包丁の歴史をわかりやすく解説!今と昔の包丁の違いから、おすすめの包丁も紹介

本記事の制作体制

熊田 貴行

BECOS執行役員の熊田です。BECOSが掲げる「Made In Japanを作る職人の熱い思いを、お客様へお届けし、笑顔を作る。」というコンセプトのもと、具体的にどのように運営、制作しているのかをご紹介いたします。BECOSにおけるコンテンツ制作ポリシーについて詳しくはこちらをご覧ください。

日本食を支え、優れた切れ味で世界でも注目を集める日本の包丁。包丁は日本人の歴史のなかで、文化の影響を色濃く受けながら育まれてきた道具です。

今回は、日本の包丁の歴史を特集!形がどう変わってきたのかや、日本刀との関わり、近代の製法や素材の変遷まで解説していきます。ぜひ身近な道具である包丁への興味を深めるきっかけにしてください。

【この記事の監修者】高橋楠

堺打刃物の製作卸「高橋楠」4代目
高橋佑典さん

刃物のまちとして知られる大阪・堺で104年の歴史を持ち、和包丁や洋包丁の製作と卸売りを行う「高橋楠」の4代目代表。堺打刃物の伝統的な技術を継承し、生み出される和包丁は、卓越した切れ味の鋭さと使い勝手の良さを誇り、国内外を問わず多くのプロから重用されている。

HP:https://takahashikusu.co.jp/

目次

日本の包丁の歴史1【形状の変遷】
歴史のなかで形を変える日本の包丁

日本の包丁の歴史|形の変遷

包丁は、私たちが毎日のくらしで使う身近な道具。しかし、現在使われているものと同じような形状の包丁が登場するのは江戸時代の頃で、包丁は日本の歴史のなかで大きく形を変えてきました。

包丁の起源は石の包丁

調理に刃物が使われるようになったのは旧石器時代のこと。石を打ち砕いて作った「打製石器(だせいせっき)」が包丁のルーツです。

その後、ただ割っただけでなくまるで砥石を使うように別の石でこすったり磨いたりして刃を付けた「磨製石器(ませいせっき)」も使われるようになりますが、数十万年ものあいだ刃物は石で作られていました。

古墳時代(4~6世紀)になると日本でも鉄器が使われるようになりますが、包丁などの調理器具や農具に鉄が使われようになるのはまだ先のこと。鉄は、刀剣のような兵器や古墳づくりのための道具に使われる貴重品でした。

現存する日本最古の包丁はまるで日本刀!

日本の包丁は研いで使われる消耗品。家宝や神宝として大切に保管される刀剣とちがい、古いものはほとんど残されていません。

いつから鉄製包丁が使われるようになったのかは定かではありませんが、現存する最古のものは奈良時代のもので、奈良の正倉院に保存されています。

正倉院に保管される最古の鉄製包丁のイメージ

全長40cmほどと長く、刃の幅が柄よりも細くやや反っていて、まるで日本刀のようなかたちをしているのが特徴です。現代では見かけないかたちのこの日本刀型包丁はおもに魚用で、江戸代初期まで使われていました。

また、正倉院には「刀子(とうす)」と呼ばれる料理用の小刀も保存されていますが、こちらも現在の包丁のように柄から刃が大きく出たアゴと呼ばれる部分がない細身の形状をしています。刀子というのは小刀全般を指す言葉で、当時調理用の刃物はほかと区別されず、ほかの用途も持つ万能道具として使われていたようです。

このように、鉄製の包丁が登場しても、当初は今の包丁とはだいぶ異なる形状をしていました。

本来は「庖丁」?包丁という名称の登場は平安時代

包丁という名称が登場するのは、平安時代後期になってから。常用漢字が制定され「包丁」と呼ばれるようになりましたが、本来は「庖丁」と書きます。

庖丁という名称のルーツは、中国の古典「荘子(そうじ)」に登場する魏の国王に仕えた職人の名前。庖丁(ほうてい)は見事な刀さばきで知られる調理人で、庖丁が愛用した調理刀を「庖丁刀」と呼ぶようになり、室町時代の頃に「庖丁」と略して呼ぶようになったそうです。

ちなみに、漢語では「庖」は調理場、「丁」は男性を意味し、当初は庖丁も料理人を指す言葉として使われていました。

しかし、包丁と呼ぶのは日本独自の呼び方で、ルーツとされる中国では、包丁は「菜刀」や「菓刀」と呼ばれています。

宮中料理や儀式によって育まれた日本の包丁文化

平安時代になり朝鮮半島を経由して中国料理が伝来すると、宮中では食材の切り方や盛りつけに美しさが求められるようになりました。刀子も食材ごとに使い分けられるようになり、調理道具としての性格を強めていったようです。

包丁式は今日においても料理の神を祀る神社などで
伝統神事としておこなわれている。
画像出典元:江戸総鎮守 神田明神

また、平安時代初期(860年頃)には「包丁式」と呼ばれる儀式も行われるようになり、包丁さばきはパフォーマンスとしても注目されるようになります。

包丁式とは、高貴な人や神仏に料理を捧げるときに鯉や鶴などのめでたい魚や鶏を切り分けて見せる儀式で、料理好きで知られる第58第の光孝天皇が儀式として定め、宮中行事に取り入れました。

右手に包丁、左手に「まな箸」と呼ばれる長い箸を持ち、まな板の上で直接手に触れることなく魚や鶏をさばく儀式で、客の前で数十種類にもおよぶ見事な切り方を披露することで包丁の技が磨かれたようです。

包丁式はのちに武士のあいだでも行われるようになり、さまざまな流派を生みました。

日本刀型・刀子型から和包丁型への変化

包丁のアゴ

現在の和包丁と日本刀型・刀子型包丁の大きな違いは「アゴ」の有無です。アゴとは刃の根元が柄より下に出た部分で、手がまな板に当たらず快適に刻める形です。

刺して切る動作に適した日本刀型・刀子型包丁は、魚や肉の解体には便利な反面、まな板作業には不向きでした。アゴつき包丁の起源ははっきりしませんが、室町時代の『酒飯論絵巻』に描かれており、当時の遺跡からも出土しています。

また、鎌倉時代に禅宗の広まりとともに精進料理が発展したことで、野菜調理に適したアゴつき包丁が生まれたとする説もあります。

江戸時代の文化発展でさまざまな和包丁が登場!

江戸時代に入り社会が安定すると、町人文化とともに食文化も大きく発展。専門の料理人が登場し、食材や調理法に合わせて包丁の使い分けが進みました。

この時代には、出刃包丁や柳刃包丁、菜切包丁、薄刃包丁など、現代でも見られる和包丁の原型が中期から後期にかけて完成したとされています。

現在主流の三徳包丁は洋食文化の広まりで作られた

流麗なダマスカス模様も美しい!堺刃物の高級三徳包丁

今や家庭で定番となっている三徳包丁ですが、誕生は昭和以降と比較的新しい包丁です。

明治維新を境に日本の食生活は変化し、牛肉をはじめとした西洋料理が一般に広がると、牛をさばくための洋式ナイフが「牛刀」として使われるようになりました。

しかし、野菜は菜切包丁、魚は出刃包丁、肉は牛刀と使い分けるのは家庭では非効率。そこで、すべてに対応できる「文化包丁(剣型包丁)」が開発され、さらにその先端を丸めたのが三徳包丁です。

三徳包丁という名の由来には、魚・肉・野菜の三つの用途に対応できるという説や、牛刀・菜切包丁・舟行包丁の機能を一本にまとめたという説があります。どちらの説にしろ、幅広い調理に対応できる「万能包丁」として、三徳包丁は現代の家庭に欠かせない存在となっています。

日本の包丁の歴史2【日本刀との関わり】
日本の包丁と日本刀

日本の包丁は、日本刀の歴史とも深く関わっています。平安末期から多くの名刀が生まれましたが、江戸時代に戦が減り、さらに明治の廃刀令(日本刀所持の禁止)により刀鍛冶は刃物職人へと転身していきました。

日本刀に使われる「玉鋼(たまはがね)」と、打ち鍛える製法によって培われた技術が、優れた切れ味の包丁づくりに応用されました。

たとえば、岐阜県関市は、かつて「折れず、曲がらず、よく切れる」と称される日本刀の名産地として知られ、今もその伝統を活かした包丁づくりが続けられています。

日本の包丁の歴史3【製法の変遷】
打刃物から抜刃物へ

現在、日本の主な包丁産地には、新潟県三条市・燕市、岐阜県関市、福井県越前市、大阪府堺市、兵庫県三木市、島根県安来市、高知県香美市などがあります。いずれも、日本刀の技術を受け継ぐ「打刃物」の産地として発展してきた地域です。

かつての包丁は、鋼と軟鉄を熱し、ハンマーで叩いて成形する打刃物製法が主流でした。しかし、近代になると、あらかじめ鋼と軟鉄が接合された「利器材」が登場。これをもとに、金型で打ち抜いて成形する「抜刃物」製法が確立され、包丁の大量生産が可能になりました。

今でも、一丁ずつ手作業で仕上げる打刃物の包丁は存在しますが、コストを抑えつつ安定した品質を実現できる抜刃物が、現在の主流となっています。

日本の包丁の歴史4【素材の進化】
扱いやすいステンレス包丁が登場!素材の多様化が進む

近年は衛生的に使えるオールステンレス包丁も人気

包丁の素材も、技術の進歩とともに多様化しています。かつては、日本刀と同様に鋼と軟鉄を接合して作るのが一般的でした。

ところが昭和後期になると、鉄にクロムを加えた「ステンレス鋼」が登場。鋼包丁に比べて切れ味はやや劣るものの、錆びにくく手入れが簡単なことから広く普及し、今では家庭用包丁の定番となっています。

さらに近年では、軽くて切れ味の良いセラミック包丁や、錆びに強いチタン包丁、プラスチック製の包丁まで登場。用途やライフスタイルに合わせて、包丁の素材はますます多様化しています。

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