本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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日本人のくらしを彩ってきた伝統工芸「染物」。今回は、染物に用いられる染めの技法や、伝統的工芸品に指定される染物の種類について解説していきます。また、染物がほしいという方向けに、伝統の技で作られるモダンな染物もご紹介するので、染物に興味がある方はぜひ最後までご覧になってくださいね!
「染物」とは、染料などで染めた布のこと。白生地を織り上げてから染め上げるもののことをいい、「後染め」とも呼びます。同じように衣類や小物に使われる布に「織物」がありますが、こちらは糸を先に染めてから織り上げたもの。染物とは染色のタイミングが異なり、こちらは「先染め」とも呼ばれます。
染色方法は、染料を溶かした液に生地を浸して染める方法や、染料で模様を描く方法などさまざま。歴史の流れの中で多様な染色方法が生み出され日本の人々のくらしを彩ってきました。
日本でいつから染物が作られはじめたのかははっきり分かっていませんが、一説によると縄文時代にはすでに染色が行なわれていたそう。しかし、このころはまだ植物や花などの色をそのままこすりつけて色を染めていたようです。
その後、飛鳥時代・奈良時代になって中国からより本格的な染物の技術が伝わったとされていますが、とくに技術発展がめざましかったとされるのが江戸時代。戦が少なく人々のくらしが豊かになったことで文化が栄え、非常に細かな美しい模様を表現する「友禅染め」などの技法が生み出されたほか、同じ柄を大量生産できる「型染め」も広まり、庶民も染物でおしゃれを楽しんだようです。
日本人の美へのこだわりが、染物の技術を発展させていったと言えるでしょう。
布を染める染料には「天然染料」と「化学染料」の2種類あります。日本では長く藍やベニバナなどの天然染料が使われてきましたが、明治時代ごろに海外から化学染料が輸入されるようになると、利便性から化学染料の使用が主流に。現在は伝統工芸の染物にも化学染料が使用されています。
天然染料とは、植物・動物・鉱物といった自然界からとれる色素を利用した染料のこと。やさしい色合いや、天然由来で安全性が高いことなど、化学染料にはない魅力があります。
日本の代表的な天然染料は、藍の葉からつくる藍染液。開国後日本を訪れた外国人が、たくさんの日本人が藍染の着物を着ていることに驚いて、藍を「ジャパンブルー」と呼んだという話も伝えられています。藍はブルーの色合いが美しいだけでなく、繊維を丈夫にする働きや抗菌作用などもあるとされる優れた天然染料です。
化学染料とは、石油などを原料に科学的に作り出された染料のこと。色の種類が豊富であることや、色を数値化して同じ色を再現しやすいこと、コストを抑えられることなどたくさんのメリットがあります。
近年は機械化が進み、カラフルな色柄の布が手軽に手に入るようになりましたが、歴史のなかで生み出されてきた優れた手染めの技は、今も伝統工芸として残されています。染物の技法にはたくさんの種類がありますが、いくつか代表的なものを紹介します。
染料を溶かした液体に生地を浸して染める技法を「浸染(しんぜん)」と言いますが、そのなかでも1色の染料で染めることを「無地染め」と言います。生地全体を染液に浸すため、繊維の中までしっかり染まって裏側まで色が付くのが特徴です。
染液に浸す方法のなかでも、布の一部を糸でくくったり、縫い縮めたりすることで染料が染みない部分を作り模様を出す染め方。複雑な模様を描き出すため、数々の手わざが生み出され受け継がれています。染めの際ににじみやぼかしができるなど、手描きや型で色付けしたものとは違う味わいが魅力です。
もち米や米ぬかなどで作った糊を円すい型の筒に入れ、糊を絞り出しながら模様を描いてから生地を染める染色方法。糊を水で落とすと白く抜けた美しい模様が浮かび上がります。
糊を使う染色法は世界中で見られますが、もち米とぬかを使うのは日本伝統の方法。筒描き以外にも型染めなどでも用いられます。
筆やはけを使って直接模様を描いて染める手法。色や絵柄を繊細に表現できるのが特徴です。絵を描くのに近いため職人さんの技量や個性が表れやすいほか、同じ人でもまったく同じに仕上げることは難しく、一点物に向く手法です。
なかには、「手描き友禅」のように糊を使って輪郭を描いてから中を塗る手法もあります。
模様を切り抜いた型紙を使って染める「型染め」。型紙を生地において、筆やはけを使って直接染料を刷り込んで染める方法のほか、型を使って糊をおいて染めない部分を作る方法などがあります。
型紙には、渋柿の汁を発酵させたものを染み込ませ強度を上げた「柿渋紙」などが使われますが、なかでも三重県で作られる「伊勢型紙」が有名です。
日本各地には、土地の風土を反映し、さまざまな染めの技法で作られた伝統的な染物がたくさんあります。国によって伝統的工芸品の指定を受けているだけでも13種類(2021年1月時点)もあります。
【国指定の伝統的工芸品 染物(2021年1月時点)】
東京染小紋(東京都)、東京手描友禅(東京都)、東京無地染(東京都)、加賀友禅(石川県)、有松・鳴海絞(愛知県)、名古屋友禅(愛知県)、名古屋黒紋付染(愛知県)、京鹿の子絞(京都府)、京友禅(京都府)、京小紋(京都府)、京黒紋付染(京都府)、琉球びんがた(沖縄県)、浪華本染め(大阪府)
伝統的工芸品のなかからいくつか代表的なものをご紹介します。
「京友禅」は、友禅の染色技法を用いて京都で作られる染物です。「手描き友禅」と「型友禅」という2種類の手法で、まるで絵画のような繊細なデザインが表現されます。
たくさんの色が使われるほか、刺繍や金銀泊も施され、鮮やかできらびやかなものが多い染物。また、職人が分業して一枚の作品を仕上げる場合が多いことも京友禅の特徴のひとつです。
江戸時代に京都から友禅染の技術が伝わって発展したとされる「東京手描き友禅」。江戸幕府によって派手な服装を禁じられていた町人のあいだで人気となったことから、自然のモチーフなどを落ち着いた色合いで描いたものが多いことが特徴です。
ひとりの職人がほぼすべての工程を担うことから、職人ごとの個性が表われやすいのも特色としてあげられます。
日本を代表する絞り染めの産地愛知県名古屋市の伝統工芸品「有松・鳴海絞」。江戸時代から職人たちによって生み出されてきた100種類以上の多彩な絞り染めの技法を使って作られる染物で、絞って染めることで生み出される濃淡が魅力です。
有松・鳴海絞には、図案を決めて小刀などで模様をくり抜き型紙を作る「型紙ほり」や、下絵に合わせて生地を糸でくくりつける「くくり」、くくった生地を染める「染色」などの工程がありますが、それぞれ専門の職人が分業で作り上げます。
藍を使って染めたものが有名ですが、今は化学染料も使われ、赤・オレンジ・緑などさまざまな色合いの製品が作られています。
沖縄県那覇市周辺で作られる伝統工芸品の染物「琉球びんがた」。アジア諸国の染色技術や模様からの影響も色濃く、花や動物を描いた色鮮やかな模様が特徴です。図案を決めるところから仕上げまで18以上の工程がありますが、ひとつの工房で全行程行なわれ、道具も職人が自分たちで作ります。
琉球びんがたには、色合いのちがう2種類があります。「紅型(びんがた)」は、鮮やかな色合いで花や鳥などを描いたもの。晴れ着などによく用いられます。「藍型(えーがた)」は、沖縄でとれる藍で染めたもので、生地本来の白と複数の濃さの藍で模様を描きます。涼しげな印象で、夏の着物に多く使われます。
染物というと着物や帯をイメージする方が多いかもしれません。素晴らしい染めの技を体感できる伝統工芸の染物のなかには、モダンなファッションアイテムや小物など、着物などにくらべ気軽に手に取れるものもあります。日本の伝統工芸品を中心に扱う通販サイトBECOS(ベコス)では染物も多数扱っていますが、なかでもモダンな染物のおすすめ商品をご紹介します。
こちらは絞り染めの技法で染められたストール。模様を描いたものなどとはひと違う味わい深いデザインで、おしゃれのポイントになりますよ。
インディゴ気仙沼
天然インディゴで手染めしたストール (絞り)
着物生地から仕立てられたカードケース。京友禅の上品な美しさを毎日持ち歩けるのがうれしいですね。パッと目を引く印象的なデザインで、周囲からもきっと注目を浴びますよ。
Morphoshere/モルフォスフィア
シルク帯地カードケース
筒描きの製品で多いのは大漁旗ですが、こちらはエコバッグ。牡丹の柄のほかに、遊び心のある鯛のデザインなどもありますよ。日本伝統の技で毎日のくらしを彩ってみてはいかがでしょうか。
松田染物店
エコバッグ 牡丹
日本人の美意識によって発展し、文化を支えてきた染物。多様なデザインがあふれる現代においても、色あせない魅力で私たちをひきつけます。手軽に手にとれるモダンな伝統工芸の染物も作られているので、ぜひ日本伝統の染物をくらしのアクセントに取り入れてみてくださいね。
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