本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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国内有数の靴下専門企業として、常に魅力的な製品を日本全国また世界に発信しているタビオ株式会社。
おしゃれに興味のない人でも、「靴下屋」「Tabio」の名前は耳にしたことがありますよね!
かつては脇役的存在だった靴下の価値を上げ、ファッションやスポーツ、また日常のシーンで、自分のライフスタイルに合わせて選ぶ大切なアイテムとして昇格させたタビオ株式会社の二代目社長・越智勝寛さんに、「タビオ」のものづくりと、伝統産業が未来に続いていくためのヒントを伺いました。
越智勝寛
タビオ株式会社代表取締役社長。1997(平成9年)3月株式会社ダン(現タビオ株式会社)入社、2008(同20年)5月代表取締役社長就任。「靴下業界の良心たれ」という創業者の熱い想いを胸に、ひたすら「お客様の足にやさしい靴下」を追求。高品質でファッション性にあふれた靴下を適正な価格で提供するため、顧客のニーズに敏感に対応できる生産・流通体制を構築。また、独自の高い品質基準を設け、検査及び品質管理を行い、品質向上を目指す。現在、「靴下屋」「Tabio」「Tabio MEN」等の靴下専門店ブランドを日本全国に249店舗(2022年2月末時点)展開。イギリス(ロンドン)、フランス(パリ)、中国でも「Tabio」を展開。高度な技術力に裏打ちされたMade in Japanのものづくりで、顧客に満足を提供し続ける。
「タビオ」さんは「靴下屋」や「TABIO SPORTS」を始め、多くのブランドを展開され、実にバリエーション豊かな靴下を企画・開発されていますね。その中に共通する、「タビオ」のものづくりの核となるものは何ですか?
うちのものづくりは単純です。「はきごこち」は一定に、ということに尽きます。
最高のはきごこちを実現するために、品質は常に妥協しない、ということですね。
そうです。売り方や、靴下の色・デザインなどは、時代に合わせて自由にしたらいいと思っています。うちの会社の仕事は、日本の靴下業、靴下を製造する工場を守ることで、そのためには売り方に固執する意味はないと思います。
靴下自体のクオリティーを最高に保つことが、「タビオ」の靴下のあかし、ということですね。
はい。「検査に落ちるものはすべてだめ」という、明確にわかりやすい方針です。
品質へのこだわりは、父である前会長(創業者の越智直正氏)のこだわりでした。前会長が守ろうとしていたものをこれからも受け継いでいけるように、今、検査室を強化し、検査機器が老朽化していないか、最新のものがあれば新しくしようかなど、見直しをしています。
それから将来的には自社だけではなく、検査装置を持っていない同業者の品質検査も行うことができるようにしたいと考えています。有料にはなりますが、ほかで検査を行うより安くできるようにしたいです。
品質検査を外注に出すと高いのですか?
とても高いです。1検査3万円くらいします。規模の小さい製造業者には、負担が大きいと思います。
検査装置を自社で持っていらっしゃるのもすごいですが、同業者の方の利益にもなるように、と考えられているところが素晴らしいと思います!
海外産の安い靴下が出回る中で、製造拠点を海外に移した会社も多いと思いますが、「タビオ」さんはMade In Japanで製造されていますよね。
これまで日本は、中国でつくったものを日本で買うだけ、というようなことを延々続けてきました。それではお金が入り、発展するのは中国です。
僕は、産業と商業はいっしょにならなければだめだと思っています。「タビオ」では生産の拠点を、古くから靴下づくりが盛んな奈良の広陵町に置いていますが、いいものをつくる工場が多く、それらと協業して僕らは製品の企画や販売を行っています。
製造と販売が、密な関係を持っているのですね。
僕は、工場やニッターさんにも、「ツイッターやインスタを見てくださいね」と言っています。
「なんで?」と聞かれるので、「御社の商品がバズっているときがありますよ」と説明します。ネットを見られる人が見て、バズっているのを社内で伝えれば、今までコンピュータなどで得ていた情報が瞬時にわかりますよ、と。
売れているものがダイレクトにわかりますものね。
いつまでも受注生産の時代ではありません。SNSでバズったものが売れる時代です。
SNSの動向に敏感になり、情報をキャッチして、即対応することが求められるのですね。
そういうものに対応するには、逆に小さいニッターさんの方が動きがいい、というのがあります。情報の伝達や対応が素早くできます。
海外で生産していたのでは無理です。製品ができあがるころには、売れ筋が変わっているでしょう。だから、国内生産を使って臨機応変に対応するようにしています。
靴下もほぼ100年の歴史を持つ伝統産業ですが、日本の伝統産業が未来に続いていくためには、何が大切だと思いますか?
伝統産業といっても、プロダクトアウトの思考で、「時代が変わっても、これまでつくってきたものを守ればいいんだ」と保守に回っていてはいけないと思います。これからは、リサーチする、プロモーション活動をして認知してもらう、などの努力が必須だと思います。
「うちでつくった靴下が嫌いなお客さんもあって当然」というのでは、企業としては難しいでしょう。お客様がどんなものを求めているかを知り、また良い製品をつくるだけではなく、つくった製品の良さをお客様に知らしめることが、これからは必須であると思っています。そしてこれは、売る側の使命だと思います。
良いものをつくるだけでは、難しいのですね。
ひとつの例として、以前には絶対なかったのが、「男性用化粧品コーナー」でしょう。今では、ドラッグストアに行こうが、ホームセンターに行こうが、必ず男性化粧品のコーナーがある。
確かに、今はかなりのスペースで男性用化粧品が置いてありますね。
かつては、まったく想像できませんでした。絶対失敗するだろうと。これも恐らく、男性化粧品を製造する側ではなく、売る側がリサーチなどを行った成果だと思います。
なるほど。ただ、伝統工芸など、個人や小さな規模でやっていらっしゃるところは、製造と販売の役割を分けるのが難しいでしょうね。
確かに、職人さんだけでやっているような会社は、製造以外の部分が難しいと思います。その場合は売る側からの視点、マーケットインをどのようにして取り入れるかが課題になるでしょう。
自社ですべてを行うのが難しい小規模な企業のためには、マーケットインとプロダクトアウトに挟まれるもの、中間でするような組織が何か必要になるのでは、と思います。
そのほかに、伝統産業が続いていくために必要なことは何だと思われますか?
メガネ、カバンはMade In Japanで成功している例だと思います。
鯖江のメガネは、高くてもMade In Japanでかっこいい、と皆買いますよね。あれはJINS(ジンズ)というのが出てきて、伊達メガネなども普通にかけられるようになったり、メガネもファッションに合わせていくつか持っているなど、日本でメガネ文化やメガネの市場ができ上がった上でのことなんです。
ただ、Made In Japanはいいよ、と言って売れたわけではないのですね。
カバンで言えば、1990年ごろのバブル期に乗っかって、男性が皆、ルイヴィトンのセカンドバックを持ち出しました。その後はポーターのカバンをたすき掛けにしたり、会社に行くときはトゥミとかサムソナイトのカバンを持つようになりました。
今だったら、オロビアンコとか、皆がそれぞれ、自分のライフスタイルに合わせて好きなブランドのカバンを持つようになりました。そういう風にカバン文化ができた土壌で、Made In Japanのカバンも成功していったわけです。
まず「自分らしいライフスタイルに欠かせないもの」という土壌ができた上での成功だったのですね!
伝統産業を継続させるには、後継者を育てることが大切だと思いますが、その辺はどう思われますか?
靴下業界でも、職人の高齢化が進んでいます。たとえば、あるニッターさんで職人さんが退職されたとき、「70歳前後の若手職人さんを紹介して」と頼まれたことがあります。
70歳で若手?それはすごいですね。
そういう状況を、問題視すべきだと思います。後継者不足が問題になっているのなら、解決するためには行動するしかありません。
人を育てるのも、職人の大事な仕事です。「若い子はすぐ辞めるから」ではなく、今の時代の若い子でも教えられるようなメソッドをつくるべきだと思います。
具体的には、どういうことが必要でしょうか?
対話などを大事にするのが大切だと思います。職人さんにとって、コーチング能力、伝え方というのはものすごく重要です。だから、指導する立場にある職人さんは一度、コーチングの講座を受けたらいいのでは、と思います。
コーチングですか!ビジネスマンが受けるイメージですが、職人さんにもお勧めなのですね。
人に無視されたり、力のある人が口をきいてくれないのがどんなにつらいか、自分で体験することができ、また、上手に伝えることがいかに大切かも身をもって感じることができます。
具体的にどんなことをするのですか?
僕の受けた集中講座では、一日目は、8時間の間、反論せずにひたすら相手の話を聞く、というのが課題でした。若い子の話を聞いてただ肯定し続ける。もう、体がボロボロになります。会社の社長といった参加者たちも、一日目は皆トイレで泣きますね(笑)。
二日目は、15分だけしゃべっていいのですが、自分の話に対して「あれがだめ、これがだめ、意味がわからなかった、こっちを見てくれる回数が少なかった」など、厳しいダメ出しを受け、落ち込みます。次は30分与えられるのですが、だんだんしゃべるのが怖くなってきます。
厳しいですね…。
それで講師の方はというと、30分で非常にわかりやすく話をされるんですよね。「なんでコーチは話がうまいのか。自分はうまくないのか」と思って、ふと初日に話を聞くのがしんどかったのを思い出すんです。そうやって、3日目になると、少しわかってくる。そんな集中講座が半年にわたって続き、毎回初日は8~10時間聞かされるんです。
人間改造みたいですね…。
わざわざ話の下手な子を選んで連れてきたの?くらい聞かされる話がひどくて、「あのなー、僕なー、おなか痛かったからな、正露丸飲んでん」「あーおなかが痛かったんですね」みたいなのを延々8時間(笑)。
でも実はリサーチされていて、話している子たちは受講者の話し方を真似ているんです。演技をしている。それで6回のうちに、「これ、俺やん」って気づくんです。
なるほど!
それで、コーチングの意味、つまり「人の話聞くことがコーチ」というのを体感できるんです。「俺聞いてなかったわ」「自分が聞いてなかったから、誰も聞いてくれなかったんや」それがわかるまでの間は、すごくつらいですね。
でも、「人の話を聞く」「相手に伝わる話し方をする」というのが体得でき、指導する立場にいる人、後継者を育てる職人さんにも、コーチングを学ぶと非常に役に立ちそうですね!
最後に、これからの「タビオ」の挑戦について教えてください。
これからは、メンズの靴下にもっと力を入れていきたいと思っています。メンズに関しては、これまできちんとアピールしてこなかったので、「男性は靴下にこだわらなくていい」となってしまったと思います。
男性の方が、こだわりがある人が多そうなので、多少高いものでも売れるのではないですか?
男性の方がこだわりが強いのは確かです。男性の場合、靴下を引き出しいっぱい持っていても、毎朝「靴下がない」と探している。つまり、自分にとって「はきごこち」のいい、特定の5、6足をえんえん履き続けるんです。
「はきごこち」にこだわりがあるのですね。
女性はファッションに合わせて、多少はきづらくても、外反母趾になってもはきますが、男性はそういうのは絶対はきません。
うちの場合、メンズとレディースの製造工場が別なので、メンズ工場にも貢献できるように、メンズ靴下の価値をもっと上げていければと思っています。
日本で生産することには、これからもこだわるのですか?
日本人には、日本でつくられたMade In Japanの靴下をはいて欲しいと思います。
でも、海外に展開する場合は、中国の人には中国の工場で、アメリカ人にはアメリカの工場で生産するという風に、それぞれの国で生産するのが一番だと思います。それで、品質やデザインは「タビオ」で管理する、という形で。
Made In Japanだけにとらわれないのですね。
「タビオ」は日本の企業ですが、それぞれの地域・国での靴下業の永続を考えるのが、本来の商売、王道だと思います。日本でならば奈良の靴下業、中国でやるなら中国の靴下業が発展、継続していけることを目標にしています。
素晴らしいお考えだと思います!
未来に、日本製のものがなくなっている可能性もありますが、靴下に関しては、「タビオ」がいる限り、日本製のものを永続させるつもりです。
海外に関しても、中国などでも1億の方にはいてもらって、「『タビオ』はいいね、しかもMade In Chinaだし」と、その国の誇りを持ってもらえるようなものづくりをしてもらい、それを管理するのが「タビオ」、という風に将来を見据えています。
世界中を舞台に、これからを考えられているのですね。
世界へ進出して、世界中の人に「タビオ」の名前を知ってもらいたいと思います。
理想は、ファスナーのYKKさんのように、靴下で世界の品質基準、世界のナンバー1になることです。何気なく使っている上着とかカバンとか、皆YKKでしょう?品質のいいものはYKK。たまにおかしいな、と思ったらYKKじゃない。
確かに、日本で「ファスナーが開かない」ということ、ないですものね。
同じことを、靴下で実現したい。「タビオ」がプロデュースしているものは「That’s 靴下」、世界一の高品質、というのを、レディースだけでなくメンズに関しても、スポーツに関しても目指したいと思います。
「はきごこち」が良く愛用している靴下を見たら、「タビオ」の靴下だった、ということですね!
量ではなく品質で、世界の人に認識してもらいたい。世界の名品図鑑や、名品をつくる名企業として「タビオ」が選ばれるように、これからも頑張っていきたいと思います。
バリエーション豊かで魅力的な商品を生み出し続けている「タビオ」のものづくりの核には、「はきごこち」と高品質へのこだわり、また、生産と販売の両方を大切にしつつ、顧客が望むものをスピーディに把握して製造するための努力があることを実感しました。
変化が速く、人々の趣向も幅広くなった世の中で、伝統産業が時代とともにこの先どのように発展していくかのヒントも、たくさん伺えたと思います。
興味深いお話を、誠にありがとうございました!
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