【北陸地方の伝統工芸品一覧】漆器や刃物、焼き物など4県を代表する品を厳選紹介

雪国として知られる「北陸地方」は、石川県や富山県、福井県、新潟県の4県からなるエリア。漆器や刃物、焼き物などの民芸品が多く作られています。

豪華絢爛な品から生活のなかに取り入れやすいアイテムも多い北陸地方の伝統工芸品。各県の代表的な品をご紹介しますので、お気に入りのアイテムを見つけてくださいね。

石川県の代表的な伝統工芸品

「加賀百万石」の歴史や文化をもつ石川県には、国の指定を受ける伝統工芸品が10品目（輪島塗・山中漆器・加賀友禅・九谷焼・金沢箔など）あり、国・県・希少伝統工芸品を合わせた伝統工芸品は36業種にのぼります。

金沢の郷土玩具「加賀八幡起上り」や、贈り物の際に使う水引をアレンジした「加賀水引細工」など、県指定の伝統工芸品もバラエティ豊か。北陸地方のなかで伝統工芸品の数がもっとも多く、全国的にも知られている石川県の代表的な品を4つご紹介します。

石川県の代表的な伝統工芸品1
【輪島塗】

「輪島塗」は、石川県輪島市で作られる伝統工芸品で、その技術は国の重要無形文化財に指定されています。

大きな特徴は、「輪島地の粉」と呼ばれる珪藻土を素焼きして砕いたものを下地に塗る堅牢な「本堅地」技法です。

塗り上げるまでに20以上の工程を経る丁寧なつくりで、完成までに75回から多いもので124回にも及ぶ手作業が行われます。

沈金や蒔絵による優美な加飾が特徴の、堅牢で豪華な漆器として知られています。

石川県の代表的な伝統工芸品2
【加賀友禅】

「加賀友禅」は、石川県金沢市を中心に作られる伝統的な手描き友禅染のきもの（着物）で、国の伝統的工芸品に指定されています。

友禅染を用いた加賀友禅は、「加賀五彩」と呼ばれる臙脂（えんじ）・藍・黄土・草・古代紫の5色を基調とし、花や草などの自然を写実的に描いた絵画調の模様が特徴です。

加賀友禅の特徴的な技法として、「虫喰い」や「病葉（わくらば）」と呼ばれる、虫に食われた葉や朽ちた葉を意図的に描く表現があり、これによりより写実的で自然な作品が生み出されています。

石川県の代表的な伝統工芸品3
【九谷焼】

「九谷焼」は、石川県加賀地方の加賀市・小松市・能美市・金沢市などで作られる伝統的な磁器です。

その大きな特徴は、「上絵付け」と呼ばれる技法で、焼成済みの白磁の上に絵の具で絵付けを行い、再度焼くことで、鮮やかで力強い絵柄を表現します。

九谷焼の色彩は、「九谷五彩」と呼ばれる緑・黄・赤・紫・紺青の5色を基調としており、この五彩を用いる「古九谷風」や、赤を使わず青・黄・紫・紺青の4色で描く「吉田屋風」、素地に赤を塗って人物などを描く「木米風」、極細の線で赤絵を描く「飯田屋風」、金と赤で絢爛豪華な「永楽風」、古九谷・吉田屋・赤絵・金襴手を兼ね備えた「庄三風」など、多様な画風があります。

九谷焼で作られる花瓶や置物、食器などは、いずれも華やかな絵柄が特徴です。

石川県の代表的な伝統工芸品4
【金沢箔】

「金沢箔」は、石川県金沢市で生産される伝統的な金箔（および真鍮箔・銅箔など）の総称で、国の伝統的工芸品に指定されています。

金箔は非常に薄く、静電気で箔同士がくっついてしまうため、湿度の高い金沢の気候が製造に適しており、現在日本の金箔生産量のほぼ100％が金沢です。

金沢箔は、日光東照宮や金閣寺などの世界遺産・歴史的建造物、美術品、仏壇・仏具、漆器の装飾など、幅広い分野で使われています。

茶碗やグラス、アートパネル、アクセサリー、スイーツなど、金沢箔を使った高級感漂うアイテムも多数あり、多くの人々を魅了しています。

富山県の代表的な伝統工芸品

富山県には、国の伝統的工芸品に指定されている「高岡銅器」「井波彫刻」「高岡漆器」「庄川挽物木地」「越中和紙」「越中福岡の菅笠」の6品目に加え、県が指定する伝統工芸品が5品目あり、合計11品目の伝統工芸品が存在。ここでは、富山県を代表する伝統工芸品を2つご紹介します。

富山県の代表的な伝統工芸品1
【高岡銅器】

「高岡銅器」は、富山県高岡市で生産される伝統工芸品で、鋳物（金工品）の総称です。

高岡市は、日本で作られる銅器の90％以上を生産する一大産地で、「日本の銅器づくりの9割を支える町」とも言われています。

名称は「銅器」ですが、真鍮・青銅などの銅合金に加え、アルミ合金・錫・鉄・金・銀など、さまざまな金属素材も活用。原型・鋳造・仕上げ・着色・彫金などの工程を分業で行う「分業制のまち」ならではの技術により、着色や彫金の加飾によって多彩な色合いや芸術的な模様がつけられる点が特徴です。

花器や仏具などの伝統的な品に加え、高岡銅器のメーカーとして知られる「能作」や「syouryu」では、アクセサリーやインテリア、お皿など、現代の生活に合わせたさまざまな品を製造しています。

富山県の代表的な伝統工芸品2
【越中和紙】

「越中和紙」は、富山県内で生産される和紙の総称で、富山市八尾の「八尾和紙（やつおわし）」、南砺市五箇山の「五箇山和紙（ごかやまわし）」、下新川郡朝日町蛭谷の「蛭谷和紙（びるだんがみ）」の3つの産地からなります。

いずれの産地も手漉きの伝統を守る手仕事で作られ、和紙ごとに紙の厚さ・質感・用途が異なり、それぞれの特性をいかした商品が魅力です。

小銭入れやカードケースなどの小物、はがきや用紙といった、生活の中に取り入れやすい品も多数作られています。

福井県の代表的な伝統工芸品

豪雪地帯として知られる福井県には、国の伝統的工芸品に指定されている「越前漆器」「若狭塗」「越前打刃物」などが7つ、さらに県が指定する郷土工芸品として29品目が存在し、合計36品目の伝統工芸品が育まれています。

そのほかにも「三国仏壇」や「越前鬼瓦」「鯖江木彫」といった個性あふれる工芸品が受け継がれており、ここでは代表的な品の3つご紹介します。

福井県の代表的な伝統工芸品1
【越前漆器】

「越前漆器」は、福井県鯖江市河和田地区とその周辺地域で生産される伝統工芸品の漆器です。

漆を何層も塗り重ねることで生まれる、深みのある艶と上品な仕上がりが特徴で、軽量でありながら丈夫なため、お椀や箸など、日常使いしやすい生活雑貨として親しまれています。

伝統的な品に加え、カードケースやピンバッチ、サーモマグとのコラボ商品など、現代の生活に合わせた新しい商品の開発にも積極的です。

福井県の代表的な伝統工芸品2
【若狭塗】

「若狭塗」は、福井県小浜市若狭地方とその周辺で作られる伝統工芸品の漆器です。

花器や茶器、盆、重箱などの漆器が生産されており、特に塗り箸（若狭塗箸）の生産が盛んで、国内の塗り箸の大部分を占めています。

マツの葉や貝殻、卵の殻などを使って模様をつくり、色とりどりの漆を何層も塗り重ねた後で水で研いで模様を浮かび上がらせる「研ぎ出し技法」が大きな特徴です。

芸術性と堅牢性を兼ね備えた伝統工芸品として、日常使いの食器や箸としても重宝されています。

福井県の代表的な伝統工芸品3
【越前打刃物】

「越前打刃物」は、福井県越前市で生産される伝統的な刃物で、約700年の歴史を持つ刃物産地として全国で初めて伝統的工芸品に指定された逸品です。

「打刃物」とは、日本古来の火づくり鍛造技術と手仕上げの工程を守り続ける伝統的な刃物づくりの技法で、包丁や鎌、はさみなどが製造されています。

越前打刃物では、包丁を作る際の「二枚広げ」や、鎌を作る際に使われる「廻し鋼着け」といった独特な技法が用いられ、切れ味が鋭く、丈夫な商品が生み出されています。

新潟県の代表的な伝統工芸品

お米を作る稲作など農業が盛んな新潟県には、国の伝統的工芸品に指定されている「加茂桐箪笥」「小千谷縮」「越後三条打刃物」など、14産地・17品目の伝統工芸品が存在します。ここでは、新潟県の伝統工芸品のなかから、代表的な2つをご紹介します。

新潟県の代表的な伝統工芸品1
【加茂桐箪笥】

良質の桐を使った「加茂桐箪笥」は、新潟県加茂市やその周辺で作られる伝統工芸品。繊細で美しい外観からは想像できないほど頑丈に仕上げられており、着物や高級衣類の収納に最適です。

桐の通気性と抗菌性により、害虫や湿気から衣類を守る効果があり、熱が伝わりづらい性質のため、表面が焦げても中まで熱が通りにくい「火災に強い箪笥」としても知られています。

新潟県の代表的な伝統工芸品2
【小千谷縮】

「小千谷縮」は、新潟県小千谷市で生産される伝統的な麻織物です。原料は「苧麻（ちょま）」と呼ばれる麻の一種で、手績みの苧麻糸を昔ながらの製法で織り、湯もみで「シボ」を出す伝統技術が、国の重要無形文化財に指定されています。

小千谷縮は、作られる過程でできる「シボ」が特徴で、衣類にした際に布が肌に密着せず、通気性が高くなるため、夏に涼しい着心地が魅力です。

北陸地方で伝統工芸が盛んな理由は？

降雪によって農作物が育てられない北陸の人々は、冬の間にできることを考え・生産したことから伝統が継承され盛んになったといわれています。北陸地方の伝統工芸品はこちらをご覧ください。

北陸地方にはどんな漆器がありますか？

北陸地方は数多くの漆器が伝統工芸品に指定されています。「輪島塗」「若狭塗」「越前漆器」「金沢漆器」「会津塗」などさまざま。北陸地方の伝統工芸品の一覧を確認したい方はこちらをご覧ください。