本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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あなたは京友禅といえば何を思い浮かべますか?
やはり、着物を思い浮かべると思いますが、京友禅の柄や世界観を彫刻で表現した「木製の食器」があることをご存知ですか?
今回は1994年京都で創業した三彩工房株式会社の経営企画部 部長 峪和久さんに、創業当時から続く手彫りの型をはじめ、自社ブランド「Sansai」の魅力、日本の伝統工芸についてなど伺いました。
三彩工房株式会社
京友禅の型紙を使った多色染めの技法「型染め友禅」の染め型を職人たちが手彫りで製作する工房として1994年に創業。2003年、創業者で社長の峪博氏が経産省認定の「京友禅伝統工芸士」となる。
現在は手彫りの染め型に加え、シルクスクリーン製版やインクジェット用データ制作を手掛け、京友禅の伝統を守りながら新たな技法への挑戦を続けている。
2020年には自社ブランド「Sansai」がスタート。これまで培った高い技術を活かし、京友禅の世界観を彫刻・色付けした木製の食器やパネルを展開。繊細で美しい商品が話題となっている。
まず、三彩工房さんで創業から手掛けている「型染め友禅」の「染め型」について教えてください。
「染め型友禅」とは、白い生地に対して、「型染め」という技法を用いて、友禅柄を染めた着物のことを言います。当社の創業から続く手彫りの型や、シルクスクリーン(メッシュ状の版)の型で染められます。京友禅の特徴として、多くの色を使いますので、職人の手で1色ずつ丁寧に染めていきます。
いつ頃から始まった技法でしょうか?
京友禅は江戸時代初期の頃からあり、元々は人の手で描いていました。「型染め友禅」は明治初期に京都で始まりました。合成染料の登場で生まれた技法です。
どのような特徴がありますか?
型は繰り返し使えるので、同じ柄の着物を量産できます。また、使用する色数が多い時は20色以上にも及び、手描き友禅には劣らない美しい着物に仕上がります。型は1色につき1型必要なので、振袖1枚に200~300型を準備します。
そんなに沢山の型から作るのですね!どんなデザインが多いですか?
京友禅は、花鳥風月を使ったものが多く、柄が大きく華やかです。豪華さを演出するために、金を多く使っています。柄は線で描くこともあれば、鮫(さめ)と言われる点で表現する方法もあります。
染め型を作る工程を教えてください。
簡単に説明すると、
①発注元が作った図案をスキャニングしてデータ化
②図案の線はハッキリしていないので「糸目」という模様の輪郭線を、画像編集ソフトを使って手描きで綺麗に描く ※図案に色がないことが多く、その場合は当社で配色決め
③編集した模様を大型プリンターで印刷
④シルクスクリーン製版(メッシュ状の版に穴を作り、穴にインクを落とし印刷する方法)で、不織布に模様の輪郭線を転写
⑤④に沿って彫刻刀や丸キリを使い手彫りで型紙作り
⑥樹脂で撥水加工して染工場へ納品
といった工程です。
昔からの技法と新しい素材や技術を組み合わせていますね。
そうです。ちなみに、②でシルクスクリーンを使う理由ですが、昔は紙を使っていましたが、紙は気温や湿度で伸び縮みしてズレができてしまいます。一方、シルクスクリーンは伸縮しないので採用しています。
シルクスクリーンの登場で問題がひとつ解決したんですね。
他に、「シルクスクリーンの型」も作っています。こちらも手彫りの型と同様に1色につき1版作ります。
型紙の場合、1色のボカシを染めるときに、柄によっては型を複数に分けたりするのですが、それだと染め屋さんの手間がかかってしまうため、そういう場合は、シルクスクリーンで1枚にしたりします。
作業で特に神経を使うことは?
振袖は箇所ごとに染めていきますので、最終的に縫い合わせた時、模様がピッタリ合うように型を作ることです。
染め型を作る段階から、縫いあがりを計算しているんですね。
切り型では輪郭の線に沿ってズレずに正確に彫ることに神経を使います。シルクスクリーン製版は、余計な穴が開いていないか?人の目で細心の注意を払って確認しています。
とても細かい作業ですね!
他に京友禅に関して、三彩工房さんが手掛けている事業は?
インクを直接噴きつけて印刷をする「インクジェット」用のデータ作成もしています。
うちはパソコンのスペックが上がった15年程前、いち早くPhotoshopなどの画像編集ソフトを取り入れて業務の効率化に成功し、更にデータを使ってインクジェットで着物を染めることが可能となりました。
いち早く取り入れた訳は?
切り型の職人である社長(峪博氏)が、今後はITが普及するだろうと挑戦したようです。
結果、約15年で数千点以上のデータを作ってきました。最近は簡単な物なら友禅屋さんの中でデータ化していますが、難しい物はうちが請け負っています。
画像編集ソフトを取り入れた時、詳しい方が社内にいたのですか?
特にいません。本を大量に買ってやりながら模索して技術を上げていきました。職人の世界なので「習うより慣れろ」って感じです。
周りの反応はどうでした?
「ITなんて」と言われたこともあったようですが、そういった工房は今は残っていません。古い物を残すためにも、現代のやり方を取り入れつつ進化することが大切なのかなと思います。
2020年にスタートした初の自社ブランド「Sansai」の商品について教えてください。
レーザー加工機を使って木工品に彫刻して京友禅を綺麗に表現した商品です。木製のお皿、コップ、インテリアパネルなどがあります。
始めた理由は?
画像編集ソフトを使った着物の模様のデータ作りに自信があり、それを一番発揮できるのが、データを元にレーザー加工機で京友禅の柄を彫刻することでした。
強みを活かした商品作りですね。
全体に彫刻された柄は繊細でありながら大胆で華やかですね!
京友禅を感じる柄にこだわっています。彫刻は着物の「ぼかし」というグラデーションのような表現を出すために、彫りの深さも綿密に計算しています。色使いは、多くの色を使う京友禅の世界観を大切にしています。
自社ブランドを開発しようとしたきっかけを教えてください。
大きなきっかけはコロナ禍です。私たちは振袖の柄の型を作っていますが、振袖を着る成人式や結婚式が中止になって需要が激減しました。そうなると新たな注文は入りません。
危機的な状況ですね。
このままではマズイ!「注文を待つだけ」は時代に合っていない、自分たちで商品を作って販売することはできないか?と模索しました。
その中で、木に彫刻できる「レーザー加工機」を知ったんです。うちが元々やっている「彫刻」との共通点が気になって。
大きな共通点ですね。
大阪で試せると知って、すぐにうちのデータを持って行きました。実際にレーザー加工機で10cm位の端材に彫刻したら、めちゃくちゃ綺麗に出来上がったんですよ!
これはいける!と思い、導入を決めました。
レーザー加工機で彫刻した「食器」を手掛けた理由は?
誰でも使って、商品として手に取りやすい物は食器だと思いました。また、レーザーで模様を彫刻した木製の食器は業界では珍しいので、「突き詰めれば業界内の地位を取れるのでは」とも考えました。
新たに材料の調達ルートを探すことは大変でしたか?
友禅型の材料として漆(うるし)を昔使っていたので、うちは漆屋さんと繋がりがあるんです。その漆屋さんは木製の商品を扱っているので、そこで木の皿やカップを調達して、木の扱いや塗り方も教わりました。
昔からの繋がりが活かされたんですね。作品のお披露目はいかがでしたか?
社長が「京の名工」を受賞しており、毎年10月ごろに京都で開催される「京の名工展」で展示したところ、とても評判が良かったんです。そこから本格的に食器の彫刻をスタートしました。
まずネット販売しましたが、はじめは全く売れなくて。
そこから、どのようにして販売につなげましたか?
うちの商品は実物を見て頂いてこそ魅力が伝わる!と、沢山の展示会に出展しました。また、京都府、京都市様が開催されているイベントやセミナーなどに片っ端から参加して、多くの人に知ってもらう活動を積極的に行いました。
そこから店舗への卸や、BECOSさんで扱って頂くとか決まって、ファンも徐々に広がってきました。
良い商品を作るだけでなく、魅力を伝えることも大切ということですね。
商品づくりでの課題や難しいことは?
お皿は飾り皿でも、撥水加工しているので食事でも使えますが、華やかな柄なので料理が負けることがあって。すると飾り皿になってしまい、料理では使われない。それが悩みであり課題ですね。
難しいことは色です。色付けと撥水加工はうちで手作業でやっていますが、木に塗るので思った色が出ない、滲むなど難しい。木はそれぞれ色も木目も違うので、それをどう活かすか?と考えながらやっています。
Sansaiで特に人気や反響のある商品を教えてください。
大皿の「京友禅尽くし-彩」です。最初に作った商品なんですが、一番「振袖感」があって、不動の人気を誇っています。
京友禅の染め型を製作している「三彩工房」が手掛けるブランド「Sansai」は、これまで培ってきた技術を基に、京友禅の表現した食器やパネルを展開しています。
こちらは、牡丹や桜などの花々や貝桶をレーザー彫刻した木製の大皿。京友禅の華やかさが表現されたお皿は、食卓を上品に彩ります。木製なので軽く撥水加工が施してあり料理を盛っても使えます。
Sansai
大皿 京友禅尽くし – 彩
湯呑も人気です。カップ全面に模様を彫刻していることが非常に珍しいので、どこでも驚かれます。こだわりは、柄のつなぎ目が見えないように計算して彫刻していることです。
どういった柄が彫刻されていますか?
ひとつは疋田鹿子(ひったかのこ)、小鹿の背の斑点ような模様です。もうひとつは菊柄で、振袖には乱菊や丸い菊など色々な菊が描かれますが、湯呑に色々な菊を彫刻しています。ちなみに、新しい柄もいくつか開発中です。
京友禅の染め型を製作する工房として創業した「三彩工房」が手掛けるブランド「Sansai」。木製の食器やパネルに彫刻された繊細で美しい柄が印象的です。
こちらは木製の湯吞。表面全体に美しい菊が彫刻され、内側は木目を活かしたデザイン。軽くて滑りにくく割れにくいので安心です。
Sansai
【カップ】菊尽くし – 赤 | 摺り友禅彫刻師 | Sansai
自社ブランドスタートから4年目ですが、発展させるために意識していることは?
多くの人の意見を素直に聞くことです。自分の考えだけでは偏りますし、自分では気づかない観点の意見もあって、商品のレベルアップにつながっています。ただ、全部を取り入れると軸がぶれるので、取捨選択をするようにしています。
今後、力を入れようと考えていることはありますか?
3月にホテルの1室を使っての展示会があって、試しにインテリアパネルを製作して展示したところ、とても評判が良かったんです。
では、インテリアにも力を入れていく?
まず、京都の観光も復活してきて新しいホテルが建ち始めているので、その内装に採用してもらうのが目標です。
最近の観光は訪れた土地の文化を体験することにシフトされているので、ホテルに京友禅を感じるSansaiを置いてもらい、Sansaiを知ってもらいたいですね。
日本の伝統工芸について峪さんの考えをお伺いしたいのですが、まず日本の伝統工芸の魅力とは何でしょうか?
日本の工芸品全体に言えることは「繊細さ」だと思います。手作業でありながら精巧に作れる職人の技術力の高さが魅力です。
では、その魅力を残すために、今後どのようにすればいいと考えますか?
自分たちの仕事の成り立ちや歴史をしっかり理解した上で、現代に合わせたモノづくりをすることが大切だと思います。
未来のために、過去を知るということですか?
歴史を学ぶことで「自分たちの強み」を理解することができますから。
新たな取り組みも必要ですか?
はい。今生き残っている伝統工芸は、始まった当時から変わらないやり方か?というと違って、少しずつ変化して今の形になっています。うちも手彫りの型から始まり、ITを取り入れるなど変化しています。
変化する中で大切なことが、先程の「自分たちの強み」ですか?
そうです。私たちであれば彫刻で表現できる線の細さやぼかしの表現などが強みです。それは自分達が当たり前にやっていたことですが、他の業界からすると、それが真新しく感じられます。
特別なことをするのではなく、自分の強みを理解して、現代に合ったモノづくりに落とし込んでいく。それが日本の伝統工芸の生き残る道かと思います。
三彩工房さんが今後チャレンジしたいことは?
まず「働き方改革」です!私は前職がSEで、この世界に入って思ったのは「職人は安い賃金で休みなく働いている」ってことなんです。当たり前になってますが、私はすごく違和感を感じます。職人は基本的に個人事業主で、働くほど収入が増えるので多く働くというのもありますが。
他の業界を経験したからこその気づきですね。
沢山働くことは熱心でスゴイと思いますが、今の時代に合ってないかなと思います。伝統工芸では後継者不足の問題がありますが、業界に魅力を感じて入った人が、それで辞めるって多いんですよ。
弊社は職人も社員として雇用し土日祝は休みにしました。この業界では、今は珍しいですがスタンダードにしたいです。
そういった取り組みは、伝統工芸の今後のためにも必要そうですね。
もうひとつ、ITを活用してオリジナルの商品を製作する事業や、Webを通してお客様がデザインしたものを商品化する仕組みを構築したいです。
自分たちの世界観だけで商品を作るだけでなく、世界中の方がデザインしたものを商品化して発信する。そういった仕組みを作りたいです。
ITで世界と三彩工房の技術がつながっていくんですね!新たな事業も楽しみにしています!
今回の取材を通して、伝統や自分たちの「強み」を活かして発展しようと挑戦する、三彩工房さんのパワーを感じました。コロナ禍のピンチをチャンスに変え、その後いくつもの壁を乗り越える発想力や行動力には、とても感銘を受けました!
取材の最後で「チャレンジしないと変わらないので、長い年月を掛けてやっていこうと思います。」と笑顔で語った峪和久さん。未来に向かって挑戦していく姿勢に、三彩工房さんの今後がとても楽しみになりました!
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