普段使いしたい伝統工芸! 作家が提案する「備前焼」の楽しみ方とは?

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

何かと敷居が高いとイメージされがちな備前焼。ところが、近年では日常使いにピッタリなアイテムも多数登場しています。岡山県出身の陶芸家、恒枝直豆さんもシンプルな備前焼を作り続ける一人。今回は恒枝さんに備前焼の魅力や普段使いのコツ、お手入れ方法を伺いました。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

岡山県備前市で作られ、日本六古窯の1つにも選ばれている「備前焼」。その歴史は長く、起源は古墳時代の須恵器(すえき)とも言われ、平安時代より日用雑器として生産が始まったと伝えられます。

今回は、伝統の技を継承しながら、現代のライフスタイルに馴染む備前焼を創作する恒枝直豆さんにお話を伺いました。

参考

恒枝直豆
1971年岡山県倉敷市に生まれ、1997年に備前焼作家の末石泰節に師事し作陶活動をスタート。1998年に備前陶芸センターの研修生を経て、1999年に備前焼作家の佐藤苔助に師事し、2001年に北海道富良野にて独立。2016年に拠点を岡山県浅口市に移す。普段使いできるシンプルな器づくりを目指している。

目次

備前焼とは?

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

まず、備前焼の特徴について教えてください

恒枝さん
恒枝さん

絵付けや釉薬を施さないため、土の素朴な風合いが楽しめることです。窯への詰め方や焼成時の温度変化などで、さまざまな色味や模様が生み出されるのも特徴ですね。一つとして同じ色や模様にならず、そんな唯一無二の景色を見せてくれるのも備前焼の魅力と言えます。

備前焼珈琲カップの写真

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

窯に置く場所によって色味や模様が大きく異なるのですか?

恒枝さん
恒枝さん

模様は焼成時の煙が付着することで生み出されます。煙の通り道に置かれたものに模様がよく入りますね。とはいえ、やきものは実際に窯から出してみなければどんな表情になっているのかわからないので、窯出しでは常にドキドキします。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

炎と煙が織りなす唯一無二の陶器ということですね。ちなみにどんな窯を使っているのですか?

恒枝さん
恒枝さん

当窯では奥行きがある穴窯を使用します。8mもあるので、中に入るとトンネルのような雰囲気です。窯の最も低い場所に薪を入れて、後ろにある煙突に向かって煙を流していくイメージです。およそ1220℃で約6日間かけてゆっくり焼き締めていきます。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

土は特定のものと決められているのですか?

恒枝さん
恒枝さん

使用する土は種類が定められていて、当窯では「干寄(ひよせ)」と呼ばれる備前市の田畑の地下から採掘される粘土を使用しています。堆積物なので掘った場所ごとに性質が変わるのも特徴です。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

通常の焼き物は釉薬を塗らなければ水漏れしますが、なぜ備前焼は釉薬を施さなくても防水性があるのでしょうか?

恒枝さん
恒枝さん

備前の粘土を焼くと大きく縮むためです。他の産地の粘土は焼成時に約14%縮みますが、備前の土は約18% 。この4%の違いで、釉薬を施さなくても防水効果が得られるのです。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

そうなのですね!ちなみに釉薬をかける備前焼はあるのでしょうか?

恒枝さん
恒枝さん

江戸時代から釉薬を施す作家さんがいたと聞きます。ですが他の産地の焼き物と差別化を図れなかったため、釉薬をかけないスタイルが主流になったようですね。

活動拠点を移しながら、備前焼の魅力を伝え続ける

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

恒枝さんが備前焼の作家になったきっかけを教えてください。

恒枝さん
恒枝さん

実家が備前焼の販売店を営んでいたのがきっかけです。物心ついた時から自宅に備前焼が溢れていたため、自ずと大人になったらものづくりの道に進みたいと思っていました。実家とご縁のある作家さんに弟子入りし、1年間学びました。

恒枝陶芸

恒枝陶芸

恒枝陶芸

倉敷川沿いの美観地区内にある備前焼・酒津焼の専門店 。倉敷酒津地区の民芸窯、酒津焼や備前焼の人気作家の作品を主に取り扱っている。

  • 住所 岡山県倉敷市本町5-26
  • 問合せ先 TEL 086-425-2911
  • 営業時間 9:30~18:00
マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

その後はどのような活動をされたのでしょうか?

恒枝さん
恒枝さん

県が運営する陶芸センターの研修に1年間参加し、続いて別の作家さんのもとで2年間学びました。その後、北海道の廃校になった小学校を文化的に活用するという取り組みを知人から紹介されたのを機に、2001年に富良野で独立しました。北海道では15年ほど活動しましたが、建物の活用性が変わったため2016年から拠点を岡山に移しました。

備前焼コーヒードリッパーの写真

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

恒枝さんの作品にはカフェオレボウルやコーヒードリッパーなど、普段使いしやすいアイテムが多い印象です。このスタイルになったのは、どのような背景があるのでしょうか?

恒枝さん
恒枝さん

北海道で独立したことが影響していると思います。本場の備前で作陶すると、「備前焼はこうあるべきだ」といった声が多かれ少なかれ聞こえてきますが、北海道ではまず干渉されることはありません。自由に活動できる環境だったからこそ、枠にとらわれない創作ができたと感じています。

北海道富良野での個展の様子

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

ちなみに北海道で活動する陶芸作家さんは多いのでしょうか?

恒枝さん
恒枝さん

僕が移り住んだ時点で何百人もの作家さんがいらっしゃいました。ほとんどが道外からの移住組でしたね。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

作家として活動する中、どんな瞬間にやりがいを感じますか?

恒枝さん
恒枝さん

お客さまとの会話からアイデアが浮かぶときですね。当窯の作品が伝統的な備前焼に比べて薄く軽いのも、お客さまから要望を聞き、使い勝手の良さを追求した現れです。お話することで自分では気づけなかった側面が知れて、非常に良い勉強になります。

料理はもちろん、調味料入れとしても最適

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

数ある作品の中でお客さまから特に反響を呼んだアイテムを教えてください。

恒枝さん
恒枝さん

「蓋付きの器」です。素地に細かな空気の出入り口があるため、湿気がこもりにくいという備前焼の特徴を生かしたものです。砂糖や塩が固まりづらい上、味噌などの発酵食品にとっても好環境です。個展を開いた際に多くのお客さまから好評の声をいただき、サイズを増やしました。梅干しやお菓子入れとして使われている方も多いようです。また飲食店からのニーズも多く、カウンターに置く調味料入れとして使っていただいています。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

和食以外で、備前焼と相性の良い料理はありますか?

恒枝さん
恒枝さん

基本的にどんなジャンルのお料理にも合います。土の風合いが素朴なので、色彩豊かな食材は特に映えますよ。麺との相性もよく、焼きそばをいつも丸皿で味わうというお客さまもいらっしゃいます。伝統工芸品だからといって気負わずに、気軽に使っていただきたいですね。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

恒枝さんの代表作のひとつ、ビアタンブラーも人気が高いようですね。

恒枝さん
恒枝さん

おかげ様でご好評いただいています。防水効果の高い備前焼の性質を活かしたタンブラーで、通常の焼き物と違い、冷凍庫での保存が可能です。また素地の表面に微細な凹凸があるためビールの泡がよりきめ細かくなり、クリーミーな口当たりを楽しむことができます。ハイボールなどの炭酸系にもピッタリですよ。

備前焼のタンブラーの写真

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

備前焼を長く愛用するためのお手入れのコツを教えてください。

恒枝さん
恒枝さん

特に注意すべき点はないのですが、強いて言うなら、電子レンジのご使用はお控えください。素地に含まれている気泡が膨張し、割れてしまう可能性があるためです。
また表面がザラザラしているので、柔らかいスポンジを使うとすぐボロボロになってしまいます。硬いスポンジやたわしで洗うのがおすすめです。食洗機はお使いいただいて全く問題ありません。

備前焼の未来

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

近年、日本の伝統工芸の後継者不足が問題視されていますが、備前焼ではどのような状況でしょうか?

恒枝さん
恒枝さん

個人的な感覚では、備前焼はそこまで深刻化していないと捉えています。たしかに作家の数は年々減っており、数字だけ見れば後継者不足と言えるかもしれません。とはいえ、備前焼は他の産地よりも個人作家が多いのが特徴です。特定の家系でなければ作陶できないということはないので、新規参入しやすいという一面があります。そんな寛容さがあったからこそ、僕自身、備前焼の世界に一歩踏み出せたとも思いますね。

マツモト ナホコ
マツモト ナホコ

最後に、読者へメッセージをお願いします。

恒枝さん
恒枝さん

当窯では、“暮らしに溶け込みやすい”をモットーに、試行錯誤しながら備前焼を日々作っています。今後も時代やライフスタイルの変化を柔軟に受け入れつつ、新たなアイデアを模索していきたいと思います。ぜひ備前焼を毎日の生活に取り入れていただけたら嬉しいです。

あとがき

どこか敷居の高さを感じていた備前焼ですが、恒枝さんの作品はふと手にとってしまいたくなるものばかり。また取材を通じ、釉薬を施さないことで、調味料の保存容器にも適していると知れたのは貴重な学びでした。モダンな感性から今後どのような作品が生み出されるのか、とても楽しみです。

この記事で取材したブランド「恒枝直豆|備前焼」

備前焼の写真

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