本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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”ストリートファッションとしての着物”という新たなジャンルを提案するブランドVEDUTA(ヴェデュータ)。デザイナーの渡邉仁(わたなべまさし)さんにVEDUTAが生まれた背景、そしてVEDUTAを通して見るファッションの未来について伺いました。
唯一無二のコンセプトの根幹にはどのような想いや展望があるのか、詳しくお話ししていただきました!
VEDUTAは2018年に設立された”ストリートファッションとしての和服”を提案するブランドです。
ブランド名のVEDUTAはイタリア語で「景色」を意味し、独自の文化を見つめ直すことで”現代日本のファッションの景色を変える”という想いが込められています。
Made in Japanであること、日本の伝統、トレンド、そして機能性を重視した和服を新たなストリートファッションの選択肢として生み出しています。
まずは渡邉さんがどのようにファッションに興味を持ち、ブランド立ち上げにまで至ったのか教えてください。
私は新潟県佐渡ヶ島の生まれです。両親も島の出身だったり、祖父は船大工だったりと、幼い頃から伝統は身近にありました。同時に、幼少期に東京や神奈川に住んだ経験もあり、両親は都会の景色もよく見せてくれました。
そのため、過去と未来の融合を日頃から体感していたように思います。その結果、新しいものへの好奇心が強く、ファッションにも興味を持ちました。
それではファッションデザイナーになることを目標に、VEDUTA設立のきっかけにもなったイタリアへの旅に行かれたのでしょうか?
それは実は違います。イタリアには就職活動の一環として行きました。ウェディングの分野を取り扱う会社に入社したいと思ったのですが、まずはその会社のウェディングドレスの輸入元であるイタリアに行き、本場の仕事を見ておくことが就職活動に有利に働くと考えたんです。
その際イタリアのメゾンを取材したことで、日本人が西洋の服をつくり、西洋人と勝負して勝つのは難しいと強く感じました。また、たまたま乗ったタクシーの運転手さんに「日本の鎧兜や着物の展示には行列ができるよね」と声をかけられたこともあり、日本人だからこそ、日本人の方が外国人より良くできることに目を向けるべきではないかと考え始めました
その結果、和服を基盤にしたブランドのコンセプトができ上がったのですね。
そうですね。和服は日本での長い歴史がある分、日本人の胴長短足の体型を一番きれいに見せる形になっています。しかしデザイン性が過去のまま止まっています。そのため、フォーマットとして和服を起用し、デザインには現代のトレンドであるストリート要素を取り入れて着やすくすることが、日本人に自分の文化に誇りを持ってもらうことに繋がると考えました
”ストリート着物”は海外の方にも注目されそうなコンセプトですが、ターゲットはあくまでも”日本人”なのですね。
私は自分をどう魅力的に見せるか、という”個性の表現”がファッションだと思っています。その個性を表現する際、洋服の何倍もの歴史を持ち、日本人を魅力的に見せることに長けている和服が日本人のワードローブの選択肢にないのはすごくもったいないと思います。
もちろん国籍に関わらず興味を持ってくださる方には着ていただきたいですが、VEDUTAの一番の目的は日本人がもっと誇りを持てるように、今の時代に適応しきれていない文化をリノベーションすることです。
着物を着る習慣を復活させるというよりは、日本人が自信や誇りを持って過ごすための新たな選択肢として、時代に合った和服をワードローブに加えることを目指すということでしょうか?
そうですね。デザインにおいて一番大切なのは思いやりで、人の気持ちを理解することが時代に合ったものをつくることに繋がると思っています。
イタリアから帰国しVEDUTAを立ち上げるまでの10年間に、スタイリストやバイヤー、デザイナーも経験しているので、たくさんの人が求めているものを察知し、時代に合っていないものを変えていくこと、過去と未来をかけ合わせて今求められるものをつくることには自信があります。
VEDUTAのデザインをする際のこだわりや、他にはない特徴を教えてください。
現在は絵画をモチーフにすることが多く、見ていてワクワクして個性を出しやすいデザインをメインとしています。身に纏わなくても、例えば壁にかけることでも美しさを感じられるアートピースのようなデザインが多いです。
また、素材は日本製にこだわっています。有松絞りなどの日本の伝統的な生地とのコラボレーションもありますし、ハイテクな化学繊維も日本が誇る技術なので、伝統的なものに限らず、最先端の日本の素材も使うことに意味があると考えています。
ストリートファッションの要素はどのように取り入れていますか?
ビッグロゴを使うことや、リフレクターを使って写真を撮ってSNSに投稿するときに映えることを意識したりします。また、ビッグシルエットでフードやファスナーの付いた羽織をつくったりしています。
ファスナーやフードを加えることはアイコン的な役割を果たすだけでなく、和服の機能性を上げることにも繋がるので、大事な要素です。
同じように、形は和服でも、素材をスウェット生地のような今風の着慣れているものにすることもこだわりです。
次のコレクションではどのようなコンセプトをお考えですか?
コロナ後の世界に合わせて「ルネサンス」「復興」「輪廻転生」のコンセプトが第一にあります。「復興」と掛け合わせて宮城県気仙沼の藍染とのコラボレーションも決まっています。
また、寅年ということで、寅年の武将上杉謙信をモチーフにしたラインも考えています。キャンプブームも考慮して、「もしも上杉謙信が現代にいたら」というストーリーをミリタリータープ(キャンプの際に雨や日差しを防ぐために使う大きな布)になる羽織を通して伝えたいと思っています。
時代の要素を敏感にキャッチして和服に落とし込まれているのですね。ストーリーがとても具体的につくり込まれているのも印象的です。
ストーリーがあると服に思い入れが生まれるので、そのような服、意味や哲学のある服をつくりたいと思っています。
前例のない新たな挑戦を重ねるVEDUTAですが、どのようなところに難しさややりがいを感じますか?
”今のもの”をつくるためには気を抜けないことでしょうか。ブランドの性質上、過去と未来の探究が必要不可欠なため、歴史の勉強やトレンドのインプットを並行して行い、過去と未来を行き来しているような感覚です。そのインプットの努力を怠った瞬間に、今の時代に合ったものはつくれなくなると思っています。
デザインやコンセプトを考える以降の過程ではいかがでしょうか?
ブランドコンセプトを実現できるつくり手を探すこと、ブランドのメッセージや価値を効果的に伝えるために最適な販売先を見つけることも難しいですね。
でも簡単なことってつまらないですよね。他の人には苦になることでも自分は好きだからできるこの仕事は天職だと思います。
それでは最後に、今後のVEDUTAの展望を教えてください。
今後は積極的にオンラインファッションショーを開催して行きたいと思っています。そして2024年にはパリコレにも進出したいと考えています。海外進出することで多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、最終的には多くの人が手に取りやすい価格帯のブランドとのコラボレーションも行いたいです。
和服がもっと自然なファッションとして取り入れられて、スクランブル交差点の景色が変わることを目指しています。
渡邉さん個人としての目標や見たい”景色”はありますか?
私は人間一人一人がもっと自信を持つべきだと思っています。そのためには、自分の国に誇りを持つことがひとつの有益な手段です。そして服はその国の文化や伝統を内包しながら、着る人を輝かせることができる最高のツールです。
VEDUTAを成功に導いた暁には、クリエイティブディレクターとして、発展途上国で埋もれている民族衣装を呼び覚ます、”民族衣装の独立革命”を起こしたいと考えています。自分がデザインをするのではなく、その国の若手デザイナーをサポートする形で、たくさんの国が平和的に独立する革命をファッションで成し遂げたいです。
そのためにはまず、日本人としてVEDUTAで日本のファッションの景色を変えることが必要だと思っています。
VEDUTAの革新性を支えるのは、渡邉さんの論理的かつ情熱的な想いなのですね!
日常生活から次第に失われつつある日本の伝統文化を、どのようにアップデートし、生きた伝統としてこれからも残していくかは多くの分野で課題になっていることだと思います。その打開策を探り、より多くの人が自信や誇りを持って幸せに過ごせることを目指すVEDUTAの挑戦にはワクワクしました。
日本文化を多角的に見ることの重要性とファッションの持つ力を改めて感じさせられ、日本人としてファッションデザイナーを目指す私も大変刺激を受けました。貴重なお話をありがとうございました!
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