伝統工芸が衰退する3つの原因と私たちにできること

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

Journal編集長
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「日本の伝統工芸や伝統的なものづくりは危機に瀕している」ということを聞いたことはありませんか?

伝統工芸や日本の伝統的なものづくりの業界の方々とお仕事をさせていただくようになって、私なりに感じてきたこと、分かってきたことについて紹介したいと思います。

目次

伝統工芸・日本の伝統的なものづくりの現状

まずは、現状がどうなっているのか、データなどを踏まえて実体験をお話させていただきたいと思います。

「伝統工芸 衰退」の画像検索結果
出典:四季の美 数値出典:(財)伝統的工芸品産業振興協会 ※平成18年度以降の企業数不明

少し前のデータですが、昭和59年のピーク時に比べて生産額が5分の1になってしまっているというのが現状のデータです。

それに合わせて、企業数も減少の一途を辿っているという実情です。

また、最近では金沢市が伝統工芸従事者が10年間で700人減ってしまったという衝撃的な報告をしていました。

10年前は3000人いた伝統工芸従事者の方が25%近く減ってしまったということです。

伝統工芸従事者 10年間で700人減 金沢

 金沢市で伝統工芸品の製造や販売などに従事する人が、2018年度末までの10年間で約700人減少して約2300人になったと、市が10日、明らかにした。一方、一般向け体験教室の参加者数は約8200人と2.7倍に増えた。業界全体で後継者の確保が厳しい半面、観光客の増加を背景に伝統工芸に親しむ人の裾野が広がっている現状も浮かんだ。

 市は20年度から10ヶ年の「市伝統工芸品産業アクションプラン」を本年度策定する。そのための検討委員会の初会合が10日開かれ、市側が報告した。

 10~19年度の現行プランの成果を検証するため、08年度末と18年度末の実績を比較した。対象は加賀友禅や金沢箔など国指定伝統工芸品六業種と、加賀毛針や加賀水引など希少伝統工芸品二十業種。

 従事者は現行プランで約3000人の維持を目標にしているが、既に2割超減った。国指定六業種の生産額は16%減の102億円。生活様式の変化などで、需要が減少したとみられる。事業展開や販路開拓を支援する「金沢クラフトビジネス創造機構」に寄せられた製品開発の相談は、7件から67件と大幅に増加した。

 委員からは「工芸にデザインやアイデアを掛け合わせるプロデューサーの視点が必要」「物より体験を求める人が増えている」などの意見が出た。

 検討委は今後、伝統工芸の振興策について議論し、11月ごろに骨子案をまとめる。

中日新聞より引用

実際に現場ではどうかと言うと、どの職人さんに聞いても以前は工房のまわりに固まって同業者がいたが今では自分のところだけになってしまったといった話をよく耳にします。

私の祖父も茨城県石岡市という町で竹細工の職人を長年しており、地元のテレビ局などが”今でも残る唯一の竹細工職人”などといった内容で番組を制作していました。

こういった例からも考えると、金沢の10年間で25%減少というのはもしかすると良い方なのかもしれません。

金沢は九谷焼や加賀友禅、金沢箔など全国的に見ると伝統工芸が盛んな地域と言えます、その地域でさえ、こういった現状ですから他の地域はもっと厳しい現実があると思います。

伝統工芸や日本のものづくりが衰退する3つの理由

伝統工芸が衰退する理由①
伝統工芸品は売れない(儲からない)

時代のニーズを捉えて変化できなかった商品は廃れてしまうことは、当たり前の原理原則かもしれませんが、こと伝統工芸品に関しては「伝統」の名の元に昔ながらのデザインを現在でも踏襲してつくり続けているものがたくさんあります。

また、デザインなどを時代に合わせて変えていったとしても、社会の風習自体が変化をしてしまっていてニーズが少なくなってきてしまっているものもたくさんあります。

例えば、五月人形などは設置する場所がないことや新しく購入する機会がないなどの理由で売れにくくなってきてしまっているのも事実です。

伝統工芸「江戸節句人形」の工房 柿沼人形のつくる五月人形

伝統工芸が衰退する理由②
職人が「作る以外のこと」を行うことが難しい

商品が売れるようになれば、大きな問題は解決できると私は考えていたのですが、それは全く見当違いでした

時代のニーズを捉えた商品を開発できたくさん売ることができたとしても、直接に注文を受けたり、製造工程を管理してお客様まで届けたりといった「作る以外のこと」を不慣れな職人さんが行うことが非常に難しいです。

後継者不足問題とも関連しているのですが、職人さんが高齢の工房になればなるほど厳しい現状です。

特に注文を受けてから作る「受注生産方式」の工房は受注から生産管理、納品までをスムーズにしなければなりません。

しかし、これまでパソコンなどを操作したことのない世代の方々ですのでなかなかメールで注文が入っても対応ができません。

製造工程の管理もしっかりとはできていないので、いつ工芸品が出来上がるのかが分からない場合も多く、製造できたとしてもお客様のオーダーとは違ったものができてしまうといったことも多々発生しています。

そのため、大口の取引先やお客様から見放されてしまい、結局売上の減少を自ら招いてしまっています。

伝統工芸が衰退する理由③
そもそも職人がいない(後継者不足)

理由の2でお話したようなことは、パソコンができる若手の弟子などがいれば解決できる可能性もあるのですが、後継者不足によりそもそも人がいません。

この高齢化と後継者不足は非常に深刻で、地域の伝統工芸品展などに行っていただければすぐに分かるのですが、参加している職人さんたちは高齢者と一般的に言われる65歳以上の方がとても多いです。

逆に20代、30代の若手の方が参加されていることほとんどないのが実情です。

理由としては、様々あるのですがやはり「弟子」という制度が現代ではなかなか受け入れられなくなってしまっているということも挙げられます。

2017年に話題となった、西陣織職人の「弟子募集」について「ブラック」だといった批判が相次ぎました。

伝統工芸士の資格を持つ西陣織職人・佐々木英人さんがTwitterに弟子募集として投稿した内容

「西陣織を習いたい、将来的に仕事にしたい方を募集します。ただし最初の半年は給与的なものも出ませんし、その後の仕事を保証はできません。ただ、この西陣織の職人が減りゆくなか、将来的に技術を覚えておきたい方に無料で教授いたします」

そもそも、職人は企業体として活動しているところは少なく、個人として仕事を受けているところが非常に多いです。

ですから、一般企業のように社会保険や給与規定などの労働環境を整備するための仕組みが一切取り入れられていない場合がほとんどです。

私の祖父のところにも複数のお弟子さんが来ておりましたが、皆さん手弁当でしたし、給与などは一切ありませんでした。

こういったことは、2~30年前であれば当たり前だったかもしれませんが、現代ではなかなか受け入れられない現状だと思います。

ましてや、率先してこのような業態へ「弟子」として学びたいという方はほとんどいないのではないでしょうか。

伝統工芸や日本のものづくりを発展させるために私たちができること

私たちBECOSでは、これらの問題を少しでも解決したいと思い日々活動しています。私たちの取り組みを紹介させていただきます。

ご興味をもっていただけた方はお気軽にお問い合わせいただけたら幸いです。

伝統工芸の解決策①
伝統工芸品の売れない(儲からない)を解決するためにできること

売れない、儲からないといった問題に対しては、伝統工芸品やものづくりに特化したメディアプラットフォーム「BECOS」を運営することにより、より多くのお客様が伝統工芸品に触れていただく機会を提供しています。

現時点では、毎月20万人以上の方がBECOSのサイトをご覧いただいており、これまで伝統工芸品に興味がなかった方への認知拡大にも寄与できています。

また、埼玉県越谷市にある人形の工房「柿沼人形」では、五月人形の需要の変化を捉えて以前よりデザイナーの方とコラボした可愛らしい招き猫を製造していました。

柿沼人形の招き猫

より多くの方にこの招き猫を知ってもらいたいと考えBECOSでは、現地に取材にうかがい、実際の製造工程や職人さんに直接インタビューを行いました。

また、招き猫を購入するタイミングで一番多いと考えたのが「開店祝い」や「お店のオープン」でした。開店祝いを探している方の目に止まりやすいよう業種別に開店祝いのおすすめの商品を紹介する記事を作成しました。

こちらの記事が現在「開店祝い」で検索順位3位を獲得しており、毎日のように招き猫のご注文をいただいております。

また、BECOSでは「一切の値引きをしない」ということを職人さんにお約束しており、それはこの「儲からない」という問題を一緒に解決していきたいとの思いからです。

ときには、商品開発や値付けなどから参加させていただき職人さんと一緒になって問題を解決しています。

伝統工芸の解決策②
職人が「作ることに集中できる仕組み」をつくるためにできること

発送業務や生産工程の管理、お客様とのやり取りなどはすべて任せていただくことが可能です。

職人さんの中には、お一人で作業をしている方も少なくありません。そのような状況で、商品の注文管理、梱包、発送などをしていくのは非常に困難です。

BECOSでは、商品を倉庫に預けていただければ、梱包から発送、毎月の売上集計まで対応させていただいております。

また、受注生産商品を製造している工房では、非常に煩雑な注文管理をされておりましたので、よりシンプルに管理しやすいよう生産指示書などの作成をBECOSで担当させていただいております。

これにより、職人さんがよりものづくりに専念できる環境を整えています。

伝統工芸の解決策③
そもそも職人がいない『後継者不足』を解決するためにできること

職人さんをより魅力的に感じてもらえるようにブランドストーリーなどを充実させ「将来自分も職人になりたい」と思ってもらえるような紹介を心かげています。

また、伝統工芸の求人サイトのまとめ記事を作成し毎月多くの方に参考にしていただいております。

Journal編集長
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伝統工芸の担い手になりたい人必見!弟子募集が掲載されているサイトをまとめた記事も、ぜひご覧ください。

しかし、この後継者問題に関しては私たちBECOSだけでは解決することが難しい現状がありますので提携パートナーである「四季の美」様とも協力することで問題を解決したいと思っております。

まとめ

私なりに、これまで伝統工芸業界に携わってきて分かった問題点や解決策をまとめてみました。伝統工芸の職人さんとお話をさせていただくと、驚くような技術を持った職人さんがとても多いです。

こういった、技術が途絶えてしまうことなく将来に継承されるよう活動を続けていければと思います。

伝統工芸の職人さんやものづくりに携わっている方で、BECOSへの出品や協業にご興味をもっていただけた方は、ぜひこちらのページもご覧ください。

ご連絡をお待ちしております。

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