本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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国指定の伝統的工芸品が7品目もある、モノづくりが盛んな福井県。
今回はめがねのまち・鯖江を中心に、先人から受け継いだ伝統と技術を継承しつつ、現代のニーズにあったモノづくりやイベントの企画・情報発信を行っている合同会社TAKUMIICHIの代表・熊本雄馬さんに、伝統工芸を通じた地方創生や、伝統工芸が未来につながっていくためのヒントを伺います。
メガネのモチーフを探すのが楽しい鯖江の「メガネストリート」は、熊本さんを含めたメガネーランド実行委員会の発案なんです!
合同会社TAKUMIICHI代表。2011年にセメントプロデュースデザインとメガネ材料と技術を使った「鯖江ミミカキ」を共同開発し、2013年にグッドデザイン賞受賞。2014年に福井7つの国指定伝統的工芸品の若手職人グループ「福井7人の工芸サムライ」発起。「ガイアの夜明け」、新聞、ラジオ、雑誌など各メディアで活動が取り上げられる。2016年におとな版鯖江市地域活性化プランコンテストで「メガネーランド構想」が観客投票1位を受賞。2017年に「メガネーランド構想」より鯖江のお土産「アメガネ」を開発販売し「メガネストリート」を鯖江市と共同設置する。2018年から独立し、メンバーズエッジ「さとやまオフィス、東京オフィス」に福井の伝統工芸の技術を使った家具、インテリアを納入。近年は伝統工芸の技術を使ってホテル、古いビルのリノベーションや、ふるさと納税やネット販売に関わる。その他にIT分野で売上の柱を形成している。
中谷:
鯖江というと「メガネ」のイメージが強いですが、他にもモノづくりが盛んで、若い方も活躍していらっしゃるという印象があります。実際はどのような感じですか?
熊本さん:
僕がメガネ材料商社で勤務していた頃、鯖江市は県外から若者を呼ぶ企画に力をいれ市の活性化を推進していました。鯖江市民の中にも、「町を活性化させたい」という想いを持ったプレーヤーや団体が存在し両者がかみ合って活性化が促進されました。
中谷:
どうしてメガネ業界に入られたのですか?
熊本さん:
メガネが好きだったとか、モノづくりが好きではありませんでした。むしろ不器用な部類です(笑)。偶然、妻の実家がメガネ材料を扱う会社経営をしており、欠員が出たのでお誘いを受けて働くことになりました。
中谷:
本当に偶然だったんですね!でもそうやって来られた熊本さんの「メガネーランド構想」で、鯖江の街中が「めがねのまち」らしくなったとか…。
メガネ-ランド構想
鯖江市で毎年行われている学生中心の「鯖江市地域活性化プランコンテスト」の「おとな版」で2016年に観客投票1位を受賞したプラン。鯖江のお土産「アメガネ」の開発や鯖江市と共同設置した「メガネストリート」を実現。
熊本さん:
鯖江はメガネ産業が盛んな街ということは知られているのに、県外からお客さんが来られたときに鯖江の街を車で走ると、メガネを彷彿させる風景がなく「ここは、本当にメガネの町ですか?」と言われることが多かったんです。
だから、「県外の人達にも一目でわかる、アイコンになるようなものがあればいいな」と思い、鳥取境港の「水木しげるロード」や、兵庫県豊岡の「カバンストリート」、岡山児島の「ジーンズストリート」などを参考に、「メガネストリート」を考案しました。
当時インスタが流行り始めていたので、鯖江に訪れた方たちが写真を拡散して、全国に「めがねのまちさばえ」をシェアしてもらうことを狙いました。
また、鯖江市にめがねをイメージする統一ロゴがなかったので「めがねのまちさばえ」の赤いロゴもメガネーランド実行委員会が関わり、鯖江市に贈呈させていただきました。
メガネストリート
JR鯖江駅からめがねミュージアムまでの約900mの道と、JR鯖江駅からサンドーム福井までの約1,500mの道。歩道のいたるところに眼鏡を感じられる仕掛けが施されている。
中谷:
きっかけとなった「おとな版鯖江市地域活性化プランコンテスト」は、鯖江市が主催されたものだったのですか?
熊本さん:
いえ、前述の市民中心の「鯖江市地域活性化プランコンテスト」を企画した民間主導コンテストでした。プランだけで終わる可能性もあったのですが、鯖江市のクラウドファンドなどの協力のおかげで「メガネーランド構想」のひとつである「メガネストリート」が実現できました。
鯖江市が「めがねのまちさばえ」として鯖江をアピールし、僕たちも鯖江のランドマークをつくりたいと思っていて、両者の思惑が合致しました。
中谷:
メガネーランド構想のお土産として開発された、「アメガネ」もかわいいですよね。
熊本さん:
鯖江の高校出身の飴屋さんがつくっているアイテムです。飴は球体は比較的簡単に作ることができますが、メガネの形とメガネの穴を開けるのは難しく、一度に大量生産はできないんですよ。
「アメガネ」の企画が持ち上がったとき、飴屋さんを説得するのは大変でした。売れるか売れないかわからない、リスクがあるものは職人さんはやりたがらないからです。人気商品になって良かったです(笑)。
「アメガネ」はどこで買えるのですか?
「メガネミュージアム」で買えると思いますが、在庫切れが多いので事前に確認が必要です。
中谷:
偶然に入られたメガネ業界ですが、その後、伝統産業であるメガネ業界の新しい可能性を開くヒット作となった、「鯖江ミミカキ」の開発にいたるまでの経緯を教えてください。
熊本さん:
2008年のリーマンショックでは、私が勤務していた眼鏡材料商社では受注キャンセルが相次ぎ仕事が半年ほど止まりました。メガネ業界もその影響は大きくありました。
そこでメガネの若手経営者達が集まり「自分たちでものをつくって自分たちで売ろう」という動きが生まれ、「鯖江”ギフト組”」が発足しました。
鯖江”ギフト組”
2009年に発足。様々なメガネ業界に所属する会社が集まり、メガネ造りの技術を生かして、アクセサリーやギフトなど異分野での商品開発を行う。現在は鯖江の伝統的ものづくりである漆器と繊維を加え、伝統的技術と先端技術の融合により、さらに進化した新しいアイテムを創出している。
熊本さん:
「鯖江”ギフト組”」では、さまざまなアイディアからヒット商品が開発されました。
中谷:
「メガネの材料と技術で自分たちで開発し自分たちで売っていこう」という動きが始まったのですね。
熊本さん:
そうなんです。それまではメガネの仕事だけで経営はできていました。しかし、リーマンショックを受けて「このままで行くと、メガネ業界とともに我々も共倒れするよ」とメガネ業界関係者が思うようになりました。
中谷:
頭を切り替えなければいけなかったんでしょうね。
熊本さん:
もちろん、反対勢力もあったと聞いています。「メガネ製造関係者は、メガネ製造だけに集中すればいい」とか。でも、今までの既成概念を壊すくらいでなければいけなかったんだと思います、当時は。
私が勤務していた会社では、眼鏡材料としてカラフルなイタリア製の材料を扱っていたので、「アクセサリーがつくれるのではないか」と現社長が考えました。それが0から1になった瞬間だと思います。
一番最初に開発したカラフルな多層の指輪は、主力商品としてロングセラーとなっています。
とても色がきれいで、大理石のようですね!
この綿花由来のイタリア製の材料も手づくりで、寄木細工のように層を組み合わせて、さまざまな模様を表現しています。
中谷:
その後は、どうなったのですか?
熊本さん:
転機になったのは、2013年の東京ビッグサイトで開催されたギフト・ショーでした。ギフトショーに出展した私たちにビジネスマッチングという出展者オプションがあって、出展者がバイヤーや百貨店、小売店などのマッチングリストから5社選べるというものでした。
そのときに私が選んだ5社のうちの1社にセメントプロデュースデザイン(以下セメント)さんがありました。
ギフト・ショー(東京インターナショナル・ギフト・ショー)
日本最大規模のパーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市。年2回、春と秋に開催。展示ブースでの販売はなく、ショップ、百貨店、専門店、商社、卸売業者などのバイヤーが出展者との商談を目的に来場する。
中谷:
マッチングというのは、選んだ5社とそれぞれ面談できる、というシステムだったのですか?
熊本さん:
いえ、バイヤーや百貨店サイドも面談希望者と面談するか選択権があって、5社オファーをした中で面談OKをくれたのが、セメントさん1社だけだったんです(笑)。でもそれが、僕の人生を変えた運命の出会いになりました。
中谷:
セメントプロデュースデザインさん、すごいですよね!工芸の分野で、よくお名前を耳にします。
有限会社セメントプロデュースデザイン
1999年設立。代表取締役社長・金谷勉(かなやつとむ)。大阪を主な拠点とし、商品開発から販売まで総合的なプロデュースを行う。2011年に日本各地の町工場や職人との協業プロジェクト「みんなの地域産業協業活動」を開始、工場や職人たちの情報連携を推進。職人達の技術を伝える場として自社店舗「コトモノミチ at TOKYO」を東京墨田区に、大阪本社に「コトモノミチ at パークサイドストア」を展開。各種活動はテレビ番組『カンブリア宮殿』や『ガイアの夜明け』などで紹介される。見た目だけではなく、背景や本質を重視したものづくりに取り組む。
熊本さん:
はい、全国で活躍をされていますよね。今でも金谷社長と三嶋取締役と交流があるのですが、セメントさんにとっても「鯖江ミミカキ」が始まりだった、とおっしゃってくれています。
中谷:
そのときに「耳かき」のお話になったのですか?
熊本さん:
いえ、耳かきはまだまだ先の話です。当時アクセサリーの販売営業が伸び悩んでいたので、僕も必死でした。指輪からブレスレットなど自社サンプルを身に着けて、「こんな商品があります!」「こんな材料があるので、何かできないでしょうか!」と金谷社長に一生懸命アピールしました(笑)。
会場での面談時間は20分だけだったのですが、「なるほど、こんな材料があるんだ」「うちのスタッフにメガネをかけている人は多い」などと、金谷社長は話してくれました。
中谷:
そうやってセメントプロデュースさんと初対面をされたあと、どうやって「耳かき」にたどりついたのですか?
熊本さん:
20分の面談だけでは、その場で終わるケースが多いのですが、僕はしつこいので(笑)、そのあと「大阪出張で大阪行くので、お時間あるなら会えませんか」と連絡しました。すると「夜の20時ならいいよ」とおっしゃったので、大阪出張の際に、また指輪やブレスレットなどジャラジャラ身に着けてお邪魔しました(笑)。
金谷社長にお会いするとセメント社員さんたちに私を紹介してくれました。それで私はその場で即興プレゼンテーションをしました。
1~2ヵ月後に金谷社長から電話があり、「熊本さん、東京に来ることありますか?」と言われたので、「行けます!」と即答して、東京出張を計画し、セメント東京オフィスに向かいました。「こんなアイディアが出てきました」とデザイン集を見せていただきました。10ぐらいの案があったんですが、一番上に「耳かき」があったので、「これは金谷社長の推しだな」と思いました。
耳かきのデザインを見たときに、「材料を無駄なく使える」「メガネの技術で作れる」と瞬時に思い「ぜひ商品化したいです!」とその場で即答しました。会社に相談もせず(笑)。
中谷:
その熱意が伝わったからこそ、セメントさんも応えてくださったのでしょうね。
熊本さん:
セメントの金谷社長も、「熱意のある人には応えたい」とおっしゃってくださって。僕のしつこさが(笑)、金谷社長の心に届いたのかな、と自分で勝手に思っています。
それから「耳かき」の案を会社に持ち帰り、会社に報告しました。商品開発の了承を得てから半年で商品化にこぎつけました。この記録はセメントさんの中でもいまだに破られていない最速記録だそうです。我ながらよく頑張ったと思います(笑)。
中谷:
すごいですね!やはり、熱意がエンジンになったからですね。ちなみに、「鯖江ミミカキ」のこだわり点はどういうところですか?
熊本さん:
メガネ業界の技術を使い、メガネ業界でしかできないモノをつくりたい、と思いました。
プラメガネのテンプル部分、つまり耳にかけるツルには、骨の役割のために金属の芯が内部に内臓されています。その金属をプラスチックに内蔵するというのが、実は鯖江でしかできない技術なんです。
これはシューティングと言われるプラスチックのテンプルに真っすぐな穴を開ける技術で、まっすぐに開けた穴に耳かきの「かき」の部分を挿入し「鯖江ミミカキ」が完成しました。全てメガネ業界で使われる材料、技術のみでつくられています。
中谷:
そのメガネ独自の技術でつくられた「耳かき」がヒットして、2013年にはグッドデザイン賞も受賞、新しい発想のものづくりとして注目されるようになったのですね!
熊本さん:
そうですね。今でこそ日本のモノづくりから新商品をつくろう、という動きがありますが、当時、2010年代の初めはまだ珍しかったと思います。また東北の震災が発生した頃で、日本のものを買って日本を応援しようという動きも後押しされることになりました。
それから、セメントさんが関わっているギフトショーで「鯖江ミミカキ」を新商品発表の場にしていただきました。多くの小売店や百貨店から受注が相次ぎ、急遽「5000本製造してください」と注文がありました。その後も安定して大量注文が続き、製造部隊はフル稼働しました。また日経デザインの表紙を飾るなどメディア戦略も行っていただきました。
中谷:
「耳かき」のヒット後、セメントプロデュースデザインさんとは別の商品も開発されたのですか?
熊本さん:
はい、大阪出張の際にはセメントさんを都度訪問し「こんなんできたらいいなあ」と金谷社長がぽろっと口にされるアイディアを「それいいですね!やりましょうよ!」と(笑)。それで次に開発されたのが「鯖江靴べら」です。馬、ライオン、うさぎ、鷲、メガネの5種類のデザインでつくりました。その後「鯖江つめきり」「アメガネ」「鯖江のピンズ」が生まれました。
中谷:
その後、2014年に「福井7人の工芸サムライ」を結成されましたよね。どういう経緯で始められたのですか?
熊本さん:
「鯖江ミミカキ」で、売上にも貢献できモノづくりの成功体験を得ました。
<あるとき母校の南部教授と話をする機会があり、「私は鯖江でモノづくりをしていますが、福井全体ではどうなんでしょうか」と尋ねると「福井には七つの国指定伝統的工芸品があるんだよ」「職人や産地が盛り上がっていけば、福井県全体の経済が良くなるんじゃないかな」と教授がおっしゃって。
そこから、「メガネ業界で得たものづくりの経験と知識を活用し、福井県にある産地の枠を取って一緒に活動したい」という気持ちが湧いてきました。ちょうど産地が7つあり縁起がいいなと。大量消費、大量生産に抗う姿が幕末のサムライにならい「福井7人の工芸サムライ」のネーミングを職人たちと考えました。
福井県の国指定の7つの伝統的工芸品
越前漆器、越前和紙、若狭めのう細工 、若狭塗、 越前打刃物、越前焼、越前箪笥
中谷:
それから、各工芸から一人ずつ、職人の方を探されたのですか?
熊本さん:
5人は既に異業種交流会や取引先で知り合いだったので、越前打刃物と若狭塗の2人を新たに誘いました。
中谷:
メンバーの土直漆器さんの商品の中に漆のタンブラーやアンブレラボトルがあります。かっこいいですよね!漆がきれいで、伝統模様だけれど、とてもモダンな印象もあって。
熊本さん:
鯖江市が運営する「ふるさと納税」に当初から関わらせていただいてますが、鯖江市がふるさと納税用の商品を探していたので土直さんに声をかけて商品提供していただきました。
今はSDGsの流れで、マイタンブラー、マイ水筒を持参する人が増え、人気商品になっています。贈答用にも使っていただき時代の流れとマッチしたのかなと思います。
中谷:
「福井7人の工芸サムライ」はどういう形で活動されているのですか?
熊本さん:
コロナ禍で活動できない時期はあったのですが、今も活動しています。SNS、HPからの問合せがあったときは、「工芸サムライ」のメンバーの中で対応できる職人に対応してもらっています。
イベント出展やオリジナル商品をつくってほしいという問合せが多く、それに対応するという活動を主にしています。メンバーとは秘湯での研修旅行や、定期的に意見交換会を開きサークルのような活動もしています。
中谷:
ここまで、伝統の産業や工芸の技術やノウハウを生かし、新しいモノづくりをされたお話を伺ってきましたが、実際に取り組まれて、うまくいった点や難しかった点はどこでしたか?
熊本さん:
モノづくりではモノを「売る」ことが一番難しいと感じました。
専門家やデザイナーさんとタッグを組んで新商品を開発し、百貨店の催事や展示会などで商流に乗せる努力をしてきました。でも結論から言うと、なかなか思うように売上が伸びないことが多々ありました。
消費者であるお客様に意見を聞いてみると「いいものだというのは、わかるんだよ」と。しかし、購買意欲を掻き立てるまでには至らない。「モノはいいけれど、高すぎる」「美しいけれど、実用性がない」という意見もあり厳しい現実を突きつけられました。モノを買うという行動には様々な要因が必要であり、難易度が高いと実感しました。
中谷:
「ただ販売営業するだけでは難しい」ということがわかってから、どのように方針転換されたのですか?
熊本さん:
ジャンルの違う業界で活躍する方とコラボを行いました。
キッチンアイテム「TSUBOMI」というブランドに参画した時は、東急ハンズの共通の知り合いにディレクションしていただき、福井県出身のフランス料理のシェフ、秋元さくらさん(レストラン「モルソー」)とコラボ商品をつくりました。多方から注目を浴び売上も伸び好感触でした。秋元さんにとっても自分のブランドが持てたということで満足されていました。
熊本さん:
世の中の流れから「モノ」より「コト」にシフトしていきました。ワークショップをしたりとか、イベントに呼ばれたりとか。
中谷:
イベントとは例えばどういうものですか?
熊本さん:
体験イベントですね。子供の弟子入り体験として越前焼のろくろや絵付け体験、越前和紙の紙漉き体験、越前箪笥の技術を活かした時計づくりなど。大人向けに伝統工芸士が教える包丁研ぎも行いました。常に満席で高評価をいただきます。
あとは展示/strong>です。「福井県のPRをしたいので、伝統工芸の部分を担当してください」などの依頼があれば協力してきました。
このような活動は新聞やテレビなどのメディアに注目されることがあります。メディアに取り上げられると知名度が上がるので、知名度を上げて本業を忙しくさせよう、という方向にシフトしていきました。
中谷:
本業とはどういうことですか?
熊本さん:
職人さん本来の伝統工芸をつくり販売する仕事です。箪笥職人と言えば誰々とか、和紙職人と言えば誰々とか、知名度が上がり、知ってもらうことで注文や問い合わせが増えました。
その経験から「単純にモノを売る」という活動に加え「知名度を上げ本業を忙しくさせる」という方向にシフトしていきました。
職人さんの中には、問い合わせが3倍に増えたりとか、注文が1.5倍になったと方もいました。
中谷:
やはり、知名度を上げるのは重要なのですね。
熊本さん:
例えば値段が同じ2つのペットボトルのお茶があるとしたら、聞いたことのない名前のお茶と、CMなどで知っているお茶があれば知っている方を選ぶでしょう?知っているブランドだと、なんとなく安心しますよね。それと同じで、職人さんの場合でも聞いたことがない職人さんより、どこかで見た職人さんの方が頼みやすいことはあります。
伝統工芸士なので技術はあります。だから知名度を上げて、いかに知ってもらうかを心がけるようになりました。知ってもらって、興味を持ってもらうことから始まると思います。
どんなに良いものをつくっても、まず気が付いてもらえないと始まらないですよね。
発足当初は福井県に7つの国指定伝統的工芸品があることを知らない方々が多くいましたが、近年では浸透してきて、様々な企画に職人たちが絡んでいるのをみると、これまでの活動は無駄ではなかったと思います。
中谷:
伝統産業と地方創生の関係は、最近はツーリズムなども絡めて考えられることも多くなっていますが、これからどうなっていくと思われますか?
熊本さん:
当初から職人さんたちと話していたのが、「工場に来て体験してもらう」というのを観光資源にしたいね、ということでした。
お客様は気に入って買った商品は「どこでつくっているのかな」とか「どういう風につくられているのかな」など、興味を持ってもらえます。実際に工場に来てもらって、体験してもらうようなビジネスができたらいいね、という話をしていました。
中谷:
工場見学や体験は、最近全国でも多くなってきていますね。
熊本さん:
ありがたいことに新潟の「工場の祭典」を始め、福井県丹南地区中心に「RENEW」という、全国的に見てもかなり大きなイベントが行われるようになりました。我々単体では限界があるので、このようなイベントと一緒に波に乗っていけたらと思っています。
工場の祭典
金属加工を中心にものづくりで有名な、新潟県三条市、燕市とその周辺で2013年より行われている工場見学イベント。時代の変化による需要の減少や後継者不足などの問題を改善するため考案されたもので、現地の工場が開放され、製造現場を体感することができる。
RENEW(リニュー)
ものづくりがさかんな、福井県鯖江市、越前市、越前町で年に一度開催される、体験型マーケット。職人の工房が開放され、ものづくりの現場を見学体験することができる。
中谷:
地方創生で、鯖江や福井県の場合は何が大切だと思いますか。
熊本さん:
特に地方においては観光客に「来てもらって、経済活動をしてもらう」というサイクルが有効だと思います。
今後、人口減少や人口流出は避けられず福井県内域で経済を回すのは難しいというのは明らかですよね。県外や海外から観光客を呼び、経済を回す方法が望ましいと思います。人が集まれば経済やアイデアも集まり活気が出てくると思います。
企業を誘致するなども有効ですが、福井県には観光資源が凝縮されているので、この観光資源を有効活用するというのが、コストもかからないベストな方法ではないかなと私は思います。今、問題となっている空き家なども活用すれば移住やバカンスの二拠点生活の場としても期待できますし、空き家問題も解決すると思います。
中谷:
福井県は工芸がすごいですし、あとは温泉などもありますよね。
熊本さん:
観光客の観光、宿泊となると「あわら温泉」もあるし嶺南地区にも素晴らしい宿泊施設が沢山あります。あとは福井県はカニや海の幸も有名ですよね。工場見学や体験ができる場所も多いので、「泊まって、体験して、食べて」、満足して帰っていただくことができると思います。
その他にも海、山、川、湖、雪山があり自然のレジャーがひと通り体験できるのも強みですね。
中谷:
越前ガニ、有名ですね!本当に観光資源が多いですね。
熊本さん:
そうなんです。だから福井県はポテンシャルが高いと思っています。2024年に、東京から敦賀まで北陸新幹線が開通するので、おそらく上記のような流れが加速することに期待しています。
メガネーランドも、そのときに活きてくるのでは、と期待しています。
熊本さん:
地方創生として取り組んでいる一つに家屋のリノベーションがあります。これはSDGsの絡みもあり、福井県の方でも現在力を入れています。
民間、行政に関わらず建物の改築の際に、建築資材や家具・小物などに伝統工芸の技術を使おう、という動きが少しずつ出てきています。
中谷:
それはいいですね!木造の古民家などをリノベーションするのですか?
熊本さん:
木造建築などに限らず、鉄筋の古いビルなども対象になります。
モノをつくって売るのには時間や在庫コストがかかりますが、建物のリノベーションは技術を提供するので即金性もあり、在庫リスクもありません。リスクなしで収入に繋がるので、職人にとって生産性の高い仕事になります。依頼する側も「国認可の伝統工芸士が手がけた」ということで箔がつきます。だから、お互いにWin-Winの関係になりますね。
こういうビジネスチャンスがあるんじゃないかな、と思っています。
中谷:
古い建物を壊さずに改装していく、というのは、SDGsをかかげる時代の流れにも合っていますね。
熊本さん:
そうなんですよ。だから、実績を一つひとつ積み重ねていけば、これから職人の売り上げの柱になっていくのではないかな、と思っています
リノベーションに限らず、これからは伝統工芸でも「ものではなくて技術を売る」、伝統工芸の技術をさまざまな分野で利用していくという形になっていくだろうな、と僕は思っています。
中谷:
今、全国で地方創生に取り組まれようとしている方々に、何かアドバイスはありますか?
熊本さん:
僕たちも手探り状態なのですが「地方創生」の取り組みで最大の問題はマネタイズが難しいということです。いくら熱意があって行動しても自分自身の生活ができなければ元も子もありません。まずは自分自身で自分の生活を確立して、余力ができたら行動するのみ、だと思います。誰かだけに負担がかかる活動は本質でないと言えます。
実際に経験してみると、様々な問題が複雑に絡み合っていることが分かります。従来の販路、土地柄など。地方創生には明確な答えがなく、そう簡単にいかないと経験してきました。ただ、一つ言えることは人が集まれば何か化学反応が起きやすいということです。ビジネスにはチームが必要ですが、地方創生も同じことが言えると思います。
中谷:
前例が少ない中でも、お手本になるような成功例はありますか?
熊本さん:
イベントでみれば前述の新潟の燕三条の「工場の祭典」とか、鯖江の「RENEW」などは理想のイベントだと思います。すでにあるモノを観光資源にうまく転換できているなと感心しています。年々規模も大きくなって経済効果はあらゆる方面にもたらしてくれていると思います。三重県の菰野町とか、全国でこのようなイベントが出てきて産地に活気がでてくればと願っています。工場見学や工芸体験は十分楽しむことができる非日常なアトラクションですよね。
また、日常の営業活動では、成長している市場に参入することを心がけています。例えば「ふるさと納税」「ネット販売」「リフォーム」「アウトドア」など。市場の成長に合わせて売上も増加していく経験をしました。
熊本さん:
何にせよ、行動ですよね。私や職人たちもまだまだ発展途上で何が正解かも分かりません。私たちのこれまでの経験を基に話をしてきましたが、全然まだまだです。
様々な業種、事例をヒントにして、とにかく動いて試していくことだと思います。最速で失敗を繰り返し、それを基に少しづつ成功体験を積み上げていくにつきるかなと思います。
今ではSNSや動画配信など無料で拡散できる方法も増えました。有効活用していきたいですね。
動いて、みんなに魅力を知ってもらって、知名度も上がれば、人のつながりやビジネスの種につながる、ということですね。
そうですね。そうすれば、我々に建物のリノベーションの話やオリジナル制作依頼がきたように、次につながる新たな依頼も来るようになると思います。ゆくゆくは売上に繋がる行動になっていくと思います。
中谷:
「行動すること」のほかに、大切なことはありますか?
熊本さん:
「鯖江ミミカキ」の場合もそうでしたが、良きパートナーに出会ったことで今の僕があると思います。今回のお話もBECOS様と出会わなければなかった事です。職人と出会わなければ「工芸サムライ」もありませんでした。
自分1人では決してここまでの経験はなかったですね。だから、人との出会いは大切だと思います。人とのつながりを丁寧に積み重ねていくことで、成功への近道になっていくのでは、と思います。
「行動あるのみ」の言葉を自ら実践され、「鯖江ミミカキ」の誕生を導かれた熊本さん。
その情熱と、人とのつながりを大切にするお人柄が、たくさんの人の心を動かしたからこそ、伝統産業の新しい道筋、また地方創生の新たな可能性を見出すことができたのだと実感しました。
「福井7人の工芸サムライ」がきっかけとなって産地が発展していくことが夢、とおっしゃる熊本さんの、今後のご活動を楽しみにしています!
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