本記事の制作体制
BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。
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今回は、ファスナーの世界トップブランドであるYKKさんに、YKKのファスナーの魅力やものづくりに対する考え方などを学びに行ってまいりました。
個人的にも、YKKのファスナー「エクセラ」の大ファンで以前から楽しみにしておりました。
大企業たる所以や、ここまでの企業になっても、そんなところまで対応するの?といった驚きがある取材でした。
日本が誇るファスナーの世界のTOPブランドであり2018年度のファスナー年間販売数量が初の100億本を突破。
1934年にサンエス商会を創業しファスナーの加工販売をスタート、1945年に吉田工業株式会社に社名変更、翌年商標「YKK」を取得。その後、技術力を活かし、アパレル向けのファスナーだけではなくかばんや紙おむつなどの汎用資材分野や、新しいファスナーを精力的に開発し続けている。
現在は、72の国と地域で事業展開を行い世界中に高品質なファスナーを届けている。
YKKとは、吉田工業株式会社(Yoshida Kogyo Kabushikikaisha) の頭文字をとったものである。
世界のトップブランドとも言われているようで、たしかに言われてみればYKKのファスナー以外を見たことがないですね。
ファスナーに関して、「ファスナー」「チャック」「ジッパー」と様々な呼び名があり、日本では「チャック」と呼ばれることが多いですが、このチャックという名称は日本の企業が巾着袋の音をもじったと言われているそうです。
ジッパーは、アメリカの企業が閉じる時の音を擬音化したものとのこと。
世界的には、私たちが想像している「ファスナー」は「スライドファスナー」と呼ばれています。
本記事では、YKK社でも使われている「ファスナー」に統一して表記していきます。
ちなみに、YKK社では「Fasten」=留める、つなぐものを取り扱うということで「ファスニング事業」という事業部がスライドファスナー、面ファスナー(クイックロン)等を製造・販売されています。
今回は、ジャパンカンパニーの井ノ上様、武藤様にお話をうかがいました。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
普段は、どのようなお仕事をされているのですか?
普段は、カバン関連の企業への営業活動や、産業資材(自動車メーカーなど)をつくっている企業などに営業に行くことが多いです。
YKKのファスナーの特徴を教えてください。
BECOSで取り扱っている財布に使われているYKK「エクセラ」だけでもエレメント(ファスナーの金属部分)が普通タイプと両面タイプで2種類あり、エレメントの色が13色、また、ファスナーテープの色が約580色あります。
とてつもない数ですね。注文する場合の最低注文数などはあるのでしょうか?
1本から発注可能です。
さすがに個人の方からの依頼はありませんが、アパレルメーカーさんなどからは1本からの発注を受けることがあります。
1本からですか!!??
普段メーカーの方とお話をすると、最低発注数が100個単位ということが当たり前ですのでここまでの大企業にも関わらず、1本からの発注に対応するということには本当にすごいことですね。
それぞれの要望に答えていくので、その分納期はかかってしまいますが良いものを届けたいと考えています。
また、お客様からの要望から生まれた新商品もたくさんあります。
他にはどういった特徴があるのですか?
弊社の一番の特徴としては、ファスナーをつくる材料や機械の製造・開発も行っている会社だということです。
富山県の黒部に工場があり、その工場で製造した機械を全世界の工場に配置し世界共通品質でファスナーを製造しています。
全世界72拠点に配置する機械をつくっているというのは驚きですね!
社内では「マザーファクトリー」と呼んでいます。黒部のマザーファクトリーから世界中に機械を配置することで、品質を安定させることが可能になっています。
ファスナーをつくる会社はたくさんありますが、ファスナーをつくる機械の製造・開発までする会社は他にはないと思います。
ファスナーは、100分の1ミリ狂ってしまっただけでも、動かなくなってしまいます。
ましてや、そのファスナーを製造する機械となると1000分の1ミリの誤差も出ない精度でなければならず、ファスナーの品質を安定させる上で、機械の品質は非常に重要なんです。
そうなんですね。そういった技術の積み重ねによりこれだけスムーズに開閉できるファスナーができあがるのですね!品質の基準やテストなどもあるのですか?
JIS規格値をクリアすることはもちろんですが、YKK独自の品質規格を設けてテストを繰り返しています。そのため安心して長く使っていただけます。
私も、おそらくですがYKKさんのファスナーが付いた商品を100個程度は使っていると思いますが、壊れたことはないですね。
あまり相談自体は多くないのですが、YKKグループの商品に限って補修のサービスを行っています。こちらも、もちろん1本ずつ可能です。
詳しくは、弊社ホームページの壊れたファスナーを修理してくれるところはありますか?をご確認ください。
修理までしてくれるのですね!
しかも、1本でも修理可能というのはすごいですね。壊れないようにお手入れをする方法などはあるのでしょうか。
とくにお手入れなどはなくてそのまま使ってもらえるように設計しているのですが「ファスナーメイト」というファスナー専用の潤滑油スプレーを使えばよりなめらかに動かすことができます。
使う際は、ファスナーテープにかかってしまい変色しないようにあて布などをしてください。
たしかに、私も今まで何も手入れしていなくても問題なく使えていましたので、手入れのことなど気にしていませんでした。それだけ品質が安定しているということですね!
もし、ファスナーの動きが鈍ってしまったらファスナーメイト使ってみようと思います。
今、力を入れている事業や活動はありますか?
企業として「サステナビリティ経営」に力を入れており、サステナビリティなファスナーの製造を行っています。
サステナビリティ(Sustainability)とは、広く環境・社会・経済の3つの観点からこの世の中を持続可能にしていくという考え方のこと
どういった商品があるのですか?
従来のファスナーで使用する化石燃料のうち、30%を植物由来の材料に置き換えた、CO2の排出量を削減できるファスナー「GreenRise」を開発しました。
このファスナーは2019年度 グッドデザイン・ベスト100にも選ばれています。
ハイブランドなどでも、最近は環境に考慮したファッションアイテムを多く出しているので、このようなファスナーも需要がありそうですね。
他にもこうしたファスナーを作られているのですか?
他には、回収されたペットボトル等をリサイクルしてつくった環境配慮型のファスナー「NATULON」などサステイナビリティなファスナーを多数製造しています。
こうした時代のニーズを捉えた商品開発や、環境を考慮した商品というのはとても重要ですよね!とくに、ファッションのようなイメージが重要なモノであればなおさらだと思います。
他にもファッション関連でこうした社会事業はされているのですか?
ファスニング商品の製造以外にも、YKKでは「YKKファスニングアワード」という学生を対象とした日本最大級のファッションデザインコンテストを主催していたりします。
YKKファスニングアワード
2020年で第20回を迎える「YKKファスニングアワード」は、学生を対象とした日本最大級のファッションデザインコンテスト。ファスナー・バックル・スナップ&ボタンといった“小さなパーツ”の新たな可能性を見出すアワードです。このアワードへの参加を通じて、多種多様なYKKファスニング商品が学生の皆さんにとって身近なものになることを願っています。
「人が身につけることができる作品」を基本テーマに、審査対象アイテムの特性を十分に活かし、YKKのファスニング商品の「新たな可能性」を感じさせる作品を毎年募集しています。
こうした活動を通して、若いデザイナーさんが育っていくというのは良いことですね。
YKKとしてもこうした活動を通して、ファッション業界の架け橋になれればと考えています。
ファスニング商品は、バッグや服などのファッションアイテムにとって必需品のパーツになっていますから、まさしく架け橋になっていますよね。
昨年の受賞作品が展示されていました。
ファスニング商品の魅力を更に引き出すような目を引く作品ばかりです。
インタビューをさせていただいた、オフィスはとても綺麗で、オープンなイメージのする素敵な場所でした。
今日1日でファスナーやYKKさんのイメージが変わりました!インタビューさせていただきありがとうございました。
帰り際に、入り口にあった展示用のジャンボファスナーを触らせていただきました。
これ、実際に動かせるんです!ファスナーの開閉の仕組みを実際に目で見ることができます。
インタビュー後は「ものづくり館 by YKK」を見学に行こうと思います。
取材させていただきました井ノ上様、武藤様ありがとうございました。
YKKでは、事業活動の基本としてYKK精神「善の巡環」という言葉を掲げているそうです。
企業は社会の重要な構成員であり、共存してこそ存続でき、その利点を分かち合うことにより社会からその存在価値が認められるものという考え方の元、事業活動の中で発明や創意工夫をこらし、常に新しい価値を創造することによって、事業の発展を図り、それがお得意様、お取引先の繁栄につながり社会貢献できるという考え方。
そういった、精神の元で様々な事業活動を行っているそうです。
取材後にはYKKのイベント及びコミュニティ施設「ものづくり館 by YKK」をご案内いただきました。ものづくりを通して、色々な人が立場の違いを超えて自由に交流・情報交換できる場所として開放されています。
YKKファスニング事業部のオフィスのすぐ近くに、YKKの東京本社があり、その本社の裏手に「ものづくり館 by YKK」はあります。
1Fはワークショップエリアで、人気の回は予約でいっぱいになってしまうこともあるんだとか。
着物の帯をリメイクしたクッションカバーの製作や、ファスナー付きのジャンパースカートなどのファスニング商品を使った楽しいワークショップがたくさん企画されていました。
2階は、学び舎ということで、ファスナーの歴史やしくみについて、詳しく理解することができるスペースになっています。
この、普段は見かけないようなファスナーはどこで使われているファスナーか分かりますか?
このファスナーは、明石海峡大橋の排水溝などに使われている「水密・気密ファスナー」と呼ばれるファスナーです。
実際に触ってみると、両端から挟み込むような使い心地で、全く隙間なく閉じる仕組みになっていました。
その他、ファスナーの歴史を知ることができる展示などが充実しています。
3階はクリエイティブラウンジということで、シックな内装で美術館のような雰囲気です。
企画展示なども行っており、ジーンズとファスナーの歴史について知ることができる展示があり、ジーンズ好きの私としてはとても興味深い内容でした。
ワークショップ以外にも、ファスナーの歴史や魅力を知るための展示などが盛りだくさんの場所です。
ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
日本のものづくり企業というと「トヨタ」や「ホンダ」「ソニー」などの企業が目立った存在ですが、「YKK」も最終製品をあまり作っていないということで、目立った存在ではないですが間違いなく日本を代表するものづくり企業だと言えると実感しました。
様々な現場を取材させていただき、日本人の持つ技術力や繊細さは他の追随を許さないと感じています。どの職人さんも技術に誇りを持って製品に自身を持っています。
しかし、残念ながら非常に属人的な仕組みの中で、技術を研鑽してきた歴史がありそこから脱却できずに、後継者不足から技術が途絶えてしまうということが、非常に多いです。
人口減少時代の日本において、伝統工芸の分野でも職人の属人的な技術に頼らない仕組みが待ったなしで必要になる時が来ているのではと感じます。
また、その中からYKKのように、その仕組み自体を他の地域や他の国に転用できるまでの仕組みをつくることができれば、日本の伝統工芸が将来にわたって反映する礎になるのではと考えています。
BECOSもそういった、仕組みづくりの一端を担うサービスであり続けたいと思えた取材でした。
ご協力いただきました、YKK様ありがとうございました。
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