用されている鬼瓦で、雲と波の形に特徴があります。京都という土地に合わせて形がつくられていったのでしょう。

鬢付鬼瓦(びんつきおにがわら)は鬼瓦の頭部の両側がはりだしている形のもので、海沿いや雪国で使用されています。

鬼面鬼瓦は鬼の形をした鬼瓦で、寺院でもっとも使用されるなど、用途や場所に合わせてつくられていったのです。

鬼瓦の価格はいくらくらい?

鬼瓦の価格は既製品かオーダーメイドかで変わってきます。

既製品で、大きさは7寸とした場合の一例では、覆輪頭足付で3万6千円ほど。大きいもので8寸の七福神付が9万9千円ほどとなります。

もちろんもっと安い1万円以下のものから10万円を超えるものまで幅広くあるので、希望にあったものを選ぶことが可能です。

鬼師(おにし)とは?

鬼師は鬼瓦づくり専門の職人のことです。

一般的な瓦がプレス機で製作されているのに対して、鬼瓦は繊細な手作業でつくられています。熟練の技と根気が必要になります。

鬼師は図面を引き、材料となる土も調合して複雑な形につくりあげ、一晩乾燥させた瓦をなめらかに整えて磨きをかけます。

さらに細部の彫刻をほどこし、2週間以上乾燥させた後、高温の窯で丸一日以上離れずに温度調整をしながら焼き上げます。

これだけの手間と技が必要なわけですが、当然できあがった後で失敗となることもあります。

鬼師の仕事は伝統的な和風建築物に使われる鬼瓦の製作が主ですが、実力や実績が認められれば文化財として価値の高い歴史的建造物の鬼瓦の製作をまかされることもあります。

劣化した瓦の代わりをつくるという仕事は後世に自分の足跡を残すことができる仕事です。それだけやりがいのある仕事であるといえるでしょう。

鬼師になるには、特別な資格が必要なわけではありません。長い研鑽をつんで技を磨いていくしか方法はないのです。

その長い道のりを越えて活躍している鬼師は150人ほどと言われています。

具体的に鬼師を目指す場合は、規模の大きいメーカーに入社したり、力のある個人経営の工房に弟子入りしたりして修業をしていきます。

どちらにしても一人前になるには長い年月がかかります。それに耐えるだけの忍耐力も必要となってきます。

鬼瓦の作り方

鬼瓦の大まかな製造工程を紹介します。

1.瓦が焼かれて縮むことも計算に入れながら図面を描き、型紙を制作します。

2.型を取り、土台(ベース)をつくります。その際、鬼師によって使われる道具はさまざまです。鬼瓦づくりは基本的に手と道具によって行われ、電動の機械類は一切使いません。

3.ベースとなる背中部分の瓦に、手作業で粘土を盛って顔の形をつくっていきます。その上にさらに顔のパーツ用の粘土を盛ったら、大まかな雰囲気ができあがるまで手だけを使って形成します。

4.ヘラなど使ってこまかい部分を作り込んでいきます。道具を巧みに使って行うこの作業は「磨き」と呼ばれており、この時点で表面はかなり滑らかな状態になっています。

5.磨きが終わったら乾燥させます。ヒビが入らないようにじっくり乾燥させることが大切です。数週間かけてしっかりと丁寧に乾燥させ、さらに窯の余熱をつかって乾燥の仕上げをします。

6.その後窯積みをし、約1,000℃にもなる窯で丸一日かけて『燻し(いぶし)』という焼成をします。

7.焼き上がってもすぐには窯出しせず、1日以上かけて冷却し、やっと窯出しできる状態となります。作り手の判断で異常がなければ完成です。

鬼瓦は家の中にも置ける!
家の中に飾れる鬼瓦おすすめ3選

鬼瓦は家の中にも置くことができます。鬼瓦の多様化は、ライフスタイルの変化によって現れるようになりました。日本式家屋を建てる人の減少で鬼瓦という伝統文化の継承が危ぶまれたのです。

しかし屋根の上に置かなくても家の中でも守り神としての役割を果たしてくれるのでは、という考えから家の中で飾るという発想が生まれました。そのため大きさもさまざまな守り神を飾るようになったのです。

家の中に置ける鬼瓦その1
玄関やリビングに!気軽に飾れる鬼瓦

鬼瓦家守 室内に飾る笑鬼瓦:山下敦

インテリアとして玄関やリビングに飾れて、気軽に取り入れられる鬼瓦です。鬼瓦というと室内に飾るにはすこし怖いイメージがありますが、こちらの笑った顔の鬼瓦なら子どもがいる家庭でも気兼ねなく飾ることができるでしょう。

斬新なアイテムですが、熟練の鬼師が匠の技でつくりあげた逸品。新築祝いや開店祝いなどでも自信をもってプレゼントできますよ。

鬼瓦家守
室内に飾る笑鬼瓦:山下敦

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家の中に置ける鬼瓦その2
インパクト抜群!鬼瓦のティッシュケース

鬼福 ティッシュケース(笑顔の鬼瓦)

伝統の鬼瓦づくりを大切にしつつ、ユーモアをプラスしてつくられた鬼瓦のティッシュケースです。思わず「くすっ」と笑ってしまうユニークな商品。家の守り神として飾りながら、毎日をちょっと楽しくしてくれるアイテムです

ティッシュケースとして実用的な点も魅力。ぜひひとつお部屋に飾ってみてはいかがでしょうか。

鬼福
ティッシュケース(笑顔の鬼瓦)

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家の中に置ける鬼瓦その3
魔を払いつつ福を呼び込む

北川鬼瓦 祥鬼猫(左手)

8.5cmと小柄ながら存在感のある祥鬼猫(しょうきねこ)です。鬼師が一点一点彫り込むその表情は、鬼とも猫ともとれるお顔立ち。鬼瓦の魔除けと招き猫の祥福を併せ持つ縁起物です。こちらは「くまモン」でおなじみの小山薫堂・川又俊明氏とのコラボ作品です。

一般的に招き猫は、左手で招くと「人」を、右手で招くと「金」を呼び込むと言われています。新築祝いや開店祝い、お見舞いなどの贈り物に適した逸品です。

北川鬼瓦
祥鬼猫(左手)

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鬼瓦の製作体験ができる場所

鬼瓦の製作体験は、全国に点在している工房などの場所でできます。

いくつか例を挙げてご紹介いたします。

鬼瓦工房清泉

兵庫県姫路市にある「鬼瓦工房清泉」です。

個別指導してくれるので初めての人でも分かりやすいです。時間は2時間から~2時間30分で、出来上がる時間は個人によって変わります。

阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)、口を開けた鬼瓦か口を閉じた鬼瓦の好きな方をつくることができます。

>鬼瓦工房清泉の陶芸体験を詳しく知りたい方はこちら

瓦道

次は奈良県奈良市にある瓦屋「瓦道」です。ミニ鬼瓦をつくることができます。時間は1時間程度で東大寺、法隆寺、 薬師寺などの奈良の有名寺院の鬼瓦の製作体験ができます。

>瓦道の陶芸体験を詳しく知りたい方はこちら

若草瓦会館

最後は山梨県南アルプス市にある「若草瓦会館」です。

山梨の伝統工芸である甲州鬼面瓦などをつくることができます。時間は1時間ほどです。

>若草瓦会館の陶芸体験を詳しく知りたい方はこちら

鬼瓦の製作体験の注意点

鬼瓦は乾燥させてから焼き上げるため、手元に届くまで時間がかかります。

別途送料が必要なところもあるので確認して下さい。

製作体験の開催に関して、詳しくは各体験場所にご確認ください。

他にも全国にはいろいろと体験できるところはあるので、興味のある人は探してみましょう!

鬼瓦を堪能する「鬼瓦写真館」

鬼瓦は寺院や城郭などでたくさん目にすることができます。ここでは特に見応えのある鬼瓦をいくつかご紹介いたします。

姫路城

若葉鬼瓦や波頭の鬼瓦など10種類以上もの鬼瓦を一度に見ることができます。

日本一の鬼瓦

日本一の鬼瓦は京都府福知山市にある「日本の鬼交流博物館」にあります。

高さ5m、横幅4.2m、重さ10トンもの巨大な鬼瓦は9ブロックに分けて石州(島根)・三州(愛知)・越前(福井)の職人によって分担して製作されました。迫力ある鬼の面は一見の価値があります。

全国の珍しい鬼瓦①
福岡「太宰府天満宮」の鬼瓦

梅の紋に、梅の花をあしらった鬼瓦。着彩もされていて雅やかです。

全国の珍しい鬼瓦②
京都「浄瑠璃寺」の鬼瓦

まるで狛犬が屋根の上から寺院全体を守っているかのような鬼瓦です。

全国の珍しい鬼瓦③
京都「泉涌寺」の鬼瓦

目の部分に穴が空いており、角度によっては鬼が眼光鋭く睨みつけているようにも見えます。

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